楽園の誘惑(1)
皆様、こんにちは!
いよいよ新章「楽園の誘惑」編がスタートします!
待ちに待ったリゾート地ということで、今回はミーナさんの大胆な水着姿(眼福です!)や、相変わらずマイペースな白、そしてちょっと生意気で可愛い新キャラクターのアリスちゃんやマリアさんも登場します!
泳げないドロイドの老鉄は、のんびりとリゾート内をお散歩中。
誰もが笑顔になる完璧な楽園……のはずですが、創業者エルシュタイン氏のちょっと怪しい視線や、老鉄の「過去」に繋がるかもしれない不思議な懐かしさなど、何やら小さな謎や違和感もチラホラと……?
華やかなリゾートの雰囲気と、少しずつ忍び寄る謎の始まりを、ぜひ最後まで楽しんでいってください!
私の名前は老鉄、旧式のドロイドです。
フォンテーヌシティの暴動から一ヶ月程が経ったある日…
老鉄「…?というと休暇を取られるのですね?」
リントハイム「そうだ!ようやく面倒な仕事が全部片付いたからな…それに、ガリウス戦の賭けでかなり儲かったが、あんなあぶく銭はパーッと使うに限る!」
リントハイム様に呼び出された私は執務室で休暇について相談を受けていました。
老鉄「私は休暇は必要ありません、メンテナンスさえ受ければ…」
リントハイム「そうだな?だが人間はそうはいかない…ちょうどロゼッタも退院した事だし…」
老鉄「なるほど?夜影さんとロゼッタを連れて行くおつもりなのですね?」
夜影さんはフォンテーヌシティで負傷し、ロゼッタはマインドコントロールを受けていたのでずっと入院していたのです。
リントハイム「その二人だけでなく、紅華と白とミーナ、あとは小雨もだ!」
お嬢様は当然として、料理長の小雨さんまでも連れて行くとは…少々驚きました。
老鉄「ゲンサンは連れて行かないのですか?」
リントハイム「一応はゲンさんにも打診したが…高級リゾートなんて性にあわないと言われたよ…」
老鉄「ゲンサンらしいですね?」
老鉄「では、私は留守番ですね?」
リントハイム「いや…老鉄も来るんだ!紅華が怒るだろう?」
老鉄「しかし私はリゾートに行ってもする事がありません。海で泳げば錆びますし…ウィンタースポーツも…」
私は自分の鋼鉄の腕を見ながら、リゾートで何をするべきか考えました。
リントハイム「老鉄、休暇というのは何もしないのが一番イイんだよ!」
老鉄「左様ですか?では私は着いていくだけで良いのですね?」
リントハイム「まあな!それにそのリゾートは完璧なセキュリティを備えているから…護衛の必要も無いんだ!…まぁたまにはゆっくりしようじゃないか?」
老鉄「承知しました。」
こうして私達は、中立宙域にあるリゾート専用惑星…エクスト、その赤道付近にある超高級リゾート「エルシュタイン・リゾート」に向かう事になったのです。
惑星エクストは星全体をシールドで覆い勝手に侵入出来ないようになっています、さらに環境保護の為に衛星軌道上の宇宙ステーションにあるシャトルで地上に降りなければならないという徹底ぶりでした。
老鉄「なるほど?セキュリティも完璧とはこの事ですか…」
宇宙ステーションにドッキングした宇宙船から乗り込もうとする私達の前には、セキュリティゲートがありました。
職員「ここで身体検査と持ち物の検査をさせていただきます!」
ゲートをくぐると早速、夜影さんが引っかかってしまいました…
職員「すみません、ナイフをお持ちですね?」
夜影「これは…魚を獲る為の…」
職員「この惑星では、現地生物の捕獲は禁止されています!」
夜影さんがいつも持っているナイフは取り上げられてしまったようです。
夜影「なるほど?徹底しているな?」
リントハイム「だから言っただろう?余計な心配しないで羽を伸ばすんだ。」
夜影「は はい…」
その後は順調にゲートを越えていきましたが、私の場合は少し違いました…
職員「すみません、ドロイドの方は本来ならば上陸出来ないのですが…」
老鉄「なんですと?」
紅華「ちょっと!老鉄はアタクシの家族なのよ!」
ミーナ「そうですぅ!ちょっとセクハラ気味だけど老鉄さんはイイ子なんですよぉ!」
ミーナさん…庇ってくれるのはイイのですが…セクハラ気味とはなんですかな?
