楽園の誘惑(完結編)
皆様こんにちは!
リゾートに来たはずなのに、またしても大事件に巻き込まれてしまった老鉄達ですが…
古代文明の遺跡に眠っていた監獄AIシャザーンの復活により、楽園だったはずのエルシュタイン・リゾートは大混乱!
洗脳された仲間達、謎の古代文明、そして皇帝陛下を襲う最大の危機!
今回の主役は間違いなく老鉄です!
ボロボロになりながらも仲間達を守るために戦う旧式ドロイド老鉄。
そして完結編らしく、物語の後にはちょっとした伏線も残されています。
果たして老鉄の中で聞こえた謎の声の正体とは……?
それでは「楽園の誘惑」完結編、スタートです!
私の名前は老鉄、旧式のドロイドです。
古代銀河文明の遺した囚人管理用のAI、"シャザーン"の放った熱線を浴びて、私のボディはボロボロになってしまいました。
完全に機能を停止してしまい、あとはスクラップになる運命かもしれません。
声「メイン回路の修復完了、再起動シマス」
またも聞き覚えのない声がしたかと思うと私の視界が戻ってきました。
しかしレンズも溶けて映像はボヤけてしまっています…
聴音センサーも復活したようで、周りの音が聞こえて来ました。
紅華「早くゲンさんの所に連れて行かないと…」
お嬢様の悲しそうな声がしました…
ライザ「こんなにボロボロでは…コアそのものもダメかもしれん…」
アリス「老鉄さん…死んじゃったの…?」
アリスさんは泣きそうになっているようです…
マリア「私の命を救ったのだ…その礼をするまでは死なせはしない!」
凛とした威厳のある声は皇帝であるマリアさんの声でした…!
老鉄「皆さん…無事だった…んですね?良かったです…」
紅華「!…老鉄、老鉄はまだ生きてるわ!」
お嬢様が私の顔を覗き込みますがカメラのピントが合いません。
ライザ「なかなかにタフなヤツだな?帝国製なダケはある!」
マリア「私は帝国皇帝として、お前に礼を言おう!」
アリス「老鉄さん動ける?」
老鉄「内部回路は何とか復活しましたが…関節も溶けて…ちょっと無理みたいです。」
ライザ「外部装甲がコレではな…しかし一部は溶けてないぞ!これが幸いしたようだな?」
紅華「確かそこは…ヴォルテック合金に換装しているのよ!」
ライザ「なんだと?アレは帝国軍の近衛騎士団にしか使用を許されていないはずだぞ!」
紅華「あはは…どういう経緯かは知らないけど…とにかくそうなのよ…!」
マリア「今はそんな事はどうでもいいから!早く老鉄殿を直してあげるのです。」
アリス「そうだよ!ライザは変な所で細かいんだから…」
ライザ「…まぁいい…陛下をお守りした功績を考えれば瑣末な事だ!」
エルシュタイン「…あの…私達はなんでこんな所に…?」
エルシュタイン氏が正気に戻ったようです。
その後、正気に戻ったエルシュタイン氏やホテルのスタッフ、そしてスタンレー公を捜索に来て洗脳されてしまった帝国軍の情報員の協力で私はホテルに運ばれました。
エルシュタイン「…そんな事があったのですね?なんて恐ろしい…」
ホテルのロビーに横たわる私の前で、エルシュタイン氏は事件のあらましを知って驚き、恐怖していました。
帝国軍の情報員達はシャザーンに操られていたとはいえ、皇帝の身を危険に晒したという事でライザさんにお叱りを受けていました。
ライザさんは帝国軍の将軍で「砂漠の雌獅子」と呼ばれた方だったのです。
白「爺爺…大丈夫?」
白が心配そうに声をかけてきました、腕にはぬいぐるみ型端末のヌマルを抱いています。
老鉄「白…今は動けませんが、ゲンサンに直してもらうから大丈夫ですよ!」
白「良かった…」
老鉄「白こそ…頭が痛いのは治りましたか?」
ヌマル「精神コントロール波の影響で頭痛がしていたのニャ!オマエがシャザーンを破壊したから止まったみたいだニャ?」
老鉄「そうですか…良かったです!」
ヌマル「シャザーンが止まって、あの遺跡のネットワークにアクセス出来たのニャ!」
老鉄「何か分かりましたか?」
ヌマル「この惑星は古代銀河文明の時代に使われていた監獄惑星だったのニャ!シャザーンは罪人を管理、更生させるシステムのAIだったのニャ!」
老鉄「それはスタンレー公に聞きましたよ…」
ヌマル「ニャんと?せっかく解読したのに意味無かったニャ!」
老鉄「そんな事はありませんよ!」
白「ヌマルも頑張ったよ…!」
ヌマル「ありがとうニャ!」
アリス「お姉ちゃん、元気になったんだ?」
不意にアリスさんが声を掛けて来ました、アリスさんていつも突然やって来ますね?
