夜影の灯火(ともしび)
私の名前は老鉄、旧式のドロイドです。
私の使命は、お嬢様をお守りすること。そのためなら、この機体がどうなろうと知ったことではありません。
最新型の兵器には到底敵いません。
ですが――守りたいもののためなら、古い鉄屑でも拳を振るいます。
私の名前は老鉄、旧式のドロイドです。
今夜は要人の船上パーティー会場にてリントハイム様の護衛をしております…
リントハイム様の傍には胸に金色の飾りが付いた真っ赤なドレスを着たお嬢様が、しかし警戒は
怠っていません、私もセンサーをフル稼働して怪しい者や危険物が無いか調べているのです。
紅華「紅棘のメンバーも配置について警備しているから安心よ!」
リントハイム「油断するな!私を狙う者やこの会場にいる要人を狙ってる連中はウヨウヨいるからな…!」
老鉄「仰る通りです、しかし乗船時に身体検査を皆さん受けていますから…武器を持ち込むのも難しいかと思われます!」
リントハイム「フッ!老鉄の言う通りだが…会場をこの豪華客船にしたのもそういる理由だよ…!だが逆に言えば周りは海…逃げ場が無いとも言える。」
紅華「確かにそれはそうね?夜影この船に近づく船舶や航空機に警戒しておいて!」
夜影「はい!承知しました!」
…無線の向こうで夜影さんが答えました、いつも冷静沈着、正確無比と呼ばれる彼女ですから私も信頼しております。
船が港を離れてから1時間ほどが過ぎ、航海は順調なようです。今夜は湾内を1周するだけのクルージングですからあと1時間ほどで港に戻るでしょう…会場では上品な音楽が流れ、笑い声とグラスの触れ合う音が響いていました。
パーティー会場が盛り上がっていたその時です。
鈍い振動が豪華客船の船体を揺らしました…爆発です!
艦内アナウンス「左舷後方で爆発がありました、万が一に備えて全員デッキに上がってください。」
リントハイム「やはり来たか?しかし狙いはなんだ?」
紅華「リントハイム様は私達が守るわ!」
リントハイム「当然だが…要人暗殺の可能性もある…とにかくデッキに…」
しかし会場内の人々から悲鳴が上がりました、会場から外に出る扉が開かない様子です。
紅華「閉じ込められたの?」
リントハイム「まさか…船ごと沈めるつもりか?」
その時、夜影さんから通信が入りました…
夜影「紅華さま、武装した集団が格納庫から現れ現在戦闘中です!」
リントハイム「これは…かなり計画的だな?荷物に隠れて潜入し、爆弾を仕掛け…」
紅華「でも本当の狙いはこの会場にいる人達…?」
老鉄「恐らくはそうかと…?」
リントハイム「袋のネズミってヤツだな?」
紅華「でも護衛のシークレットサービスも何人か会場内には居るわ!」
リントハイム「あとは夜影たちがどこまで武装集団を足止め出来るかだな?」
その時、ガシャガシャと大型のドロイドが歩くような音が響いて来ました。
助けが来たかと思った人々がドアの前に集まって叫んでいます…
女性「早く開けて〜!」
要人「ワシを誰だと思ってる、こんな目に遭わせて…許さんぞ!」
その時、ドアが巨大な鉄の爪に引き裂かれて弾き飛びました、ドアの前にいた人達も一緒に弾き飛ばされ血を流して倒れています…恐らくは即死でしょう…
ドアを破って侵入して来たのは強化外骨格、私のデータには無い機体でした。
リントハイム「あれは帝国軍の最新型重装パワードスーツ!あんな物を用意出来るなんて…恐らくは同業者だな?」
紅華「…って事は、狙いはリントハイム様ね?」
シークレットサービスの人達も侵入してきたパワードスーツに応戦しますが…銃弾は全て装甲に弾き返されます。
リントハイム「あの装甲はヴォルテック合金並の強度がある、対戦車砲でも無ければ無理だ…」
紅華「チッ!だったら…」
お嬢様はレイピアを抜きました、あのレイピアは普通の剣ではなく超振動レイピアになっていて鋼鉄をも貫きます。
リントハイム「よせ!紅華…」
リントハイム様が制止しましたがお嬢様はそのまま突進してパワードスーツの右腕にレイピアを突き立てました。
パイロット「バカが!」
パワードスーツのパイロットの声が響くと腕を振り回しお嬢様は弾き飛ばされました。お嬢様のレイピアは装甲の中までは届かなかったようです。
老鉄「お嬢様!」
お嬢様は負傷して動けない様子です…
パイロット「まずはこの女から片付けてやるぜ!綺麗な姉ちゃんだが…これも仕事なんで悪く思うなよ!」
私はパワードスーツの前に立ちはだかりました。
パイロット「なんだ?GRD-04…?こんな鉄クズを使ってるヤツがまだ居たなんてな?この最新型のパワードスーツに勝てる訳ねぇだろ?スクラップにしてやるぜ!」
紅華「…ら ラオティエ…」
老鉄「私は鉄クズではありません!」
パイロット「あぁん?」
私の回路の温度は既に安全装置を解除するレベルに達していました、そして…ゲンサンの言葉を思い出していました。
源蔵「お前さんの意思で最後の安全装置を解除するんだ!」
…ゲンサン、今がその時です!
安全装置ロック解除、ジェネレーター出力最大!
私の両肩からジェネレーターが飛び出し唸りを上げました、エネルギーが私の右拳の電極に集まり青白く光り輝きます。
パイロット「何するつもりか知らねえが無駄だぜ!」
パワードスーツの鉄の爪が振り上げられます
パイロット「叩き潰してやる!」
パワードスーツは勢いよく鉄の爪を振り下ろそうと足を踏み出します。
パイロット「おりゃー!」
私は衝撃に備え腰を落として振りかぶり…ここで叫ぶんですね…?