職員「わ わかりました、それではリミッターを付けていただきますが、よろしいですか?」
老鉄「仕方ないですね?それに、護衛の必要がないのなら問題ないと思います。」
職員「それでは…あとこのリミッターを強制的に外しますと回路をショートさせる電流が流れてドロイド自体が壊れるかもしれませんのでご了承ください!」
老鉄「どうせすることは無いのです、構いませんよ!」
こうしてようやく、私達は地上に降りたのでした。
シャトルはエルシュタイン・リゾートの空港に降り立ちました、惑星各地のリゾートには空港がありリゾート同士で行き来出来るようになっていました。
シャトルに乗っていたのは私達の他に数人でした、この惑星そのものが人数制限をしていて、選ばれた者だけが来れる極上のリゾートになっています。
空港からはモノレールでホテルに向かいます、このリゾートがある島自体がリゾートになっていて全てがホテルの敷地内ということで滞在している間は食事をしてもアクティビティを楽しんでも、お酒を飲んでも…お金は必要ありません。
ロゼッタ「わぁ〜!スッゴイ綺麗!」
海を眺めているロゼッタが感嘆の声をあげました、こんな綺麗な海を見たのは初めてなのでしょう…
老鉄「確かに…透明度の高い海ですね。白い砂浜からエメラルドグリーン、そしてコバルトブルーへとグラデーションが変わっていく様子は、実に美しいです。」
夜影「こら、ロゼッタ!静かにしてなさい!」
ロゼッタ「お姉ちゃんも見なよ!本当に綺麗なんだから…」
老鉄「お姉ちゃん?はて?お二人には血の繋がりはなかったはずですが…?」
紅華「フフ…入院した時に夜影はずっとロゼッタを励ましてたのよ!その時に『お前はアタシの妹だ!』って宣言したのよね?」
夜影「お嬢様、それは内緒の…あ〜…もういいです!」
それから夜影さんは真っ赤になって黙ってしまいましたが、皆さんは何故かニヤニヤしていました。
ホテルの玄関に到着すると、スタッフとリゾートのオーナーであるエルシュタイン氏が出迎えてくれました。
エルシュタイン「ようこそいらっしゃいました!ロマノバ御一行様とリントハイム御一行様ですね?」
同じシャトルで来たロマノバ様達は美しい金髪のご婦人と体格の良いグレーの髪色の軍人らしき女性、そしてワガママそうな少女の三人組でした、体格の良い女性はボディガードでしょうか?
私が観察していると金髪のご婦人が私の方をチラリと見ました、とても意思が強そうな眼をした方で一目で高貴な方だと推測します。
エルシュタイン「リントハイム様、ようこそいらっしゃいました!ようやく来ていただけましたな?」
シルバーグレーの髪をきちんと整えたエルシュタイン氏が頭を下げます。
老鉄「ようやくとは、どういう意味でしょうか?」
エルシュタイン「リントハイム様には以前より招待状を送っていたのですよ!何せ銀河でも指折りの大富豪だ!来てくだされば、このリゾートの格が上がるというもの…」
リントハイム「なかなか仕事が忙しくてね…今回ようやく休暇を取れたのです!」
エルシュタイン「そうでしょうとも!…しかしリントハイム様は、美しいご婦人ばかりを連れてられますなぁ…皆さんどうぞごゆっくりとお楽しみくださいませ!」
挨拶が済むとエルシュタイン氏は帰って行きました。
紅華「ふぅ…休暇で来たのに肩が凝る支配人ねぇ…?」
堅苦しい挨拶が苦手なお嬢様はああいう挨拶は苦手なのです。
ミーナ「あのおじさん、ワタシの事をずっとエロい目で見ていましたぁ…」
老鉄「はて?エロい目とはどんな目でしょう?」
紅華「アンタは鈍いから…まぁこれは女の子にしかわからないかもね?」
小雨「ミーナは可愛いからだよ!おじさんにはモテるんだね?」
ミーナ「おじさん以外にもモテますぅ!」
ミーナさんは頬を膨らまして怒っていました。
部屋に荷物を置いて、私は何をするべきか考えました。
皆さんのように海で泳ぐことは出来ませんし…リントハイム様のように木陰で本を読む趣味もありません。
そこで私はリゾート内を一人で探索することにしました。
ホテルの廊下を歩くと数人のスタッフとすれ違いました、皆さん行儀良く挨拶してくださいます。
そこで私はある事に気がつきました。
スタッフの中にドロイドが一体もいないのです。
また一人、人間のスタッフが通りかかったので私は質問してみました!