白「ワタシは白、お姉ちゃんじゃない!」
アリス「じゃあ白、お姉ちゃんだね?」
白「白でイイ…」
アリス「うーん…?…じゃあ…白?」
白「それでイイ…」
老鉄「白の方がお姉さんなんだから…お姉ちゃんでもイイのでは?」
白「ワタシの家族は爺爺と姐姐だけ…!」
アリス「ひどい〜!アタシだってお姉ちゃんの妹なのにぃ〜!」
白「…?妹…?ワタシは…」
アリス「実験体No.003だよね?」
白「…どうして…?」
カメラのレンズが溶けてボヤけた映像しか写らないのですが…白は動揺しています。
アリス「アタシもあの研究所にいたんだよ!アリスって名前はママが付けてくれたの!」
白「!…ま…さか…No.007…なの?」
アリス「思い出した?アタシの方が完成度が高いから皇帝に研究成果として献上されたんだけど…他の子はみんな廃棄されたって聞いたから…」
白「うん…ワタシは姐姐と爺爺に助けられた…」
アリス「そうなんだ?アタシも白に会えて嬉しかったよ!」
なんという事でしょうか、白以外の他の子は全員死亡したと思ってましたが…こんな所で再会するなんて…
白「アリスは…帝国軍なの?」
アリス「アタシはアタシだよ!ママがずっと傍に居て良いって言っていたもん!」
白「ママ…アリスにはママが出来たんだ?良かったね…!」
アリス「ライザも頼りになるし…毎日楽しいよ!」
老鉄「アリスさんが幸せそうで良かったです!白も喜んでいますよ!」
アリス「えへへ…!老鉄さんも早く元気になってね!ママも心配していたし…」
老鉄「ママとは…皇帝陛下の事ですよね?私ごときに勿体ない…」
アリス「そんな事ないよ!老鉄さんはママの命の恩人だもん!ママはアタシの命の恩人だし…だから二人とも大切な人だよ!」
白「うん!…ワタシに取っても…大切!」
老鉄「二人とも…」
私の回路の温度が上昇するのを感じました、なんでしょう?この暖かい気持ちは…!?
…結局、私の修理を優先して休暇の予定を繰り上げて帰る事になってしまいました、申し訳ないですね。
リントハイム「ふぅ…休暇に来たのに…なんで事件に巻き込まれるんだ?」
紅華「そうね…だけどアナタは呑んでばかりだから…結構ゆっくり出来たんじゃない?」
リントハイム「まあな?…残念だが明日の朝にはチェックアウトだ、今のうちに楽しんできなよ!」
紅華「ふふん?言われなくてもそうするわよ!」
ミーナ「お嬢様〜!一緒に記念写真を撮りましょう〜!」
紅華「そうね!考えてみれば、ミーナが裸踊りしている所も撮ればよかったわ!」
ミーナ「えぇぇっ?わ、私って裸踊りしていたんですかぁ?」
紅華「フフッ!冗談よ!でも腰ミノを着けて踊っていたのは本当だけどね!」
ミーナ「うぅぅ…恥ずかしいですぅ…」
紅華「でも本当に操られていただけで良かったわ!あのまま原住民の村に残るなんて言ったらどうしようかと思ったもの…」
ミーナ「ワタシはお嬢様の専属メイドですぅ!絶対にそんな事しませんっ!」
紅華「フフフ…それじゃ早く撮影しましょう。」
ミーナ「はーい!お嬢様、いきますよぉ!」
紅華「はい!ポーズ!」
お二人の会話を聞きながら、私は謎の声について考えていました。
あの声は私の中から聞こえて来たけど…誰?そして何故?
