夜影(イェイン)の微笑
私の名前は老鉄。 旧式のドロイドです。
最新型のような高性能AIも、 軍用機のような火力もありません。
ですが… お嬢様をお守りする事だけは、 誰にも負けないつもりです。
人は古くなった機械を捨てます。
でも古い機械を直しながら大切に使う人も居ます…
あなたは……どちらでしょうか…?
ゲンサン(吉村源蔵)に私とお嬢様の過去をお話しした数日後、オイルの匂いが漂う工房でゲンサンが私に向かって言いました。
源蔵「お前さんに必殺技をつけてやんよ!」
老鉄「必殺技とは?そんな物騒な兵器を取り付けるのはリントハイム様がお許しにならないかと?」
源蔵「心配すんな、二重に安全装置を取り付けるし…お嬢のピンチにしか使えない代物だからよ!」
老鉄「お嬢様のピンチ…そんな状況にはしません!」
源蔵「わかるけどよ!世の中何が起きるかわからないだろう?」
老鉄「仰っている事は理解出来ます…」
源蔵「使うときなんざ来ない方がイイ!が…万が一の為だ!」
老鉄「わかりました、ゲンサンがそう言うならば承諾します。」
そこへ、黒いメイド服の少女が音もなく現れました…彼女はお嬢様のメイド隊、紅棘の隊長…夜影です。
夜影「源蔵さん、頼まれていた荷物が届きました!」
源蔵「おお!ようやく来たか?お嬢ちゃん、あんがとよ!」
夜影「私はお嬢ちゃんではありません、夜影とお呼びください!」
源蔵「…と、悪い…夜影ちゃん!」
夜影「ちゃんは余計です。」
源蔵「わーかったよ!」
夜影「ところでこの荷物、爆発物とかは仕込まれていないんですが…どうも土木作業用のパーツが多いようですね?」
源蔵「まぁな…」
夜影「まさかGRD-04を使って道路工事でもするつもりですか?」
源蔵「コイツには老鉄って名前があるんだ!ちゃんと名前で呼んでやれよ!」
夜影「ドロイドに名前をつけるなんてナンセンスです、意味不明です!」
源蔵「なんだとお?コイツにはな、オイラ達とおんなじように心が…ハートってもんがあるんだよ!それがわかんねーなら、荷物を置いてとっとと帰りな!」
夜影「…心…?フン!失礼します。」
そう言うと彼女は私の方をチラッと見てから音もなく去りました…
源蔵「なんであんなに無愛想なんだ?もうちょっと愛想が良ければべっぴんさんなのによ…」
老鉄「べっぴんさんとは?」
源蔵「美人ってことだよ!まぁお嬢ほどじゃないがな…」
老鉄「それは同意します。」
源蔵「へへっ!材料も届いた事だし、オイラはパーツの制作に取り掛かるから、ラオ公、今日はもう良いぜ!」
老鉄「それでは、私は失礼いたします…」
源蔵「おう!」
私は源蔵さんの専用工房を後にしました…必殺技というワードが気になりましたが…源蔵さんの事は信頼していますから。
…数日後、私のボディに新しいパーツが取り付けられました、重量が少し増えた感じですがそれ以外には変わっている感じがしません…これで本当にそんな必殺技が出せるのでしょうか?
そこへリントハイム様がやって来ました、普段は絶対に来ないはずなのに…何故でしょう?
