皇帝からの贈り物
こんにちは、老鉄でございます!
惑星エクストでのシャザーン(AI)との戦いから半月ほどが経ちました。
戦いには勝ちましたが、私は現在ほぼ銅像です。
ドロイドにも寝たきり生活というものがあるのですね。
今回はそんな私が復活するまでの意外な…でも心温まるお話しになっております。
では、後ほど。
私の名前は老鉄、旧式のドロイドです。
古代銀河文明の遺したAI、シャザーンの放った熱線によって、私のボディは大ダメージを受け、ゲンサンの工房へ運び込まれました。しかし、肝心の修理は一向に進みません。
老鉄「ゲンサン…あれからもう半月が過ぎていますよ!」
源蔵「うるせぇな!わかってんよ!…とはいえパーツが揃わないんじゃ仕方ねぇだろう?」
吉村源蔵、通称ゲンさんは腕の良い技術者ですが、修理に必要なパーツが無ければ、どうにもなりません。
源蔵「…ったく!旧式ドロイドのボディなんざ古すぎて逆に手に入りにくいんだよ!」
老鉄「新しいボディでも良いのではないですか?」
源蔵「それが…お嬢が…"ピカピカの新品ボディなんて、老鉄じゃない!あのレトロな見た目がアタクシの魅力を引き立てるのよ!"…なんて言ってやがるからな!そうもいかねぇんだ。」
老鉄「お嬢様らしいですね?」
源蔵「とりあえず、ヘッド部分は直ったし、カメラも新しいレンズに交換したけど…ボディの方がなぁ…ヴォルテック合金製の胸のアーマーと肩のアーマーは溶けなかったからイイが…」
老鉄「問題は関節部分ですね?」
私のボディの装甲がシャザーンの放った熱線により熔け、関節が完全に焼き固まる前に戦いが終わったから、この程度の損傷で済んだのです…そうで無ければ今頃は全員死亡していたでしょう。
…それどころか、あの精神コントロール波で全銀河の人々がシャザーンの言いなりになっていたかもしれません。
源蔵「可動部が完全に固まっているからな…まるで銅像みたいだぜ!」
そこへリントハイム様が入って来ました。
リントハイム「どうだいゲンさん?進捗具合は?」
源蔵「旦那…外部装甲のパーツが無いと話しにならないぜ!それに…」
リントハイム「それに?…何かあるのか?」
源蔵「ちょっとコレを見てくれよ…!」
そう言って、私の内部回路をみせました。
リントハイム「綺麗だな?流石はゲンさんだ!」
源蔵「いや…それが…オイラじゃないんだよ…」
リントハイム「どういう事だ?」
源蔵「帰って来たときに開けたら、内部回路は綺麗に直っていたのさ…!」
リントハイム「なんだって?老鉄には自動修復機能なんて付いていないぞ!」
源蔵「そうだけどよ…」
アリス「それはきっと妖精の仕業だよ!」
この声はアリスさんですが、どうしてこの工房にいるのでしょうか?
源蔵「可愛いお嬢ちゃん、それは御伽話だよ!」
アリス「本で読んだもん、寝ている間に仕事を手伝ってくれる小さな小人の話。」
源蔵「本当にそんな小人がいたらありがてぇけどな?」
アリスさんはどうやら本で読んだ童話を真に受けているようですね?
しかし子供の夢を壊すのは可哀想です、ここはスルーしてあげましょう。
老鉄「アリスさんはどうしてここに?」
アリス「お見舞いに来たんだよ!あとね、ライザも来ているんだけど…」
リントハイム「皇帝の命を守ったんだ!彼女なりの誠意だろう?」
老鉄「なるほど?わざわざありがとうアリスさん!」
アリス「えへへ…」
ライザ「こら!アリス、勝手に入ったら迷惑だろうが?」
ライザさんが声をかけて来ました、この二人は良いコンビみたいですね?
源蔵「まぁパーツが無いから作業をして無いんだ…構わないぜ!」
ライザ「やはり外部装甲は交換するようか…?」
源蔵「そうだなぁ…だけど旧式だからパーツが揃わないんでやりようが…」
ライザ「そうか?ならばちょうど良かった…」
老鉄「はて?何が丁度良かったのです?」
ライザ「皇帝陛下から本来ならば感謝状や勲章が授与されるべき働きだが、ドロイドのお前には無意味だろうからと…ボディのパーツを持って来たのさ!」
リントハイム「ほう?」
源蔵「そいつはありがてぇぜ!」
紅華「それがこの大きな箱って訳?」
お嬢様も工房にやって来たようです…なんだか随分と賑やかですね?
