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楽園の誘惑(2)

リゾート惑星の孤島にやってきたリントハイム達。一見、少人数制の静かで贅沢なリゾートを満喫しているように見えましたが、夜の帳(とばり)が下りる頃から、少しずつ奇妙な影が忍び寄っていました。

メイド隊長夜影(イェイン)の予感は、最悪の形で的中することになります。

私の名前は老鉄(ラオティエ)、旧式のドロイドです。

今回私達は、リゾート惑星エクストの赤道付近にある孤島、エルシュタイン・リゾートに来ています。


夜になって、私達はこのリゾートならではの料理を出すという海鮮レストランにやって来ました!周りを見回しても他の客は居ません。

小雨(シャオユイ)「なんだか凄い静かですね?」

白(ハク)「貸切…なの?」

リントハイム「元々が少人数制のリゾートだしな、静かでくつろげるって事だから良いじゃないか!」

紅華(ホンファ)「そうなの?まぁ食事の時くらいは静かな方が良いわね?」

そんな会話をしているうちに料理が出てきました、もちろん私は食べる事は出来ませんが…

小雨「何これ?凄い美味しい!」

料理長だけあって、小雨さんは料理に関心が高いようです…出された雪のように白い魚?の料理を食べて驚きの声をあげていました。

小雨「あの…コレはいったい何の料理なんですか?」

ウェイトレス「それはスノーホワイトという現地の魚ですよ!雪のように真っ白な身が特徴で、大きな個体だと2メートルくらいにまで成長するらしいんです!原住民はバクラバクラって呼んでいるみたいですね?」

老鉄「この星の生物は採取が禁止されているのでは?」

ウェイトレス「この魚は原住民の皆さんが昔から漁で獲っているものなんですよ!特別に分けていただいてるんです!」

老鉄「この星には原住民がいるのですか?」

ウェイトレス「はい!皆さんとても良い方々ですよ!ほとんどの人がシャザーンを信仰していて、自然と共生してるんです!」

リントハイム「シャザーン?彼らの神か?」

ウェイトレス「はい!変わった神さまで、地下の世界に存在してるみたいです!」

リントハイム「ふむ?大抵の場合…神とは天にいる存在なのに、地下とは確かに変わっているな?」

ウェイトレス「彼らの祈りの言葉が"シャザイン"というんですけど…意味はよくわかりません、えへへ…」

可愛いウェイトレスさんはそう言って照れくさそうに笑いました。

リントハイム「各地にはそれぞれ色々な伝説や神話があるからな!色々調べてみると面白いかもしれないな?」

老鉄「そうですね?私はする事が無いので、それも良いかと思います。」


その夜、私は眠る必要がないので海岸を散歩して星を眺めたりしながらホテルのプールにやって来ました。

老鉄「おや?誰か泳いでいますね?」

プールから上がってきたのは夜影さんでした、こんな時間にどうしたのでしょうか?

老鉄「夜影(イェイン)さん!」

夜影「あれ?老鉄さん、散歩ですか?」

挿絵(By みてみん)

老鉄「夜影さんこそ、もう寝る時間ですよ?」

夜影「どうも胸騒ぎがして眠れないので…」

老鉄「何か心配な事でも…?」

夜影「そういうわけではないのですが…なんか平和過ぎて…職業病ですかね?」

老鉄「いつも気を張っているんですから、こんな時くらいはリラックスした方がイイですよ!」

夜影「そうですね…もうロゼッタも寝ているので…私もそろそろ部屋に戻ります。」

老鉄「わかりました、おやすみなさいませ!」

夜影「おやすみなさい!老鉄さん…」

そう言って夜影さんは部屋に戻っていきました。


そして翌日、その胸騒ぎが的中することになってしまったのです!


