三日月のレクイエム(完結編)
惑星バルジアンの首都、フォンテーヌシティ!
そこは古き都であり伝統と自由の都と呼ばれています…
しかし歴史を紐解けば、そこは革命や騒乱が繰り返される都市でもありました。
そんな街に再び動乱の気配が迫っていました…
果たして紅華達と少女ロゼッタの運命は…?
今回はそんなお話。
私の名前は老鉄、旧式のドロイドです。
フォンテーヌシティの繁華街にほど近いホテルの部屋で、私達は明日の退院祝いのパーティーについて話し合っていました。
私の記録装置に保存されている、街の地図と屋敷の見取り図を3Dホログラムにしてテーブルの上に映し出しています。
紅華「…それじゃ、屋敷の外からの狙撃は不可能なのね?」
夜影「はい!屋敷は郊外の小高い丘の上にあるので…狙撃ポイントは限られます!」
私達は明日のパーティーでロゼッタが襲撃してくると予想して対策を考えているのです。
老鉄「お嬢様、狙撃が不可能ならばロゼッタは諦めるのでは?」
紅華「兄の仇がのうのうと生きているなんて…ロゼッタには我慢出来ないはずよ!」
夜影「たった1人の兄ですからね…」
老鉄「…となると、屋敷に侵入してくる可能性がありますが…当然マドレーヌ氏側も警戒しているはずです、容易には入れません。」
紅華「ロゼッタの協力者がマドレーヌの知り合いだったら話は別よ!」
夜影「そうですね?明日のパーティーには他の組織の代表達も来るらしいですし…招待客に紛れて侵入する可能性はあります!」
紅華「それもあるけど…アタクシはジャベールが怪しいと睨んでいるのよ…!」
夜影「…!」
老鉄「お嬢様…私も彼は少し怪しいと思っていました、マリウス君が元気になるのを恐れているような発言があったので…」
紅華「そうね?ジャベールが黒幕ならロゼッタを手引きして屋敷内に侵入させる事も可能よ!」
夜影「それじゃあジャベールをマークしておいた方が良いですね?」
紅華「でもこれはアタクシの勘よ!」
老鉄「お嬢様の勘は侮れませんから…しかしジャベールが協力者だとすると厄介ですね?」
夜影「そうですね?屋敷の内部にも詳しくてマドレーヌの信頼も厚い、そんな人物がもしも敵だったらと考えると…」
紅華「それに怪しいとは言っても、今のところ何も証拠は無いわ!ジャベールに気をつけるのはもちろんだけど…何よりもロゼッタを見つけるのが先決よ!」
夜影「そうですね…ロゼッタ…今頃どうして…」
そうして…夜がふけていき…朝がやって来ました…!
パーティーは夕方からなので、それまでは出来るだけの調査をしましたが…何の手がかりも掴めませんでした…!
ロゼッタが身を隠すのが上手いのか、それとも誰かに匿われてるのか?…まさか既に屋敷に入り込んでいるのか?…私には判断できませんでした。
いざパーティーに向かう段階でお嬢様と夜影さんは大騒ぎです。
夜影「やめてくださいお嬢様、そんなの無理です!」
紅華「大丈夫よ!絶対に似合うから!」
老鉄「…いったい何を騒いでいるのですか?」
紅華「パーティーなんだから、夜影もドレスを着なくちゃでしょ?」
夜影「いえ、そんな露出の多い服では任務に支障をきたします、断固拒否です!」
紅華「たまには夜影もこういう服を着ないとダメよ!」
老鉄「お嬢様…夜影さんが嫌がってますよ!それよりも早く支度をしませんと…遅れますよ!」
紅華「ちぇ〜…」
老鉄「夜影さん、お騒がせいたしました!早く支度を…」
夜影「ありがとう老鉄さん!まったくもう…」
私達がホテルのロビーから玄関に出るとフィリップの車が止まっていました。
老鉄「お嬢様、フィリップがいます!」
紅華「昨日のうちに今夜のパーティーの送迎を頼んでおいたの!」