ライザ「その通りだ!陛下の粋な計らいだろう?」
アリス「アタシだって、アイデアを出したんだよ!」
ライザ「フフッ!そうだったな?」
紅華「突然訪ねてきて…すぐに工房に向かうんだもの…お茶くらい出すのに…」
ライザ「我々は皇帝陛下の代理で来ているのだ!気遣いは無用!」
アリス「え〜?せっかくだから飲んで行こうよ!」
紅華「フフッ!今持って来るわよ!」
源蔵「さてと、それじゃあ早速、そのパーツを使わせてもらうとするか…」
ゲンサンが箱を開けている音が聞こえます、私は動けないので見回せる範囲以外はカメラにも写りません。
源蔵「中古のパーツみたいだけど…やけに軽いな?なんだコレ?」
ライザ「フッ!それはヴォルテック合金製のパーツだ、残っていた設計図を元に新しく作ったのさ!」
源蔵「……おいおい、本当に本物かよ。」
ライザ「当然、本物だ。」
源蔵「貴重な帝国軍の最新素材を、こんな旧式ドロイドのために……。」
ライザ「そうだ!そしてもちろんレトロ感を出す為に塗装をしてある。」
源蔵「なんだって?そこまで拘るとは……皇帝陛下も粋なことをするじゃねぇか。」
リントハイム「帝国軍の近衛騎士団くらいしか使っていない代物なのに…イイのか?こんな事をして…」
ライザ「皇帝陛下直々のご下命だ。誰も異論は挟めんよ!」
パーツの話しで盛り上がっていると、料理長の小雨さんがお茶を持って来てくれました。
小雨「皆さんどうぞ〜!エルシュタイン・リゾートではお世話になりました。」
皆さんでお茶を飲みながら、惑星エクストでの出来事や後日談を交わしています。
もちろん私はドロイドなので飲めませんが、こういう雰囲気は良いですね。
ライザ「そう言えば老鉄どのの電磁なんとかとはどういう武器なんだ?」
源蔵「アレは武器じゃなくて必殺技だよ!土木技術の電磁波破砕法を応用してるんだぜ!」
ライザ「必殺技…電磁波破砕法?」
アリス「凄いね〜!カッコよかったよ老鉄さん。」
老鉄「ありがとうございます。」
ライザ「なるほど?凄い発想だ!…しかしながら技の名前を叫ぶ必要はあるのか?」
紅華「必要は無いかもしれないけど、カッコイイでしょ?」
老鉄「私はゲンサンにそう教わったのです。」
ライザ「そ…そう、なのか?」
源蔵「昔から必殺技ってのは技の名前を叫ぶって決まってんだよ!」
ライザ「……は、はは…」
ライザさんは何故か苦笑いしていました。
そして話は惑星エクストの今後についてまでに及びました。
リントハイム「…それでは、惑星エクストそのものを閉鎖する予定なのか?」
ライザ「あぁ…あの惑星にはシャザーンと同等のAIがまだ残っている可能性が高いらしい…」
紅華「あんな精神コントロール波を出せるヤツが何体も?恐ろしいわね?」
ライザ「スタンレー公が偶然発見したに過ぎないが、あのようなロストテクノロジーが流出すれば、銀河全体の危機になりかねん!」
リントハイム「確かにそうだ!老鉄がシャザーンを壊してくれたから良かったものの…下手をすれば人類はヤツの奴隷か…滅亡していたかもしれない…」
老鉄「そうですね?しかし惑星そのものを閉鎖となると…原住民の方々はどうなるのですか?」
ライザ「あそこは中立宙域だからな、帝国だけで勝手に決める事は出来ないが…その為に陛下は代表団を派遣しているのだ。」
リントハイム「ネビュラ星間連合や自由星間同盟の代表団を交えての協議だな?」
紅華「個人的には長老さん達は良い人たちだから…そっとしておいてあげたいわ…」
ライザ「同感だ!」
アリス「長老さんはシャザーンの像の代わりに老鉄さんの像を村に作るって言っていたよね?」
老鉄「それは丁重にお断りしましたよ!人間がドロイドの像を崇めるなんておかしいですからね。」
紅華「そうねぇ…だけど彼等にとっては老鉄はまさに英雄なのよ!」
アリス「そうだよ!老鉄さんはヒーローなの!銅像くらい作ったってイイと思うよ!」
老鉄「実際に今は銅像みたいですけど…」
源蔵「ハハッ!違いねぇな?」
リントハイム「遺跡に近づいていく程に頭痛が酷くなってきたから…中に入ったら間違いなく私も支配されていたろうな?」
源蔵「しかしそんな人を操る事が出来るなんざ…いったいどういう技術なんだ?」
