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風が吹いたら  作者: 和林
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第五話

 マヤは昼休み、窓から校庭を眺めていた。


 トウマが、どうしても気になってしまう。


 うっとりと見惚れているとき、急に教室のドアが開いた。


「し、つれいします……」


 カタカタとした声で誰かが入ってくる。


「あ、浜代さん」


 それは、カイだった。


「あの、これ。修学旅行の」


 カイは、姉のユイと計画を練っていた挙句、先生にプリントを渡して来いと言われたのだった。


「ありがとう」


「あ、じゃあ、俺これで……」


「待って」


 そそくさと帰ろうとするカイを、マヤが止めた。


 カイはバッと勢いよく振り返る。


「あのさ……」


 カイはゴクリと唾を飲む。


「い、つも……いるよね?」


 まさか、バレていたとは。そんな顔をしたカイを見て、マヤはふんわりと笑った。


「仲良く、してね」


 先に一歩を踏み出したのは、マヤからだった。




「え、ほんとに!?」


 ナナカはマヤの話を聞いて驚いた。


「いや、分からないけど……恋心、ってやつ?」


「それを言うなら、一目惚れ」


 マヤは、カイを見た瞬間、何かに惹かれたという。


 トウマの事など忘れ、マヤはカイに夢中になり始めていた。


「でも、浜代ってほら、なんか、クールっていうか……マヤに合うのは、波田だと思うけど」


「……私は、人を選べない。選びたくない」


 マヤは、選べなかった。


「だって、私のものじゃないから。浜代さんは浜代さん自身のものだし、波田さんだってそう」


 ていうか、波田さんとは話したことないし。と告げたマヤの顔は、恋をしている顔だった。




 アコは、カイの母親の、由美子(ユミコ)とお茶をしていた。


 アコとユミコには、妊娠時代に関わりがあった。


 産まれた病院が、同じなのだ。


「それにしても、マヤちゃん、綺麗に育ったんやなぁ」


「いや、そんなことないですよ。大変、思春期」


「そうやなぁ……カイは、あんまり感情を表に出さんから、思春期かすら分からんわな」


 そう言ってユミコは大きく笑った。


 これが、関西人か。と、アコは身に染みて感じた。


「アコさんとこの旦那さんは、先に帰ってくるんやろ?」


「そうなの。手伝いが終わったら、神奈川に戻ってくるって」


 アコ達が住んでいるのは、神奈川県の東の方だ。


 神奈川県と言っても、都会と言えるほどではない、田舎に住んでいる。


「うちの旦那は、まだ帰ってこん。私も、秘書の仕事してるうちに、出勤する時間も早くなってまって、全部ユイに任せっぱなしや」


「ううん、そんなことない。ユミコさん、頑張ってる。頑張りすぎちゃだめだから、任せるぐらいがいい」


「そうなんかなぁ……」


 ユミコは秘書の仕事をしているのだが、どんどん出勤時刻が早くなっていた。


 なんせ、会社が倒産しかけているのだ。


 倒産したら、お金が入らなくなると、ユミコは焦っていた。


 その結果、ユイに全て任せてしまっているのだった。


「マヤちゃんは、アコさんによう似て、綺麗やなぁ」


「いいえ、ユミコさんのところこそ、カイくん、とてもお顔が整ってる……」


 ユミコは、バリバリに関西弁を喋っているのに、顔はカイとよく似ていて、整っていた。


 髪は明るい茶色に染められているが、メイクはほぼしていないと言っていいほどだ。


 服も大阪のおばちゃんのような服ではなく、シンプルな色使いだった。


 それなのに、ユミコの美貌は目立っていた。


「私らって、似てるんかなぁ……」


「確かに、似てるかも」


 二人はふふっと笑う。


 母親達は仲がいいのに、マヤとカイには、全くもって接点がなかった。


 アコはよくユミコのことを話してくれるけれど、実際にマヤとユミコが会うことはほぼなかった。


 アコは、二人が同じ病院で産まれたことに、運命を感じていた。


 あわよくば、結婚。そんな無駄な希望を抱きながら、マヤを見守っていた。




 カイは、小説を書いていた。


 カイの夢は、小説家になることだった。


 昔から良く、父親に本を読まされており、そのせいか、本がとても好きだった。


「カイ、ただいま」


「おかえりなさい」


 ユイが大学から帰ってくると、カイはさっと小説用のノートを隠した。


 小説を書いていることは言ったものの、書いているものは変なプライドからか、見せることが出来ないでいた。


「……誰にも見せられへん」


 思えば、無意識のうちにマヤを浮かべていた。


「……宇美床、舞耶。」


 そう口にしたあと、カイは急にスラスラと小説を書き始めた。


「……出来た!!」


 出来た小説は、マヤが主人公の話だった。


 不登校になった少女を、仲良くなった少年が救う話。


 カイは、この少年が自分だったらな、と、胸を弾ませた。




 ナナカは、ユウマに呼ばれていた。


 もしかしたら、告白かもしれない。という淡い期待を胸に、教室へ向かった。


 内容は、マヤとカイのことだった。


 カイが、マヤのことを好きだということを告げられたナナカは、ふとトウマを思い出した。


 そして、ナナカは洗いざらい、マヤの気になっている人かもしれないと、トウマのことを話した。


 それを聞いたユウマは、首を横に振った。


「あいつは、彼女いる」


 ナナカは、まるでマヤ本人が聞いたかのようなぐらい、オーバーリアクションをした。


「どうしよ、マヤになんて言おう」


「でも、まだ気になってるかすら分からないんでしょ?」


「……うん」


「じゃあ、大丈夫。これは、二人だけの秘密にしよう」


「うん!」


 ナナカは、好きな人との秘密が出来たと、内心とても舞い上がっていた。

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