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ワタシの名前は白(ハク)

老鉄が語る紅華と天才ハッカー・ハクとの出会い…。

そして巨大な勢力に翻弄される人間達の悲劇。

はたして老鉄は何を思うのか…?

「番号で呼ばれていた少女が名前を手に入れた時」

彼女の“人間としての生き方”が始まる。

私の名前は老鉄(ラオティエ)、旧式のドロイドです。

オイルの匂いが漂うゲンサン(吉村源蔵)の工房で、私は(ハク)について話しています…

老鉄「お嬢様が白を見つけたのは、中立地帯にある惑星の帝国軍の秘密研究所でした。」

源蔵「中立地帯?そんな所で兵器の開発をしていたのか?そいつは条約違反なんじゃ…?」

老鉄「そうです、しかしそれは軍の一部の強硬派が秘密裏に行なっていた事でした。」

源蔵「ちょっと待てよ、それじゃまさか…あの子は…」

老鉄「白は生体兵器として造られた、強化人間とでも云うべき存在…」

源蔵「かーっ!だからあんな天才的なハッキング技術を持ってるのか?」

ゲンサンは頭を掻きながら顔をしかめます。

老鉄「白の他にも強化人間は存在していたようですが…既に廃棄処分にされてました…」

源蔵「廃棄だって?…人間をなんだと思ってんだ?」

老鉄「後でわかった事ですが、帝国の皇帝がそのような非人道的な行いを禁止した為にその時点で研究所は廃止する事が決定していたようです。研究員たちは証拠隠滅の為にデータごと処分していたらしいですね?」

源蔵「帝国もネビュラも…クソッタレ野郎ばっかりだぜ!」

ゲンサンは怒っています…ドロイドの私にもそれは分かります。

老鉄「ネビュラ星間連合軍もその秘密研究所の存在を掴んで、そこを爆撃したのです。偶然にもその星に仕事で来ていたリントハイム様は私達にその場所の調査と生存者がいないか確認するよう命じたのです。」

源蔵「戦闘ドロイドばかりのネビュラの連中は兵士の事なんざ考えないだろうからな?」

老鉄「私とお嬢様、そして夜影(イェイン)率いる数名のメイド隊が廃墟と化した研究所に向かいました。」

研究所の地下室に入ると各部屋には破壊された培養カプセルが並び、薬品と焦げた金属の臭いを私のセンサーが感知しました、そして静まり返った地下室には、生命維持装置の電子音だけが響いていました…

源蔵「よくまあ生き残ったもんだな?」

老鉄「そうですね……! 白は培養液に満たされたカプセルの中にいたようですが、爆撃でそれが割れても、奇跡的に無事だったのです。」

毛布にくるまっていた白は私達が近づいていくと小刻みに震えていました。

白「ワタシは…廃棄処分…なの…?」

紅華「…!そんな事しないわ…私の名前は() 紅華(ホンファ)アナタを助けに来たのよ!」

白「助ける…?ワタシを…?」

紅華「そうよ!だから安心しなさい、あ!ちなみにこのドロイドはアタシの家族、老鉄よ!」

白「ラオ…ティエ…家族…?」

老鉄「よろしくお願いします…えー…誰でしたっけ?」

紅華「そういえば名前を聞いていなかったわね?アナタ…お名前は?」

白「実験体…No.003…です…」

紅華「…!ふざけてるわね?」

お嬢様は怒っていました…その時の私の電子頭脳はお嬢様と初めて会った時の事を再生してました…

「番号なんかで呼んじゃ、可哀想…」

そうです、私はその言葉を思い出していたのです。

紅華「…いいわ、アタシが名前をつけてあげる!…色白だから…そうね、ハク!アナタは白よ!」

白「ハク…ワタシの名前…」

紅華「そうよ!アナタは今日からアタシの妹…李家の娘、李白(リ ハク)として生きるの!」

白「ハク…ワタシは…李白…アナタは…姐姐(お姉ちゃん)…だね?」

挿絵(By みてみん)

…そして私は白を抱きかかえました、身長の割にはとても軽かったと記録しています…廃墟と化した研究所の薄暗い部屋を出てリントハイム様の元に戻りました。

源蔵「…グスッ……そ、そんな事が…?」

老鉄「ゲンサン、また鼻水が出ていますよ!」

源蔵「ほっとけ!それよりも白がお前さんの事を爺爺と呼ぶのも、なんかわかるぜ!きっとあの子は人間よりも機械の方が、安心出来る存在なんだろうな?」

老鉄「そうかもしれません…さらに回収した実験体の飼育記録を調べると…」

源蔵「飼育?完全に実験動物扱いだな?」

老鉄「失礼、育成記録と言うべきでしたね…その記録によると白はニューロンの活性化を促す為に特別に調合され吸収効率だけを考えて作られたゼリー飲料のような食事ばかり与えられていたようです。」