リントハイム「私も帰ってきて調べたが…あの遺跡そのものがアンテナになった、巨大ELF送信機として機能していたのかもしれないな?」
ライザ「ほう?さすが天才リントハイムだ!実は過去に帝国軍でも研究していたのだ…」
源蔵「なんだって?」
ライザ「…極低周波の電磁波は頭蓋骨を通過しやすく、脳の神経活動に直接影響を与えられるのだ!これを使って敵を無力化しようとしたのだが…敵だけでなく味方の兵にまで影響するので実用化はしなかった…!」
源蔵「つまり、電磁波で脳を揺さぶるみたいな感じか?」
ライザ「まぁそうだが…あんな洗脳みたいな事までは無理だ。」
老鉄「そんな事があったのですね?」
ライザ「それに敵のネビュラ軍はドロイド兵が主力だ…ドロイドには効果が無いからな!」
老鉄「確かに私やヌマルには感じる事すら出来ませんでした。」
ライザ「お陰で助かったんだよ!」
リントハイム「だが、本当にELFだったかは分からない…もっと未知のテクノロジーの可能性だってある!」
ライザ「確かにな?しかしシャザーンの近くでは私や紅華も影響を受けた…本当に危ないところだった…」
老鉄「アリスさんやマリアさんはそれでも大丈夫そうでしたが…?」
ライザ「アリスはともかく、皇帝陛下は精神力で耐えていたのだそうだ…」
老鉄「アリスさんは強化人間だから大丈夫だったんですね?」
ライザ「なんだ?もう知っているのか?」
リントハイム「あぁ…白に聞いた…実は白も同じ研究施設にいた強化人間の生き残りNo,003なんだ!」
紅華「アタクシが爆撃を受けた施設で見つけて保護したのよ!今では可愛いアタクシの妹!」
白「えへ…」
白はなんだか照れ臭そうです。
ライザ「なるほど?やはりお前は…いや、なんでもない…」
アリス「アタシはNo.007!…だから白はアタシのお姉ちゃんなんだよ!」
ライザ「そうだな…良かったな姉妹が見つかって!」
アリス「うん!」
そう言ってアリスさんは白に抱きつきました、白も満更でもない様子です。
何とも言えない、微笑ましい光景ですね。
こうして、私のボディはなんとヴォルテック合金製のボディに生まれ変わりました!
見た目は変わりませんが、新品パーツで強化されています。
紅華「やっぱり…アタクシの隣には老鉄が居てこそよね!」
お嬢様はとても喜んでいます。
…それはイイのですが…とはいえ、なんだか体が軽すぎてどうも慣れません。
歩くスピードも早くなり、力も強くなった感じです…
源蔵「今までのボディに比べると軽さと強度が段違いだろうからな?慣れるまでは仕方ないぜ。」
老鉄「そうですね?それにせっかくマリアさんが用意してくれたパーツです、有効に使わないといけませんね?」
源蔵「しっかし…皇帝陛下に気に入られたドロイドなんざ…お前さんぐらいだぜ?」
老鉄「そうですかね?確かに私のアーカイブにも、そのような記録は見当たりません。」
源蔵「ラオ公は大したヤツだって、オイラは最初から思っていたけどな?」
老鉄「そうですね、ありがとうございます!」
自由星間同盟内では、帝国は悪のイメージですが…実は主義主張が違うだけで同じ人間なのだと改めて感じた出来事でした。
人間とは不思議な生き物ですね…?
##老鉄の独り言:ログ022
【帝国】
私は帝国製のドロイドです。
ですが旧式を理由に帝国軍からは棄てられましたが…
それは兵器としての役割を果たし終えたという事です。
帝国主義を悪とみなす論調がある一方で、帝国内の国民は幸せなのだそうです。
…ゲンサンはネビュラのやり方が肌に合わないという理由で出てきたそうですが?
結局は帝国もネビュラもそして自由星間同盟も、何が正しいのかは立場で変わるようです。
私にはどれが正しいのかは分かりません、ですが皆さんがお茶を飲んで楽しそうにしている。
…それを壊すのは悪だと考えます。
精神コントロール波は、実際に行われている科学的研究や仮説を参考にしています。
・地球のシューマン共振(約7.83Hz)と人間の脳波(θ波・α波)が近い周波数帯にあること。
・極低周波(ELF)の電磁波が頭蓋骨を比較的通過しやすく、脳活動への影響が研究されていること。
ただし、本作のように人間の精神を自由に操る技術は現実には確認されておらず、本作品独自のSF設定です。




