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三匹のこぶた、青春中  作者: まーサンタ


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22/22

あとがき

――風が吹いたあとに。


 『三匹のこぶた、青春中。』を最後まで読んでくださって、ありがとうございました。


 この物語を書き始めるとき、頭にあったのは、とてもシンプルな問いでした。


 ――もし、「三匹のこぶた」が現代の中学生だったら?


 わらの家。


 木の家。


 レンガの家。


 童話では、それぞれの家の強さが、そのまま三匹の性格の違いとして描かれています。


 でも、現代の中学生に置き換えてみたらどうだろう。


 「わら」は、弱さではなく、人と人をつなぐ柔らかさになるかもしれない。


 「木」は、努力する強さになるかもしれない。


 「レンガ」は、自分を守るための壁になるかもしれない。


 そんなところから、蓮、樹、岳の三人が生まれました。



 藤原蓮は、いつも笑っていました。


 誰とでも話せて、場を明るくできる。


 でも、その笑顔の裏には、


 「嫌われたくない」


 という気持ちがありました。


 だから、蓮にとっての「わらの家」は、決して弱い家ではありません。


 人と人の間に入り、誰かを仲間にすることができる。


 そんな、蓮にしか作れない家でした。



 木村樹は、努力する少年でした。


 毎日練習して、勉強して。


 頑張れば、いつか結果につながると信じていました。


 でも、人生には、どれだけ頑張っても思い通りにならないことがあります。


 樹はそこで、一度立ち止まります。


 そして、


 「努力すること」と「自分の価値」は同じではない。


 ということを、少しずつ知っていきました。



 石田岳は、自分の周りにレンガの壁を作っていました。


 失敗しないように。


 傷つかないように。


 誰かに踏み込まれないように。


 その壁は、確かに岳を守っていました。


 でも同時に。


 誰かが手を伸ばしてきても、その手を受け取れなくしていました。


 物語の最後に岳が見つけたのは、壁を壊すことではありません。


 壁に――扉を作ることでした。



 そして。


 この物語には、途中から美咲と湊が加わりました。


 最初は三匹だった物語が、いつの間にか五人の物語になっていきました。


 白石美咲は、三人を外側から見つめる存在でした。


 蓮の笑顔の奥にあるもの。


 樹の頑張りすぎるところ。


 岳の閉じた心。


 それぞれの変化に気づきながら、自分自身も変わっていきました。


 そして黒崎湊。


 「狼みたい」と言われていた少年。


 人と関わらず、一人でいることに慣れていた少年が、五人の中に少しずつ居場所を見つけていきました。


 最後に、


 「……うん」


 と答えて、みんなのところへ歩いていく湊。


 あの場面は、この物語の中でも特に大切な場面の一つです。


 人は、急に変わるわけではありません。


 昨日まで一人だった人が、今日から急に誰とでも笑えるようになるわけでもない。


 ただ。


 「早く」


 と呼んでくれる誰かがいる。


 その一言だけで、一歩前に進めることがある。


 そんな気持ちを込めました。



 物語の後半で、三人の友情は一度壊れました。


 ここで「狼」を、一人の悪役にはしたくありませんでした。


 SNS。


 噂。


 周囲の視線。


 部活動。


 進路。


 恋愛。


 期待。


 不安。


 誰かの何気ない一言。


 現代の中学生の周りには、目に見えない「風」がたくさん吹いています。


 そして、その風は誰か一人が起こしたものではありません。


 だから玲奈も、単純な悪役にはしませんでした。


 悪意がなくても。


 面白半分でも。


 「みんなやっているから」と思っていても。


 誰かの言葉が、別の誰かを傷つけることがある。


 それが現代の「狼」なのだと思います。


 だからこの物語で、三匹が最後に勝ったのは狼ではありません。


 風との付き合い方を覚えたのです。



 そして最後に。


 この作品で一番描きたかったのは、


 「家」とは何なのか。


 ということでした。


 童話の中では、家は狼から身を守る場所です。


 けれど、中学生にとっての家は、それだけではありません。


 教室かもしれない。


 部活動かもしれない。


 家族かもしれない。


 友達との帰り道かもしれない。


 誰にも言えない話をする秘密基地かもしれない。


 そして。


 「自分らしくいられる場所」なのかもしれません。


 蓮のわらの家も。


 樹の木の家も。


 岳のレンガの家も。


 一度は壊れました。


 でも、三人はそれぞれ違う材料で、自分の家を作り直しました。


 そして最後には、五人で同じ場所に帰ってくることができました。


 だから、この物語の最後にあるのは、


 「ずっと一緒にいる」


 という約束ではありません。


 人はいつか、それぞれの道を歩きます。


 進学して。


 新しい友達ができて。


 知らない町へ行くかもしれない。


 それでも。


 「あの頃、一緒にいた」


 という記憶は消えません。


 帰ろうと思えば帰れる場所が、心の中に残っている。


 それだけで、人は少し強くなれるのだと思います。



 最後の場面。


 五人の影が、春の町を歩いていきます。


 蓮が振り返り、


 「来年も、ここ来ような!」


 と言う。


 樹は、


 「当たり前だろ!」


 と答える。


 美咲が笑い。


 岳がいつものように、


 「予定が合えば」


 と言う。


 そして湊が、


 「……たぶん」


 と答える。


 蓮が、


 「そこは『絶対』だろ!」


 と言って笑う。


 きっと来年も。


 五人は同じ場所に集まるとは限りません。


 それでも。


 この瞬間だけは、確かに五人で笑っています。


 それでいいのだと思います。


 青春は、永遠に続くものではありません。


 だからこそ。


 その一日が、大切になる。



 もし読者のみなさんが、この物語を読み終えたあと、


 自分にも「秘密基地」と呼べる場所があったな。


 あの頃、一緒に笑った友達がいたな。


 あの人に、ちゃんとありがとうと言えばよかったな。


 そんなことを少しでも思ってくれたなら。


 この物語を書いた意味があったと思います。


 風は、これからも吹きます。


 家が揺れることもあるでしょう。


 時には、壊れてしまうこともあるかもしれません。


 でも。


 何度でも建て直せばいい。


 わらでも。


 木でも。


 レンガでも。


 自分が帰りたいと思える場所を、自分の手で作ればいい。


 そして。


 もし誰かが困っていたら、


 「早く」


 と声をかけられる人でありたい。


 そんな願いを込めて。


 最後にもう一度。


 この物語を読んでくださって、本当にありがとうございました。


 あなたの青春にも。


 いつか振り返りたくなるような、


 小さな秘密基地がありますように。


 そして――。


 その場所に、春の風が吹きますように。


『三匹のこぶた、青春中。』


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