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悪石天音
「……毎度。」
奴隷商人は金貨を受け取ると、厄介払いができたと言わんばかりに安堵の表情を浮かべた。
平たちは少女を連れ、村へ戻る。
カフェに入ると、マスターは事情を聞いて大きくため息をついた。
「……なるほどな。」
そう言うと、厨房へ向かい、温かい料理を運んできた。
「ほら、食べな。」
少女は皿を見つめる。
「……いいの?」
「遠慮すんな。」
その一言を聞くと、少女は小さく頷き、夢中で食べ始めた。
「おいしい……!」
宝はその様子を見て、思わず笑みを浮かべる。
「いっぱい食べてね。」
少女は何度も頷いた。
しばらくして、マスターが尋ねる。
「そういや、お前さん名前は?」
少女の手が止まる。
「……覚えてない。」
まるで当たり前のことのように答えた。
店内に静寂が流れる。
平は少女を見つめ、小さく口を開いた。
「……天音。」
少女が顔を上げる。
「これから、お前の名前は天音だ。」
「……うん!」
少女の表情がぱっと明るくなる。
「僕は天音!」
嬉しそうに何度もその名を口にする。
「悪石天音!」
その一言に、平は眉をひそめた。
「……悪石は付けなくていい。」
「えぇー?」
宝とマスターは思わず吹き出した。
店内には、久しぶりに穏やかな笑い声が響いた。