老鉄「なんと?こんな車で行くおつもりですか?」
フィリップ「こんな車とは失礼ですぜ!」
フィリップが近づいてきました、何故か彼はタキシードを着ています…
紅華「結構似合うじゃない?これなら会場だって入れるかもよ?」
老鉄「お嬢様…いったいどういうおつもりですか?」
紅華「フィリップの車でマドレーヌ邸まで送ってもらうのよ!だってタクシーだと老鉄は荷室に入れられるもの!」
そうです…この街のタクシーは私が乗るとシートが汚れると言って私を荷台に載せるのです。
老鉄「そういう事ならば仕方ありませんね?フィリップさんお願いしますよ!」
フィリップ「ええどうぞどうぞ!しかしギャングのパーティーなんて…なんか怖いね…?」
紅華「会場までは入れなかったとしても、駐車場で待っていて!」
フィリップ「は はい!…いやぁ流石は銀河で一番イイ女だ!見とれちゃうぜ!」
紅華「フフ…当然ね?」
夜影「フィリップさん早くドアを開けてください。」
私達は車に乗りこみましたが、当然私は助手席に座りました。
フィリップ「あぁ…やっぱり隣は老鉄さんなんすね?」
老鉄「当然です!さあ行きますよ!」
フィリップ「ふぅ!あいよっ!」
こうして私達を乗せた車はホテルを出発しました。
マドレーヌ邸の直前まで来ると、警察車両が止まって検問をやっていました。
フィリップ「あれぇ?なんすかね?警察署長のアンドレが居ますよ?」
アンドレ「フン!ギャング共が集まっているからな…何か起きないように警戒しとるんだ!」
老鉄「なるほど?危険物の持ち込みを警戒しているんですね?」
アンドレ「そうだ!帝国製のドロイドの癖に物分りがイイじゃないか?」
老鉄「お褒めに預かり恐縮です。」
フィリップ「老鉄さん、ありゃ褒めてるんじゃなくてバカにしてんすよ!」
老鉄「なんと?」
アンドレ「フォンテーヌ製のドロイドはもっと気品があるからな!見た目も美しいぞ!」
老鉄「そうですか…それは良かったです!」
なんとなく気分の悪い検問を抜けて、ようやくマドレーヌ邸に到着しました。
屋敷の外周には警察官が配置され、邸宅の各所には組織のメンバー達が警戒しています、ロゼッタが既に屋敷の中に入り込んでいたとしても…常識的に考えれば、もはや襲撃など不可能でしょう。
……ですが、これまでのロゼッタの執念を知る私は、嫌な予感を拭えませんでした。
フィリップは車の中に待機させられましたが、私達は会場である大広間にやって来ました。
既に大勢のギャングの代表達がグラスを片手に歓談しています。
メイド型ドロイド「お飲み物はイカガデスカ?」
可愛いメイド型ドロイドが、声をかけて来ました…お盆に飲み物を乗せて何体かが動き回っています。
紅華「あらぁ?可愛いドロイドね?これがフォンテーヌ製のドロイドかしら?」
老鉄「どうやらそのようですね?小柄でまるで人間の女の子のようなフォルムですね?」
夜影「…ロゼッタが変装している可能性はありませんか?」
暗殺には詳しい夜影さんが警戒します、さすがは紅棘の隊長です!
老鉄「スキャンしましたが生命反応はありません、ドロイドで間違いないかと!」
私はこのメイド型ドロイドが何故か気になってしまいました。
老鉄「お嬢さん、お名前はなんと?」
メイドドロイド「ワタシはMMR-48タイプAデス!固有ノ名称はアリマセン。」
老鉄「可愛いですね!」
メイドドロイド「お褒メニ預カリ光栄デス!」
紅華「老鉄、なにナンパしてるのよ?」
老鉄「いえ、これはナンパではなくて…」
夜影「ナンパする暇があったら周囲を警戒してください!」
…なんだか知りませんが怒られてしまいました…理不尽とはこの事です!
