狂弾のマエストロ 最終楽章
宿敵ガリウスの放った、ミルガノフ対戦車ライフルの弾丸が老鉄の右脚を破壊した!
紅華は単身、ガリウスの待っている廃ビルの屋上へと向う。
近接戦闘でも無敵というガリウスに対して老鉄は退場なのか?根性を見せるのか?
狂弾のマエストロ、最終楽章--開幕!
私の名前は老鉄、旧式のドロイドです。
最強のスナイパー、ガリウスとの対決に臨んだ私と紅華さまですが……
私はガリウスのミルガノフ対戦車ライフルで右脚を破壊されてしまい動けなくなってしまいました。
1体1の対決に屋上へ向かったお嬢様はシールドと私の銃を手にしてガリウスと対決します。
老鉄「お嬢様……すみません…肝心な時に…」
すると屋上から銃声が響いて来ました、さらに配置されていた銀の造花からガリウスの嬉しそうな声が聞こえます。
ガリウス「どうした?シールドの影に隠れてばかりじゃ師匠の仇は打てないぞ?」
その声は心底戦いを楽しんでいる人間の高揚感が溢れています。
どうやらお嬢様は防戦一方になっているみたいですね?コレはまずいです…
お嬢様の危機に私の回路の温度が上昇しました、すると不思議な事が起きました。
老福「老鉄…何を寝ている?お嬢様を守れ!」
死んだはずの老福さんが私の目の前に立っているのです。
老福さんは私がお嬢様の家に買われて、私に老鉄という名前を付けてくれた李家の使用人だった方です。
老鉄「すみません、私は脚をやられて歩けないのです。」
老福「お前さんにはまだ手がある、目も耳も…五感全てがあるじゃろう?」
老鉄「五感…」
その時、私は夜影さんの言葉を思い出しました…
夜影「私は五感全てを使って戦っているんです!」
老福「それに何より…お前さんのココじゃ!」
そう言うと老福さんは頭を人差し指で指しました!
老鉄「私の…頭脳?」
老福「そうじゃ!お前さんにだけ出来る事がきっと有る!」
老鉄「私だけが出来る…事…?」
老福「考えるんじゃ!そしてお嬢様を守れ!」
そう言うと老福さんは消えてしまいました…それは私の中に残った古い記憶が再生されたものなのか?それとも老福さんの魂が私の前に現れたのかは分かりませんでしたが…
老鉄「私にも、まだ出来る事は……あります!」
気がつくとその時間はほんの1秒足らずでした、そしてさらに私には時間が止まっているような感じがしていました!
…その中で私は全てのセンサーをONにして、ガリウスの位置を割り出します、同時に信じられない処理速度で建物の構造計算から芯柱の位置を特定します。
老鉄「分かりました!あの柱です。」
これだけの演算処理をわずか0.3秒で完了すると、バックパックをパージします。
バックパックが無くなった事で体を回転させて、移動する事が出来るようになりました。
私はそのまま、腕を使って体を転がして芯柱に近づいて行きます。
転がりながらセーフティーロックを解除して、右手の電極にエネルギーをチャージして行きます。
肩からジェネレーターが飛び出して唸りを上げます!
老鉄「ジェネレーター出力全開!」
転がりながら私の右手にエネルギーがチャージされて青白く光り輝きます。
芯柱の位置まで来た私は、回転する勢いを利用して右拳を柱に打ち付けます。
老鉄「ココです!」
次の瞬間、私は叫びました!
老鉄「電磁砕拳・一式イイイイ!(でんじさいけん・いちしき)」
私の一撃が命中した柱は上に向かってヒビ割れて行き、そして粉々に砕けて天井にも亀裂が入りました。
次の瞬間、天井は崩落し瓦礫と共にガリウスが落下して来ました!