老鉄「すみません、このリゾートにはドロイドはいないのですか?」
女性スタッフ「そうですね、このリゾートは全て人間のスタッフで運営しています。」
老鉄「ほう?人件費が大変そうですね?」
女性スタッフ「創業者であるエルシュタイン様の方針なんです。『最高のおもてなしは人の手から』という理念を大切になさっていて、ドロイドや大型機械は極力使わないようにしているんですよ。」
老鉄「なるほど?それは素晴らしい理念です。」
女性スタッフ「おかげで大変なことも多いんですけどね?でも、お客様に喜んでいただけるのが一番ですから!」
老鉄「なるほど?徹底したホスピタリティと環境対策の為なのですね?」
綺麗な海や空気を守る為に。
そして何よりお客様のことを考えた上、それを徹底している事に私は感心しました。
開発が進み生活に影響が出るレベルにまで、環境を破壊してしまった惑星が少なからず存在するからです。
それから私はホテルの目の前にあるビーチに行ってみました。
ミーナ「老鉄さぁん!何しているんですかぁ?」
不意にミーナさんが声をかけてきました、彼女は大胆な水着姿で浮き輪を持っていました。
老鉄「リゾート内を探索してるのです、私は泳ぐ事は出来ませんし…」
ミーナ「そうでしたねぇ〜…何か面白い物はありましたかぁ?」
老鉄「面白い物は特に何も…」
ミーナ「そうなんですねぇ?ここのビーチはぁ綺麗なお魚が沢山いるんですぅ!とっても可愛いんですよぉ〜!」
老鉄「楽しかったようで良かったです!」
エルシュタイン「老鉄さん、どうですかな?このリゾートは?」
不意にエルシュタイン氏が声をかけて来ました、両手にはトロピカルなドリンクを持っています。
老鉄「素晴らしいと思うのですが…あいにく私は泳ぐことも出来ませんので…」
エルシュタイン「それは残念ですが…お嬢さん、コレをどうぞ!」
そう言ってミーナさんにドリンクを渡します。
ミーナ「わぁ!いいんですかぁ?」
エルシュタイン「ハハハ!ここでは何を飲んでも、食べてもお金はいりませんよ!」
ミーナ「凄いですねぇ?いただきますぅ!」
エルシュタイン「どうですかな?お味は?」
ミーナ「凄い美味しいですぅ〜!ん〜甘さと酸味のバランスが絶妙ですぅ!」
私から見ても、お世辞抜きで美味しそうにミーナさんは飲んでいました。
エルシュタイン「お嬢さんはあの紅華さまの専属メイドだとか?」
ミーナ「そうですぅ!ミーナがお嬢様のコーディネートをしているんですよぉ〜!」
エルシュタイン「それはそれは…このリゾートにはブティックもありますので、そこでリゾートファッションを探してみてはいかがでしょう?」
ミーナ「それは良いですねぇ?お嬢様に似合う服を後で探してみますぅ!」
エルシュタイン「ええ!是非来てくださいね!」
そう言ってエルシュタイン氏は去って行きました…
私には、彼の視線がミーナさんの身体を這うように動いているように見えました… ですがただの好色とは違う、まるで品定めをするような目だった気がするのです……
しかしあくまでも推測なのであえて言わずにおきました。
しばらく歩くと木陰で白がサマーベッドで寝てるのを見つけました、近づくとテーブルの上のヌマルが小声で話しかけてきました。
ヌマル「白は寝てるニャ!起こさないように静かにするニャ!」
老鉄「わかりました!」