マドレーヌ氏の挨拶から各地のギャングの代表達の挨拶も済み、飲めや歌えのどんちゃん騒ぎになってしまいました…私には何が楽しいのかは分かりませんが、平和なのは何よりです。
ジャベール「老鉄さんは飲めないから退屈ですかね?」
不意にジャベールが話しかけて来ました、すでに酔っているのか赤い顔をしています。
老鉄「私には退屈という感情はありませんので、お気遣いは無用です…ですがありがとうございます!」
ジャベール「そうなんですね?今夜はボスも上機嫌だから…このまま何も無ければ良いんですがね?」
老鉄「そうですね?…そう言えばあのメイドドロイドは座ったままですが…どうしたのですか?」
私は隅の方で座ったままのメイドドロイドを指差しました。
ジャベール「あれは壊れているみたいですね?あの椅子は充電器になっているんで…充電中は目が赤く光るはずですが…ほら真っ暗になっているでしょう?」
ジャベールの言うように座ったまま微動だにしないので壊れていると思われます。
老鉄「壊れたままでは可哀想ですね、早急に修理してあげてください。」
ジャベール「可哀想…さすがは老鉄さん…で…Z z z」
ジャベールは床に仰向けに寝転がり眠ってしまったようです。
夜影「お嬢様!どうしました?」
声の方を見るとお嬢様が床に膝をついています、そして周りを見回すと夜影さん以外の会場の全員が眠ってしまっていました。
夜影「老鉄さん、眠り薬が仕込まれていたようです…お嬢様、中和剤です!」
そう言って夜影さんはお嬢様に薬を飲ませました。
老鉄「夜影さんは大丈夫ですか?」
夜影「私は何も飲んでいませんし食べてもいません!こういう事を想定しておいたので…」
間違いなくコレはマドレーヌ氏を狙っての事でしょう!しかしこの後はどうするつもりなのか…?
私が周囲を見回してもメイドドロイド以外には動いている者は居ません。
老鉄「…あれは?」
ふと見るとお食事の乗ったワゴンを運ぶドロイドがカメラに写りました、そして…壊れて座っていたはずのメイドドロイドが居なくなっていました。
私はワゴンを運ぶドロイドに近づくと…
老鉄「ロゼッタさん?」
と声をかけました、ドロイドは停止しましたが何も返答がありません。
夜影「老鉄さん、このドロイドがどうかしたんですか?」
老鉄「夜影さん、この子はロゼッタだと思います…何故なら目が光っていません!」
夜影「…!ロゼッタ、ロゼッタなの?私よ!夜影よ!」
しかし彼女は反応しません、私は動けないように取り押さえました。
夜影「こんなもの!」
夜影さんはドロイドの仮面を外しました、仮面の下のその顔は間違いなくロゼッタでしたが、その表情はドロイド以上に無機質で冷たい顔でした…!
夜影「ロゼッタ、兄さんの仇討ちなんてやめるのよ!」
ロゼッタ「かたき…討ち…」
夜影「そう!私達と一緒に帰り…」
パン!
その時、銃声が響きました…
夜影「う…く…」
夜影さんは崩れ落ち床に膝をついてしまいました。
老鉄「夜影さん!」
私は夜影さんを抱き上げました。
服の下から血が滲んで来ました…
ロゼッタ「兄さんの…仇…」
そう呟きながら、ロゼッタはマドレーヌ氏達の座っている上座の方に向かいます。
手にはポケットに入る小型の護身用のピストルが握られていました、あれは至近距離で無ければ殺傷能力は低いはずですが…
夜影「老鉄さん…私は大丈夫です、この服にはある程度の防弾機能があります…だから…ロゼッタを止めてください…」
老鉄「そう仰るならばお任せください!…ですが絶対に死なないでください!」
そう言って夜影さんを降ろすと、私はロゼッタに駆け寄りました。
私はロゼッタを取り押さえると、彼女の表情や心拍数などを分析してどういう状態なのか推察します。
感情という物が一切感じられないその表情から、ある種のマインドコントロール下にあるかと思われます。
老鉄「ロゼッタ、あなたは人殺しなりたいのですか?お兄ちゃんのジャンはそんな事を望んでいないはずですよ!」
私がそう言うとロゼッタは体を震わせて停止しました、正気に戻ったのでしょうか?