リントハイム「源蔵、老鉄に危険な武装を取り付けているそうだな?」
源蔵「チッ…夜影のヤツか?チクりやがって…」
リントハイム「どうした?本当にそうなのか?」
源蔵「旦那、心配はいらねぇぜ!コイツはそんな物騒な武装じゃないんで…」
老鉄「ゲンサン、それはダジャレというものでは?」
源蔵「……こ コレは偶然だ!…そんなんじゃねえぞ!」
ゲンサンは何故か顔が赤くなっていました…
リントハイム「ゴホン!まぁイイ…明日は豪華客船で要人とのパーティーがあるから、それまでには作業を終わらせておくように!」
源蔵「あいよ!あとは調整だけなんで、大丈夫でさあ!」
リントハイム様は何故か首を傾げながら帰っていきました…
…するとゲンサンは何故かヒソヒソ声で話します。
源蔵「ヒソヒソ…イイかラオ公、この必殺技には二重の安全装置が取り付けてあるんだ!1つ目は、お嬢の危機にはお前さんの回路の温度が上がるみたいだからそいつがカギだ!」
老鉄「なるほど?」
源蔵「二つ目はお前さんの判断、コイツを使うべき時なのか?お前さんの意思で解除するんだ!」
老鉄「分かりました!ありがとうございます。」
源蔵「それからこの必殺技の名前なんだが…〇〇〇〇・〇〇…って言うんだ!」
老鉄「…ゲンサン、それは少々レトロ過ぎるのではないですか?もっとこう…」
源蔵「オイラは横文字は嫌いなんだよ!第一、お前さんにそんな洒落た名前が合う訳ねぇだろ?」
老鉄「確かにそれはそうですが…」
源蔵「あとな、コイツを放つ時に大声でこの必殺技の名前を叫ぶんだぞ!」
老鉄「叫ぶ?何故ですか?不可解です…」
源蔵「バカヤロウ!大昔から必殺技ってのは使う時に叫ぶもんなんだよ!」
老鉄「…そんな話は聞いた事ありませんが…?」
源蔵「まぁ実際に使う時が来ない方がイイんだがな?」
老鉄「それはそうですね…?」
ゲンサンもお嬢様の事を真剣に考えているのは私にも分かりました…なのでそれ以上は追求しない事にしました。
紅華「ゲンさん!お疲れ様…」
突然、お嬢様がやって来ました、こんな油臭い工房には普段から来ない人達が次々と来てゲンサンも少々パニック気味です。
源蔵「お お嬢!珍しいじゃねぇですか?」
紅華「老鉄の性能アップをしているんでしょう?旧式ドロイドだからあんまり無理させないでね…」
老鉄「お嬢様…ありがとうございます!」
源蔵「そいつはもちろんで!」
紅華「これ、小雨に作って貰った薬膳スープよ!冷めないうちに飲んでね…」
そう言ってお盆に乗った料理を机の上に置きました。
源蔵「ありがてぇ!あの料理長のメシはめちゃくちゃ美味いから…ハハッ!頂きます!」
紅華「それじゃあ…老鉄の事、よろしくお願いね!」
源蔵「へ へい!お任せですぜ!」
老鉄「今日はいったいどうしたんでしょう?」
源蔵「フフ…みんなお前さんの事を気にかけてんだよ!鈍いなぁ…」
老鉄「そうなのですか?私には分かりません。」
そして翌日、リントハイム様は豪華客船でのパーティに向かいました…護衛はお嬢様と私、そして夜影さん率いる紅棘の戦闘部隊11名です。
お嬢様は金色の飾りが胸に着いた真っ赤なドレスを身に纏いパーティー会場でも特に目立っていました。本来ならば護衛は目立たない方が良いのですが…リントハイム様は…「紅華が目立つ事で私に対するハニートラップが未然に防げる!」と仰っています。
しかしハニートラップとはどんなトラップなのか?私には分かりません。
そして…華やかな音楽と、着飾った人々。
誰もが笑顔を浮かべるこの豪華客船が、数時間後には恐怖の戦場へと変わるなど、この時の私はまだ知る由もなかったのです。
今回は夜影のイラストがありますが、皆さんはきっと暗殺者だと思ったでしょうね?
でも半分は当たりです!
夜影って近接戦闘が得意な暗殺者でもあるからです、可愛いけど怖い女の子なんですが…生真面目で合理主義者なので取っ付き難い印象がありますよね?
次回はそんな夜影が変わるかもしれません!