昼頃になって、小雨さんがミーナさんが居ないと騒ぎ始めました、朝から買い物に行ってその後誰も姿を見ていないのです。

紅華「部屋には戻っていないの?」

小雨「買い物から帰ってきたのは確かみたいで…部屋にはブティックで買った服が何着か置いてありました…」

紅華「…それで、お昼ご飯には戻るって言っていたのね?」

小雨「はい…あの子、絶対にご飯食べに戻ってくるはずなんです!」

紅華「そうよね?買い物に夢中でもお腹が空いて来たら絶対に帰るもの…」

夜影「こんな平和なリゾートでまさか誘拐?」

老鉄「それはさすがに……とにかくホテルの人に聞いてみては?」

紅華「そうね?誰か見た人がいるはずよ!」

私達はホテルのフロントに向かいました、もしもホテルの外に出たとしても……島全体がこのリゾートの敷地内なので何かあればすぐに分かるはずなのです。

フロントマン「……その女の子なら、電動バギーを借りて出掛けましたよ!」

紅華「何処へ向かったかは分かる?」

フロントマン「はい!島の東端に向かいましたね…あそこはまだ未開発地域で…原住民の村があります。」

紅華「原住民…それって大丈夫なの?」

フロントマン「ここの原住民はとても友好的で親切ですよ!何かされるとは思えないです!」

紅華「でもあの子可愛いから…」

フロントマン「原住民なんて言うと未開人みたいですが、彼等は科学文明こそ発達していませんが文化レベルはとても高いし、非常に真面目な人達ですよ!」

紅華「…そうなの?……とにかくそこに行ってみるわ!バギーを借りるわね!」

フロントマン「どうぞ!ご自由に。」

紅華「小雨、アンタはここでミーナが戻るかもしれないから待っていなさい」

小雨「はい、お嬢様!気をつけてくださいね!」

こうして私達は島の東端にあるという原住民の村に向かったのです。


紅華お嬢様と夜影さん、そして私の三人…いえ、二人と一体のドロイドは未開発地域のジャングルの道を電動バギーで進みます。

未開発地域とはいえ、原住民の村への道は未舗装とはいえ存在しているので道に迷ったりはしませんでした。

程なくして村らしき建物が見えて来ました、ヤシの葉のようなもので屋根を覆った建物が並んでいます。

紅華「ふぅ…本当に南国って感じね?」

夜影「お嬢様、油断は禁物です…私達はなんの武器も持っていませんよ!」

紅華「いざと言う時は老鉄が守ってくれるわよ!」

老鉄「それはもちろんですが…私もリミッターのおかげで普段のパワーは出せません!」

紅華「……そ 、そうだったわね…?」

夜影「お嬢様…忘れていたんですか?」

紅華「なぁに、イザとなったらアタクシの格闘技を見せてあげるわよ!」

お嬢様はどこまでも強気ですが、子供の頃に格闘技を習っていたのであながち虚勢でもありません。

老鉄「お嬢様、夜影さん、私がまず参ります。」

私は先頭に立って歩きました…村に入ると原住民らしき人がチラホラと見えます、原住民なんて言うと腰ミノや上半身裸を思い浮かべますが、彼等はアロハシャツのような服を来て真っ黒に日焼けした肌を除けば普通の人間となんら変わりなく見えました。