その時、突然私の背中から高圧電流がほとばしります、回路がショートして体が動かなくなりました、ロゼッタも感電して気を失ってしまいました。
私の後ろから聞き覚えのある声が聞こえて来ました…
ジャベール「あと少しだってのに…邪魔しやがるからだよ!」
老鉄「ジャベール…あなたは…?」
ジャベール「このガキを使ってマドレーヌを始末するつもりだったが…チンタラやってるから痺れを切らしたぜ!」
老鉄「なんですと?やはり…あなたは…」
ジャベール「フン!」
老鉄「なんでこんな事を…アナタは組織のナンバー2でしょう?」
ジャベール「マドレーヌのヤツは息子の病気が治ったから臓器売買シンジケートを解散するって言ってな!今や他の星からも注文が入る、こんな儲かるビジネスを捨てようとしたんだよ。」
老鉄「なるほど?アナタはそれを継続しようとした訳ですね?だからマドレーヌ氏をロゼッタを使って消そうと…」
ジャベール「それだけじゃねぇ、フォンテーヌを築いたのは俺達、フォンテーヌ人なんだよ!」
老鉄「…そうですか?」
ジャベール「…だがな戦争が終わったら移民どもが押し寄せて来やがった!」
老鉄「なるほど?」
ジャベール「そして気付けば街の顔役はマドレーヌだ。」
老鉄「アナタはそれが気に入らないのですね?」
ジャベール「そうさ!この歴史と伝統ある街に住んでイイのは正統な血統のフォンテーヌ人だけだ!」
紅華「歴史だか血統だか知らないけれど……アタクシたちの家族を泥足で踏みにじった代償は、高くつくわよ!」
老鉄「お嬢様!」
気がつくとお嬢様が立ち上がっていました、中和剤が効いたのでしょう。
ジャベール「家族?この難民のガキが?おめでたい女だな?薄汚い難民や移民が…血の繋がりも無いのに家族なんて笑わせるんじゃねぇ!」
紅華「なんですって?」
ジャベール「おっと、動くなよ!まさか素手で銃に勝てるなんて思っているんじゃねぇだろうな?」
ジャベールはお嬢様に拳銃を向けていますが、私はまだ動けません…
紅華「くっ!」
パァン!
その時、銃声が響きました。
フィリップ「そこまでだ!ジャベール。」
ジャベール「き、貴様は…?」
銃を跳ね飛ばされたジャベールが青くなります。
フィリップ「俺は連邦警察の秘密捜査官さ!」
フィリップはジャベールに銃を突きつけながら近づきます、連邦警察とは惑星バルジアンの全体を管轄する警察です。
フィリップ「臓器売買が他の星にまで広がりつつあったから以前からこの街で潜入捜査していたのさ!」
ジャベール「ち、チクショー!」
そこへ警官が慌てて走り込んで来ました!
警官「フィリップ捜査官大変です!暴動が発生して暴徒がこの屋敷に押し寄せて来ます!」
フィリップ「なに?暴動?」
ジャベール「フハハハ!ようやく来たか?」
老鉄「どういう事ですか?」
ジャベール「俺がダウンタウンの奴等にマドレーヌがお前らの子供を攫って臓器を売ってた犯人だって教えてやったのさ!」
フィリップ「なんて事を…」
ジャベール「怒り狂った連中に武器も与えてやったからな…お前らも道連れにしてやる…」
フィリップ「アンドレは確保しているか?」
警官「はい!既に連行しています!」
フィリップ「よし、それじゃジャベールを連行して全員を脱出させろ、俺もすぐに出る!」
警官「はっ!了解であります。」
フィリップ「暴徒が押し寄せて来る前に逃げるぞ、みんな車に乗れ!」
私は夜影さんを抱き上げて、フィリップはロゼッタを背負って駐車場に走りました。
紅華「夜影、大丈夫?」
夜影「大丈夫です…ですが防弾性があるとはいえ至近距離では衝撃を分散しきれませんでした…」
老鉄「そうは言っても無傷ではありませんよ!血が出てました、早く病院に…」
夜影「もう止血はしましたから…それよりもロゼッタを…」
そうこうするうちに車の前までやって来ました、街の方を見るとあちこちで火の手が上がり、爆発音や銃声が響いてきます。
フィリップ「コイツはやばいな…早く逃げないと…」
全員車に乗り込みましたが、私自身は座席に空きが無い為にまたしても荷台に乗る事になってしまいました…何という事でしょう。
ハイウェイを走行する車から見ると群衆同士が乱闘になっている様子が見えました…移民の人々といわゆるフォンテーヌ人がお互いの憎悪をぶつけ合っているのです。
無線「ガー…警部…ガー…護送車が暴徒に…ガー…襲われました!」