老鉄「電磁砕拳ーー・1式ーーっっ!」
私の拳はパワードスーツの装甲をぶち破って内部の機構を破壊しました、パワードスーツは後方に吹き飛び、倒れ完全に停止したようです…
紅華「老鉄!」
老鉄「お嬢様…ご無沙汰…で…?」
ヨロヨロと立ち上がったお嬢様の方を向き直った私のボディからはアチコチからシューシューと湯気と火花がパチパチ出てます…機能が40%低下…緊急冷却開始します…
しばらくして夜影さんと紅棘のメンバーが会場に戻ってきました…全員無事のようですね?
夜影「ヤツらは傭兵集団のようですね?かなり連携が取れていました…」
リントハイム「そうか…相手は本気のようだな?このお返しはさせてもらう…!」
リントハイム様は静かに、しかし確実に怒っておられます…
紅華「それよりも早く!ゲンさんの所に…」
リントハイム「そうだな?今回は老鉄と源蔵のおかげで助かった…礼を言わないとな!」
私はゲンサンの工房に緊急搬送されて台座の上に横たわっていました…
源蔵「…ったく、こんなに早くあいつを使うとは思わなかったぜ!」
ゲンサンは頭を掻きながら顔をしかめます。
老鉄「すみません…ですがお嬢様の危機でしたので…」
源蔵「わかってるよ!そうでなけりゃ使えない仕様だからな!」
ゲンサンはウィンクをして言いました。
リントハイム「あんな物を取り付けていたとはな?」
突然、リントハイム様が入って来ました…
老鉄「リントハイム様…ゲンサンは悪くありません!」
リントハイム「フッ!心配するな、文句を言いに来たんじゃない…」
源蔵「へへっ!コイツのおかげで命が助かったんだ、文句は言えねぇよな?」
リントハイム「ログを見させてもらったが…あれは電磁波破砕法を応用したものだな?本来は岩盤などを破壊するための…土木技術だ!」
源蔵「さすが旦那だ!こんなに早く見抜くなんてな…」
リントハイム「フッ!天才的な死の商人である私ですら、あんな方法は思い付かなかったよ!恐れ入った!」
源蔵「へへっ!どうも…」
リントハイム「アナタを招いて良かった…ありがとうゲンさん!」
源蔵「えっ?…な なんか気持ち悪いなぁ…どうしたんで?急によ…?」
老鉄「ゲンサン、リントハイム様はお礼を言っているのかと?」
源蔵「わ わかってんよ!…いきなりゲンさんなんて言うから…びっくりしただけでぃ!」
リントハイム「ゴホン!とにかく…これからもよろしく頼むよ…」
…そう言うとリントハイム様は邸宅の方に戻って行きました。
それからしばらくして夜影さんがやって来ました…いつも足音も無く現れるのでゲンサンはびっくりしています。
源蔵「おわっ!な なんでぇ?夜影ちゃんかよ?驚かせんなよ…」
夜影「すみません…そう訓練されていますので!」
老鉄「夜影さん、紅棘の皆さんも無事で良かったです!」
夜影「紅華さまのお怪我は大した事はなく、打撲程度だったそうです。」
源蔵「わざわざ教えに来てくれてありがとよ!」
夜影「いえ…それで…その…老鉄さん、ありがとう紅華さまを守ってくれて、あの状況では…私達は間に合いませんでした…!」
老鉄「老鉄…さん?…??」
私の電子回路が処理出来ない状態になって一瞬フリーズしてしまいました…
源蔵「おっと、オイラはちょっとトイレに行ってくるぜ!」
老鉄「あ あゲンサン…」
ゲンサンは工房から出て行ってしまいました。
夜影「フッ!お二人とも面白いですね?恐らくは今夜も徹夜で作業でしょうから…私はこれで失礼します…」
夜影さんがそう言って工房から出ようとした時に、庭のテラスの方から二胡の音が聞こえて来ました…
空には月が出て、昼間の戦闘が嘘のようです。
老鉄「お嬢様の二胡ですね…?どうやら本当に大した事ないようですね?」
夜影「私が嘘を言ってると思ったんですか?」
そう言って私の事を睨みます…
老鉄「すみません…そのような事はありませんが…」
私のボディは動かないので頭を下げる事も出来ません…どうすれば…?
夜影「クスッ!冗談です、怒ってなんかいませんよ!」
そう言って彼女は初めて少しだけ笑顔になったのです…
しかし次の瞬間には音もなく工房から消えてしまいました。
源蔵「あれ?もう帰っちまったのか?本当に忍者みたいな子だなぁ?」
老鉄「ニンジャ?それは何ですか?」
源蔵「オイラの故郷の星に、昔居たっていう…スゲェ連中だよ…っていちいち聞くんじゃねぇ!それよりもあの姉ちゃん、老鉄さんなんて言ってたな?」
老鉄「そそうですね…?」
源蔵「どういう風の吹き回しだよ?」
老鉄「風の吹き回しとは?」
源蔵「だから、いちいち聞くんじゃねぇっての!」
こうして、豪華客船での危機は回避されました…私の必殺技はボディの負担が大きいので当分は使えそうにありませんが…何故か私の回路の温度は上がったままです…お嬢様の危機も去ったというのに…何故でしょう?
夜影の灯火は、いかがでしたでしょうか?
傭兵集団の急襲という危機に立ち向かう老鉄が熱い回でしたね!
私は状況描写が苦手なのでシーンが想像しにくいかもしれませんが…その分セリフで感じてくだされば良いと思っています。