源蔵「けっ!そんなもんは食事じゃねぇ!それじゃ普通の食べ物が受け付けられない体になって当たり前じゃねぇか!…っと、お前さんに怒っている訳じゃ無いぜ…!」

老鉄「わかっていますよゲンサン。」

源蔵「あの料理長の美味いメシを食べられないなんて…本当に可哀想すぎるぜ!」

老鉄「だから小雨(シャオユイ)はいつも白に人間らしい…楽しい食事をしてもらおうとしているのです!」

私達が話していると、そーっと白がヌマルを抱いたまま工房に入って来ました…

源蔵「お?噂をすればなんとやらだな?どうしたんだい白ちゃん?」

白「私は白…ハクチャンじゃない…」

源蔵「おっと…すまねぇなハク!」

白「それでいい…」

老鉄「どうしましたか白?こんな所に来るなんて…?」

源蔵「…こんな所は余計だろ!」

老鉄「失礼しました…」

白「??…小雨が…困ってる…厨房…壊れた…」

源蔵「そういえば…厨房のコンロの調子が悪いって、この前言ってたな?ラオ公のメンテで忙しくて診てやるの忘れてたぜ…」

老鉄「ゲンサン、すぐに行ってください!私のメンテナンスは後で構いません。」

源蔵「おうよ!メシが食えなきゃ仕事なんて出来ねぇからな!」

ゲンサンは工具箱を持って工房を出て行きました…

老鉄「でも白、アナタは料理長の料理を食べたくないのでは?」

白「ゲンさんも…姐姐も…困る…小雨も…困るから…」

老鉄「そうですか…白はえらいですね?」

私の回路の温度が上がり、ボディからプシューっと蒸気が吹き出しました…

老鉄「なんかホワホワしますね…?」

白「爺爺…セイロみたい…?肉まん…入ってるの?」

老鉄「肉まんは入ってませんが…もしかして…食べてみたいですか?」

白「…うん…少し…」

ヌマル「小雨に頼んで作ってもらうニャ!」

老鉄「そうですか…?分かりました、厨房に行きましょう!」

私は白の体を抱きかかえました、初めて会った時に比べると少し重くなっていますが問題ありませんね。

白「初めて会った時と…同じ…フフ…」

白が少しだけ笑顔になりました…私はさらにホワホワしたのです。


厨房に到着するとゲンサンが作業を終わらせた所でした。

源蔵「おう!もう心配いらないぜ!アレ?白も連れて来たのかよ…?」

老鉄「白は肉まんを食べてみたいそうです。」

小雨「…!本当に?ほんとに?ハク…?」

白「うん…少しだけ…」

小雨は目をウルウルさせています…そして満面の笑みで言いました。

小雨「よおし、ちょっと待っててね!」

そう言って厨房に駆け込みました、私は白と一緒に食堂に行き待っています。

小雨「お待ちどうさま!さぁ召し上がれ!」

恐る恐る肉まんを口に運ぶ白…

白「はむ!…!…暖かい…でも…悪くない…」

小雨「うんうん!心も暖かくなるでしょ?」

源蔵「へへっ!小雨も良かったな!」

小雨「うん!ありがとう老鉄さん、やっぱり白の爺爺だね?」

老鉄「爺爺…なんかホワホワします…」

源蔵「おいおい、オイラには何も無いのかよ?」

小雨「フフッ!ゲンさんにはこの特製麻婆豆腐丼よ!」

源蔵「うぉー!オイラの大好物だ!ありがとよ!うん!美味い!美味すぎる!」

ゲンサンは夢中で食べています…私は食事はいりませんが…皆さんの嬉しそうな顔を見ていると…やっぱりホワホワしてしまいます…!


##老鉄の独り言:ログ007


かつて番号で呼ばれていた少女は、今では自分の名前を口にします。

「ワタシの名前は白」

…その言葉を聞く度に、私はなんだかホワホワするのです…

でも……

そもそも、ホワホワとは何なのでしょう?

旧式の私には、まだよく分かりません。

今回は白の過去が語られましたね。

現実でも、兵器として利用される動物は存在します。

今回はそんな現実を少し重ねながら、“兵器として造られた強化人間”を描いてみました。

それでも最後に、白に笑顔が生まれて本当に良かったです。

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