フィリップ「チッ!何やって…」
無線「暴徒が…ガー…ジャベールを…奪われて…ガー」
フィリップ「ジャベールが逃げた?…仕方ない…今は街から脱出しないと…」
紅華「私達も逮捕されるの?」
フィリップ「本来なら重要参考人だけど…アンタ達は暴動に巻き込まれた不幸な旅行者だ…早く帰りな!」
紅華「フィリップ…」
夜影「連邦捜査官がそんな事をして良いんですか…?」
フィリップ「俺は臓器売買シンジケートを調査していたんだ…アンタらは皆んな被害者さ、そのロゼッタだって…お兄ちゃんが殺されなかったらこんな事はしてないだろ?」
夜影「そうですね…ありがとうございます…!」
フィリップ「警察署長のアンドレは誘拐されたロゼッタを保護したが…彼女の才能と復讐心に眼をつけて暗殺者にするべく警察の施設を使ってロゼッタに訓練を施した…」
紅華「あの嫌な署長がそんな事を…?」
夜影「メイドドロイドに化けても、壊れたように動かないでずっと機会を待っていたなんて…やはり"ステルス・ローズ"のあだ名は伊達ではなかったようですね?」
やがて宇宙港に到着した私達はフィリップにお礼を言いました。
老鉄「フィリップさん、ありがとうございました!このご恩は忘れません!」
夜影「早くフォンテーヌシティに平穏が戻りますように…」
紅華「アタクシの睨んだ通り…アンタはただのチャラ男ではなかったわね?」
フィリップ「へへっ!こちらこそ銀河で一番イイ女に会えて嬉しかったぜ!」
そう言ってフィリップは握手をしようと手を伸ばします…私はすかさず両手で彼の手を握ってあげました。
フィリップ「イデデ…老鉄さん、痛いって…!」
紅華「フフッ!じゃあね、フィリップ!」
フィリップ「あ、あの…」
紅華「フィリップ、アンタはアタクシが会った中で銀河で三番目にイイ男よ!」
お嬢様はそう言ってリントハイム家の自家用宇宙船に乗り込みました、この船には医療設備も備わっており夜影さんの手当てを医療ドロイドがしてくれるでしょう!
フィリップ「じゃあな!また会おうぜ!」
宇宙船は大気圏を飛び出し超光速航行に入りました。
老鉄「ところでお嬢様、銀河で一番イイ男はリントハイム様として…二番目は誰でしょうか?お嬢様の師匠の玄鉄様ですか?」
紅華「フフ…二番目はね…老鉄、アンタよ!」
老鉄「なるほど?ありがとうございます!」
こうして私達はリントハイム様の元に戻ったのです…!
リントハイム邸に戻り、夜影さんとロゼッタは病院へ、夜影さんはもう治ったと言い張りましたがロゼッタと仲良く入院となりました。
そんなこんなでリントハイム様への報告は夜になってしまいました…リントハイム様は居間の窓から月を眺めながら聞いています。
老鉄「……以上が今回の顛末です。」
リントハイム「僅か三日で暴動は鎮圧…軍の戦闘ドロイドまで投入して死傷者5000人超…そしてジャベールはセンタ河で死体で発見か。」
老鉄「はい!死体の損傷が激しくDNA鑑定で確定したそうです!」
リントハイム「結局…生き残ったのはマドレーヌの息子のマリウスだけ…これでは向こうとのコネクションを作るのは無理だな?…いったい何しに行ったんだ?」
老鉄「申し訳ございません!しかしロゼッタを救えたのは唯一の…」
リントハイム「そうだな?それがせめてもの救いだ…!」
老鉄「はっ!」
リントハイム「紅華はどうしてる?」
老鉄「お嬢様は、庭で二胡を弾いておられます、お呼びしますか?」
リントハイム様は窓を開けて二胡の音に耳を傾けました…
リントハイム「いや…今夜はそっとしておいてやれ!アレは気丈に振舞っているが…悲しんでいるのだよ!」
老鉄「そうですね?お嬢様は…ジャンを守れなかった事を悔やんでおられます。」
リントハイム「そうだな?今夜の二胡の音はやけに悲しげに聞こえるよ…」
そう言って二人で月を見上げました、今夜は三日月です……
――三日月のレクイエム 完――
ロゼッタは、心を閉ざして石のようにじっとしていることができます。
ですがそれは、生まれつきの才能ではありません。 戦火の中を生き延びるために身につけた悲しい能力でした。
そんな彼女の資質に目を付けたのがアンドレです。
彼はロゼッタに 「兄の仇を討つ気はないか?」 と囁き、復讐心を利用して暗殺者へと仕立て上げようとしました。
この後ロゼッタがどうなるのかは…… まだ先のお話。