ヌマルは一見、猫のぬいぐるみにしか見えませんが…実は最新のプロセッサとAIを搭載した高性能端末なのです、しかし私のように自由には動けないので、白と常に一緒にいます。
ヌマル「白は海にも入らニャいし、美味しいものも食べニャいのニャ!アタシはつまらないのニャ!」
老鉄「私もすることがないので散歩しているのですよ!…一緒に行きますか?」
ヌマル「やめて置くニャ、白が起きたらアタシがいニャいと悲しむニャ!」
老鉄「ヌマルは優しいですね?」
ヌマル「アタシは最新のAIニャ!人の気持ちだってわかるのニャ!」
老鉄「さすがですね?では白の事は頼みますよ!」
ヌマル「わかったニャ!」
私は白を起こさないように静かに歩いてその場を離れました。
白が寝ている近くのテラスに美しいご婦人が座って、こちらを見ていました…ロマノバ御一行様のお一人の金髪の女性です。
老鉄「こんにちは!イイ天気ですね?」
女性「フフ…懐かしいわね?GDR-04なんて…」
私の型式番号を呼んだご婦人に、何故か私も懐かしい感じを受けました…
老鉄「私の型式番号を知っているのですか?」
女性「ええ!私は帝国から来たのよ!だから帝国製のドロイドはたいてい知っているわ!」
老鉄「そうなんですね?だから懐かしいと…?」
マリア「ええ…子供の頃に見た事があるの…!」
老鉄「そうでしたか…なるほど?」
マリア「そうそう…私の名前はマリアよ!アナタの名前は?」
老鉄「はい!老鉄といいます!」
マリア「老鉄…面白いドロイドさんね?」
老鉄「面白いですか?」
マリア「ああ…別にバカにしてる訳じゃ無いのよ?ただね…旧式だけど妙になんか人間臭いところがあると思って…」
老鉄「私は最新のドロイドほど賢くはありませんが…」
マリア「フフッ!そういうところがなんか人間臭いのよね!」
マリアさんは高貴な雰囲気がある方ですが、フランクに私と話してくださいます。
老鉄「ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです!」
マリア「そう?」
女の子「ママ!お腹空いた〜!」
ワガママそうな女の子がマリアさんに声をかけて来ました…どうやら娘さんのようです。
マリア「そう?それじゃレストランへ行きましょうか?」
女の子「ママ、そのドロイドさんは知り合いなの?」
マリア「今ここで知り合ったのよ!昔は帝国内にも沢山いたのよ?」
女の子「ふーん?」
老鉄「こんにちは、はじめまして!私の名前は老鉄です。」
アリス「こんにちは、アタシはアリスだよ!アリス・ロマノバ!」
老鉄「アリスさんですか、元気ですね?」
アリス「うん!アタシはいつも元気だよー!」
マリア「そろそろレストランに行って何か食べましょう!」
アリス「うん!バイバイ、老鉄さん!」
アリスさん達は手を振ってレストランに向かいました。
私は二人の姿を見送りながら、何故か胸の奥に懐かしい感覚が残っている事に気がつきました。
はて?何故でしょう?
その答えを、私はまだ知りませんでした。
つづく…
ここまでお読みいただきありがとうございます。
作者は「たまには平和な話を書こう!」と思ったのですが、老鉄は海にも入れず、お酒も飲めず、結局リゾートを徘徊しておりました。
本人は暇そうですが、何やら怪しい支配人や謎の親子も現れましたので、どうやら本当に平和な休暇にはならないようです。
次回もよろしくお願いいたします!