ガリウス「なにぃ?建物ごと破壊する…とは…」
ガリウスは体制を崩しながらもお嬢様を狙って発砲しましたが、お嬢様の脇腹を掠めただけでした…
逆にお嬢様は持ち前の体幹で瓦礫の上を飛び移りながらガリウスにフルオート射撃します。
紅華「ガリウスっ!」
お嬢様の弾は数発がガリウスの体を貫き、ガリウスの体は瓦礫に半ば埋もれた状態で動けない様子です。
瓦礫を避けて屋上から飛び降りて来たお嬢様は身動き取れないガリウスに近づきました。
ガリウス「完璧なはずだったのに…最後はお前が切り札だったとはな?」
ガリウスは私の方を見てそう言いました。
紅華「これで終わりよ!玄鉄師匠の仇、覚悟!」
ガリウス「玄鉄……お前の弟子は……」
ガリウスはそこで笑いました。
ガリウス「完敗だ…」
お嬢様の弾丸がガリウスの額を撃ち抜いた瞬間、彼はとても満足そうな顔をしていました。
…瓦礫の中に倒れたガリウスを見ながら私は思いました。
もし出会い方が違っていたら、彼は敵ではなく頼もしい味方になっていたのかもしれません。
ですが彼は最後まで戦士として生き、そして戦士として散りました。
彼自身が言っていた事ですが、戦場を離れる事が出来なくなった人間だったんですね…
老鉄「お嬢様、お怪我はありませんか?」
紅華「えぇ…脇腹を掠めただけだし、ゲンさんのくれた防弾キャミソールが役に立ってくれたわ…でも…」
老鉄「でも?なんですか?」
紅華「これが大口径のマグナム弾だったら…あばら骨が折れていたでしょうね?」
ガリウスが使っていた拳銃は殺傷能力の高い大口径のピストルではなく、反動の少ない22口径でした…腕力が衰えていたのか?それとも…しかし本人が死んだ今、本当の事は分かりません。
後でガリウスの義眼を調べてわかった事ですが、お嬢様を狙っている時に義眼がフリーズを起こしてほんのわずかですが義眼は機能を停止していたようです、恐らくは電磁砕拳・一式の電磁波が干渉したせいだと思われます…なんにせよこれで仇討ちとリントハイム様を守る事が出来ました。
夜影さん達に回収されて、私達はリントハイム邸に帰りました、お嬢様は軽傷…私は右脚部交換が必要で人間だったら重症です。
私は壊れた右脚を見下ろしました。
ガリウスとの戦いの代償です。
ですが不思議と後悔はありません。
紅華お嬢様が無事だったのですから…
白が調べてわかった事ですが…ガリウスに依頼したのは要塞島で出し抜かれた腹いせに帝国軍情報部が暗殺を企てたようです、ゼロス様に翻弄されたのは自分達なのに…八つ当たりとしか言いようがないです。
ゲンサンの工房で修理を受ける私でしたが、必要なパーツが足りない為にしばらくは動けないそうです。
源蔵「…ったく!派手にやられたなぁ?対戦車ライフルなんて持ち出されちゃオイラのシールドだって無力だぜ?」
老鉄「そんな事はありませんよ!シールドのお陰で脚だけで済んだんですから。」
源蔵「そうなのかい?それなら…まぁ…」
老鉄「ゲンサンだけでなく夜影さんや白の協力があったから勝てたんですよ!」
源蔵「へへっ!確かにそうだな?しかしよくもまぁ芯柱を破壊するなんて考えついたな?」
老鉄「そう言えば不思議なんです…あの時はものすごいスピードで演算処理が出来たんです。」
源蔵「そいつはもしかして…あのプロメテウスコアのお陰かもな?」
老鉄「なるほど?そうかもしれませんね?まるで時間が止まっているような感じでしたし…」
源蔵「電磁砕拳・一式みたいにお前さんの回路の温度が上がると発動するとかじゃないのか?」
老鉄「そうなんですかね?私には分かりませんが…」
源蔵「まぁイイや!お嬢も無事だったし…そういやお嬢に賭けた連中は大儲けだな?」
老鉄「あぁそう言えば…そんな不謹慎な連中も居ましたね?」
リントハイム「不謹慎かどうかはともかく、私は紅華を信じていたよ!」
突然、リントハイム様が工房に入って来ました。
源蔵「旦那!いきなりどうしたんだい?」
リントハイム「いや…頑張った老鉄に…」
源蔵「なるほど?お嬢を守ったヒーローを労いに来たってワケだ?」
リントハイム「…まぁそんな所だよ!老鉄、よくやった!これで大儲けだ!」
老鉄「はい?」
源蔵「まさか旦那、お嬢に賭けていたのかよ?」
リントハイム「あぁ!こんなあぶく銭はパーッと使うに限るからな?今度みんなで休暇を取ってリゾートにでも行って羽根を伸ばそう!」
源蔵「さすが旦那!豪気だねぇ?」
リゾートに行っても…私は美味しい物も食べられないし泳ぐ事も出来ません…
リントハイム「まぁ明日も商談があるからな…休暇はまだまだ先だ!」
源蔵「そういや、明日の護衛はどうするんだよ?旦那。」
リントハイム「明日は別に紅華が居なくても大丈夫だよ!危険な相手でも無いし、夜影達で十分だ!」
老鉄「それを聞いて安心しました!」
リントハイム「今夜はゆっくり休んでくれ、お疲れ様!」
源蔵「あいよ!」
老鉄「おやすみなさいませ!」
リントハイム様が扉を開けると庭の方から二胡の音が響いて来ました…
リントハイム「ほう?今夜の音色は実に清々しいな?」
源蔵「お嬢が引いてるのか?なんか風流だねぇ…」
老鉄「風流というのは私には分かりません、ですが今夜の二胡の音色がお嬢様のお師匠、玄鉄さんに捧げるものだという事は私にも分かりました!」
##老鉄の独り言:ログ020
【幽霊】
私の前に現れたのは老福さんの幽霊だったのでしょうか?
そもそも、幽霊なんて存在するのか…私には分かりません。
しかしガリウスに勝てたのは、間違いなく老福さんの励まし。
…そして同時に協力してくれた皆さんのお陰だという事は…
紛れもない事実です!
宿敵ガリウスを紅華と老鉄達みんなの力で倒した事で、より一層みんなの団結力が
高まったのを感じる回でした。
老鉄のクロックアップは果たしてプロメテウスコア17(ワンセブン)の覚醒なのか?
ただの偶然か、それとも設計された覚醒なのか——
まだまだ謎が残ります。