老鉄「失礼ですが、ちょっとお尋ねします!」

私は一人の男性に声をかけてみました。

男「……! じ…ジンキ!?」

彼は私の姿を見て絶句しました…

老鉄「ジンキ? いえ私は老鉄と——」

男「ヒィィィィッ!お助け~っ!シャザイン!シャザイン!我らが神よ…!」

男は何故かものすごく怯えて走り去って行きました…

紅華「老鉄!ナニ怖がらせてんのよ?」

老鉄「いえ…私は別に…」

夜影「お嬢様、あの男の怯えようは普通ではありません!」

老鉄「そうです!もしかしたらドロイドを見慣れていないからかもしれません。」

紅華「なんかドロイドは禁止…みたいな事を言っていたわね?こういう事があるからかしら?」

夜影「そうかもしれませんね?今度は私が声をかけてみますね…」

どんどん村の奥に向かっていくと、白い髭を蓄えた老人が立っていました。

夜影「すみません、ちょっと伺いますが…」

老人「あんた達は…?ふむ…なるほど?」

老人は何か納得した様子ですが、まだ何も聞いていません。

夜影「私達は怪しいものではありません!」

老人「わかりました、皆の者!コレはジンキではないようじゃ…出てくるがよい!」

老人が声を上げると、周囲に隠れていた村人達がゾロゾロと出てきました。

長老「失礼しました、私はこの村の長老ですじゃ!我々はドロイドを見慣れておらんので、伝説のジンキと勘違いしてしまったのです…」

老鉄「伝説のジンキ?それはなんでしょうか?」

長老「ジンキとは神話にあるシャザーンの使いですじゃ…悪さをする人に罰を与えるという怖い存在なんじゃよ!」

老鉄「なるほど?私をそのジンキと勘違いしたのですね?」

長老「ワシらは皆んなシャザーンの教えを守って生きております…そんな罰を受けるはずは無いのですが…ドロイドを見慣れていないのでのう…」

老鉄「そうだったんですね?申し訳ありません…ところでシャザインと言って怯えていたのですが…?」

長老「シャザインは祈りの言葉ですよ!シャザーンがいつも我らに聞かせる言葉じゃが…意味はよくわからんのじゃ…」

紅華「すみません、皆さんを驚かせてしまって…ところで、この村にこの女の子は来ませんでしたか?」

そう言ってお嬢様は、ミーナさんの写真を見せました。

長老「おお!この女の子なら祭壇の前で踊っておったな?」

紅華「えっ?踊ってた?」

夜影「すみません、そこへ案内してもらえますか?」

長老「良いですとも、どうぞこちらへ…」

私達はさらに村の奥へと向かいました。

村の最深部でしょうか?素朴な感じの祭壇があり、そこには大きな一つ目の像があります。

そしてその像の前で、腰ミノを着けて頭に羽根飾りの着いた冠を被ったミーナさんが、周りで叩いている太鼓の音に合わせて手を天に向けて踊っているではありませんか!

しかし周りの村人達は誰も笑っていない上に…

太鼓を叩き続けながら、ただ恍惚とした表情でミーナさんを見つめて…まるでトランス状態のように感じました。

挿絵(By みてみん)

紅華「ミーナ!こんなところでナニやってんのよ?」

お嬢様はミーナさんに駆け寄ります、夜影さんも同じく駆け寄りました。

ミーナ「あれぇ?お嬢様…?見てください、もらっちゃいました~!」

紅華「ちょっとアンタ酔ってるの?」

ミーナ「お酒でしゅか?違いまふよう…ジュースでしゅ…」

どうやら本当に酔ってるみたいです、顔も赤くなっていました…ですが目は虚で、ただの酔っ払いとは少し違うような…?

……結局、その後はミーナさんは眠ってしまったので、私がバギーに乗せました。

長老さん達には皆んなでお礼を言ってホテルに無事に戻ったのですが…

ミーナさんは眠る直前、一つ目の像を振り返りました。

その顔は笑っていたはずなのに、何故か私は奇妙な違和感を覚えました。

私には踊っているミーナさんが何かに取り憑かれているように見えたからです。

そしてもう一つ…ミーナさんが寝言で「シャザイン…」と言っていたのを私の聴音センサーが記録したのです…


ホテルに戻ってミーナさんを部屋まで運び、小雨さんも一安心のでようです。

小雨「…全くもう!ミーナってば…」

紅華「本当にね…でもどうしてあの村に行ったのかしら?」

夜影「そうですね?ミーナがわざわざ一人で行く理由がわかりません!」

紅華「それにあの一つ目の像…あれがシャザーンとかいう神様なのかしら?」

夜影「不気味というか…そもそも地下にいる神様ってのも変わってるし…原住民の文化なのかもしれないけど…私達からしたらカルト教団ですよ?」

紅華「しっ!滅多な事は言わないで…」

夜影「す、すみません!」

老鉄「とにかくミーナさんが目を覚ましたら聞いてみましょう!」

紅華「そうよね?とりあえず一件落着だし…アタクシはエステに行ってくるわ!」

夜影「お嬢様、私もお供します。」

そう言ってお二人はホテル内にあるエステサロンに向かいました。

老鉄「小雨さん、心配かけましたがミーナさんは無事でしたので、小雨さんも好きな事をされてはいかがでしょう?」

小雨「そうよね?それじゃアタシも海で泳いでこようかな?」

そう言って小雨さんも部屋を出て行きました…私もそろそろ行こうかと思いミーナさんの様子を確認しましたがスヤスヤと眠っていました。


ホテルの前のビーチに行くと木陰ではまた、白が昼寝をしています…私はテーブルの上のヌマルに小声で聞きました。

老鉄「ヌマル…白はまた昼寝ですが…昨夜は寝てないのですか?」

ヌマル「うるさくて寝てられないとか言っていたニャ!アタシは何も聞こえなかったのニャ…」

老鉄「おかしな話しですね?夜は波の音くらいしか聞こえないのですが…?」

ヌマル「そうニャ、でも白は誰かが…シャザインとか言ってうるさかったと言っていたニャ!」

老鉄「…!シャザイン?」

私は何かとても嫌な予感がしました…

ミーナさんが、そして村の人が言っていた祈りの言葉"シャザイン"…

それを夜に白が聞いていた?

……もしそれが誰かの祈りではなく、誰かの呼び声だったとしたら?

いったいこの島で何が起きているのでしょうか?


つづく…

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