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偏食少女と最新AI

「私は旧式のドロイドです、だから食事はいりません!でもお嬢様達が楽しそうに、そして美味しそうにしている姿を見ていると…なんだかホワホワします…今回はそんなお話です。」

私の名前は老鉄(ラオティエ)、旧式のドロイドです。

リントハイム様を狙った傭兵集団を雇ったのは商売敵である死の商人でした…

そしてついに、その報復が始まります…


(ハク)「…処理、終了…!」

メイド服の上にダボダボのパーカーを着た少女がモニターを見ながら呟くように言いました。

彼女の名前は白、紅棘(コウキョク)のメンバーで情報管理室のリーダーです!…とは言っても情報管理室にはいつも彼女一人です。

挿絵(By みてみん)

何故なら白は人間よりも機械を信頼しています。

機械は怒鳴りません。 機械は急に距離を詰めません。 機械は曖昧な笑顔を向けません。

入力すれば、必ず決まった反応を返します。

ですが人間は違います…

だから白は、静かな情報管理室に閉じこもるようになりました。

薄暗い情報管理室で白はいつも猫形のぬいぐるみ、ヌマルを抱いてモニターに向かっています。

彼女の指先がキーボードを叩くと同時に、モニターに映し出されていた死の商人の秘密口座から、天文学的な数字の資金が一瞬で消え去りました。先頃に襲撃してきた傭兵集団の雇い主への、これがリントハイム様流の『報復』だったのです。

リントハイム「見事だ、白。これで奴らは次の武器取引どころか、組織の維持すら不可能になる。直接手を下すまでもなく、自滅するよ」

白の背後に立つリントハイム様が、満足げに微笑んで白の頭に手を伸ばしました…

しかし、白は小さく身を竦め、リントハイム様の手から逃げるようにスッと椅子を引き、抱きかかえたぬいぐるみのヌマルを、ぎゅっと胸元で抱きしめています。

リントハイム「おや?…まあいい…感謝するよ…!」

そう言い残して、リントハイム様は部屋を去って行かれました。

ヌマル「……ハク、今のはあからさまに警戒しすぎなのニャ!」

膝の上のヌマルが、あきれたように電子音声で囁きました、ヌマルは単なるぬいぐるみではなく、最新のプロセッサとAIを搭載した端末なのです、しかも私よりも饒舌な…

白「……だって、姐姐ジェジェが言ってた…」

白は部屋の扉をじっと見つめたまま、小さな声で呟きます。

白「リントハイム…悪い男…」

彼女が姉と慕う大好きな紅華ホンファお嬢様の言葉を真に受けている白はリントハイム様を常に警戒してしまうのです。

小雨(シャオユイ)「ハク〜!お腹空いたでしょ?今日は肉まんを作ったわよ!」

情報管理室の頑丈な扉を足で蹴り上げて、料理長の小雨が大きなせいろを両手に持って入って来ました、せいろからはまだ湯気が上がっています。

小雨「…!ちょっと白、またそんなゼリーばっかり吸って!!」

白「う…あ…」

小雨が蓋を開けると、中にはふっくらと蒸し上がった、肉汁たっぷりの大きな肉まんが…私には食べられませんが美味しそうだと思います。

小雨「ほら、出来立ての肉まんだよ! ちゃんと温かいものを食べないと、その貧弱な体格のままなんだから!」

白「いらない…」

ホカホカと美味しそうな匂いを漂わせる肉まんは、普通の人ならばご馳走として受け止められると思いますが、白にとっては脅威です。

彼女は対面での会話すら苦手で、この距離感で詰め寄られては脳の処理が追いつかないでしょう。

ヌマル「ハクの天敵が来たのニャ! 逃げるのニャ、ハク!」

白「……っ!」

白はガタッと椅子を蹴立てると、せいろを差し出す小雨から必死に距離を取りました。

そして、部屋の隅で警備している私の背後へと周りこみ、猫が隠れるようにして震える声で言いました。

白「爺爺イエィエ……助けて……」

爺爺…それは幼い頃のお嬢様が老福(ロウフー)さんの事を呼ぶ時の言葉…その言葉を聞くと私のメモリの中の幼い頃のお嬢様の姿が再生されてしまいます。

私の大きな金属の背中に隠れ、服の裾をぎゅっと掴んで小雨を怯えたように見つめる白を小雨は捕まえようとしています。

私の回路温度が上昇した為、蒸気排出弁からプシューと白い蒸気が出ました。

老鉄「なんか……ホワホワしますね……」

小雨「ホワホワしてないで…老鉄さん、ハクを捕まえて! ほら、ハク、一口だけでも食べなさい!」

白「いや……コレで、いい……!」

白はいつも食べているゼリー飲料のパウチを握りしめて言いました。

小雨「まったくもう…食事ってのは栄養補給だけでなく、心を満たすものなのよ!」

白「…心?意味不明…」

ヌマル「白の処理能力を越えてしまうニャ!情報過多なのニャ!」

挿絵(By みてみん)

ヌマルは白を心配しているようです…しかし小雨も白の事を心配しているのは私にも分かります、私は2人の間に板挟みになって困ってしまいました。

源蔵「おいおい……。死の商人を一瞬で破滅させた天才ハッカーが、肉まん程度で全力で逃亡中とはな?」

私が困っているとゲンサンがやって来て呆れ顔で言って来ました。

小雨「あ、ゲンさん! ちょうどいいところに! ハクを捕まえて!」

源蔵「いや、オイラは勘弁だな…あいつ、本気で嫌がってんじゃねえかよ!」

ゲンサンもこういうのは苦手らしく…苦笑いしています。


私とゲンサンはその後、工房に戻ってきました…まだ各部の調子が戻っていないからですが…

源蔵「ふぅ…参ったまいった…なぁラオ公、あの子はなんであんなに頑なに普通のメシを拒むんだ? ただの好き嫌いってレベルじゃねえぞありゃ!」

老鉄「……白のあの偏食の理由…それを私は知っています…!」

私はゲンサンに静かに語り始めました…白がまだ「実験体No.003」と呼ばれていた頃の話を…

今回は新キャラクターの(ハク)小雨(シャオユイ)のドタバタが中心ですが、2人ともこの時点で紅棘(コウキョク)のメンバーです…次回は2人の過去に迫ります!

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