そして翌日の朝、私はホテルのロビーで台車に載せられて出発の時を待っていました。
リントハイム「老鉄…どうだ具合は?」
リントハイム様が声をかけて下さいました、もう頭痛もしないそうです。
老鉄「そう言われましても…ドロイドの私は勝手に直るはずはありませんが…」
リントハイム「普通に考えればそうだな?だが…お前の中でした声はなんだ?」
老鉄「それは分かりません、今考えると本当にそんな声が聞こえたのかも怪しい気がします…」
リントハイム「ガリウス戦の時の時間が止まっているようなハイスピード演算処理といい、今回の自動修復現象といい…旧式ドロイドにしては異常過ぎるだろう?」
老鉄「…確かにそんな事は常識では考えられませんね?」
リントハイム「設備もないからお前の内部回路を調べるのはやめておくが…私はゼロスがくれたプロメテウスコア17(ワンセブン)が原因だと考えてるんだよ!」
老鉄「確かにそう考える方が自然ですね?しかしアレは処理速度にもほとんど影響が無かったはずですが…?」
リントハイム「普段はな…しかしガリウス戦の時も今回も…紅華の危機という条件がある!前に言ってた火事場の馬鹿力というヤツかもしれないだろう?」
老鉄「つまり…本当に危機の時にだけ力を発揮するという事でしょうか?実に非効率的ですが…?」
リントハイム「人間と同じように、100%の力を発揮するのは負荷が大きいからかもしれないな?」
老鉄「それならば納得です、何せ私は旧式のドロイドですから。」
リントハイム「そうだな?…だから…あまり無理はするなよ!」
そう言うとリントハイム様は去って行きました…!
私達が本日帰るという事で、エルシュタイン氏を始めスタッフの皆さん、マリアさん達と原住民の皆さんまでもがモノレールの駅まで見送りに来てくださいました!
長老「老鉄さん、アンタはワシらの神じゃ!これからはアンタの像を建てて敬う事にするよ!」
老鉄「私は旧式のドロイドです、そんな事はしないでください…」
ヌマルの解析で、古代銀河文明でドロイドの事をジンキと呼んでいたらしいとわかったのですが…彼らは、もうドロイドを怖がる事はないでしょう。
シャザーンが私の事をジンキと呼んだのも、彼が使役していた看守ドロイドの事を指していたのだと思います。
今考えれば、シャザーンも復活しなければこの楽園で静かに眠っていたはずなのです…スタンレー公は自業自得ですが…シャザーンもまた、自らの使命を果たそうとしただけだったのかもしれませんね…?
紅華「さぁモノレールが到着したわよ!みんなご挨拶して〜!」
全員「お世話になりました〜!」
私達はモノレールに乗り、シャトルが待ってる宇宙空港に向かいます…コレで帰ればゲンサンの工房で修理してもらえますね?
…それにしても…銀河のあちこちには古代銀河文明の遺跡が存在します、再びシャザーンのような存在が現れない事を願わずにはいられません……!
それから数ヶ月後…リゾート惑星エクストは、永久的に自然保護を理由に閉鎖する事が決まったというニュースが流れました、古代銀河文明のロストテクノロジーが危険過ぎるというのが本当の理由だという事は、一部の人間しか知らない事です…!
##老鉄の独り言:ログ021
【神】
原住民の方々はAIであるシャザーンを神だと思って崇めていました。
長老さんは今度は私を神として祀るという…
しかし私は神ではありません!そしてシャザーンも単なるAIでした。
…もしも自分がお世話になった存在が神なのだとしたら…私の神はお嬢様?
ですが神であろうとお嬢様であろうと、私の仕事は変わりません!
私は旧式のドロイドですから。
本当に自然保護をするのなら、人間は居ない方が良いのでしょうか?
時々そんな事を考えます。
今回の話に登場したシャザーンというAIは、その問いに対して「YES」という結論を出しました。
しかし、人間の仲間である老鉄は真逆の考えでした。
結局のところ、自然を守るのも壊すのも人間次第なのかもしれません。
AIを自分の欲望のために利用しようとしたスタンレー公。 そして、ドロイドである老鉄を家族や仲間として受け入れているリントハイム家の面々。
同じ人間でも、その在り方は大きく異なります。
皆さんはどう思われますか?




