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ゼロス・ハイマンの影

老鉄の撮影した映像の中に映り込んでいた謎の男性…その姿を見てリントハイムは、かつて無いほどの表情で画面を見つめていた…

彼が「先生」と呼ぶ人物とは?

リントハイムが語る若い頃の記憶とは……?

今回はそんなお話し。

私の名前は老鉄ラオティエ旧式のドロイドです。

リントハイム様が謎の男性の姿を見て驚愕していた翌日…私達は情報管理室に来ていました。

リントハイム「どうだ?見つかったか?」

ヌマル「防犯カメラの映像を全てチェックしてみたけど…見つからないニャ…」

リントハイム「…そうか…ご苦労だった…引き続き調査を続けてくれ…!」

映像に映っていた男性を見つける為に、観覧車付近の防犯カメラの映像をハッキングして、ヌマルに精査してもらっていたのです…ヌマルは白がいつも抱いているぬいぐるみなのですが…中身は最新のプロセッサとAIを搭載していて処理速度が私よりもずっと早いのです。

白「ごめんなさい…」

リントハイム「ん?気にしなくていい…ただの見間違いかもしれないからな…」

白「これからも…ヌマルと探してみるから…!」

リントハイム「…ありがとう、よろしく頼むよ!」

そう言ってリントハイム様は部屋を出ていきました。

私は白がリントハイム様に対して、いつもどこか警戒していて、そばに寄りつかないのを知っていましたが、今日は少し違いました…

紅華ホンファ「あら?白もなんだか今日はリントハイム様に優しいんじゃない?」

老鉄「そうですね!私もそう思います。」

白「姐姐ジェジェが言った…リントハイム…悪い男…だけど…悪人じゃない…」

老鉄「そうですか…そんな事が…?」

紅華「アタクシも悪かったのよ、白にちゃんと説明して無かったから…誤解させてたみたいで…」

白「姐姐は悪くない…ヌマル…作ったの…リントハイム…ワタシ…知らなかった…」

そうです、ヌマルは元々白の負担を減らしてサポートする為にリントハイム様が設計した端末装置でした!

紅華「でも、可愛い外見にしたのはアタクシよ、女の子なんだから無骨なガジェットよりもこういう可愛い方が似合うもの!」

白「カワイイ?」

紅華「そう!白は可愛いアタクシの妹!」

そう言われると白は顔を赤らめヌマルを抱きしめて黙ってしまいました…おそらく何と言えばいいのかわからないのだと思います。


そんな事があった数日後…私とお嬢様は例の観覧車の下に来ていました。

老鉄「お嬢様、あの男性はすでにこの星にはいないのでは?」

紅華「そうかもしれないけど…なんか気になるのよね…あの画像からすると老鉄を見ていたようにしか見えないし…」

老鉄「私は旧式のドロイドです、珍しいと思い見ていただけでは?」

紅華「そんな感じかしら?」

老鉄「それよりも不可解なのは防犯カメラの映像には一切写っていない事です。」

紅華「そう言われると…そうよね?ステルスシステムでも使わない限りそんな事は不可能だわ…」

老鉄「しかし人混みでステルスシステムを使うのは非合理的です、他人とぶつかるリスクから計算してそれは意味がありません。」

紅華「そうよね……?あの映像からするとこの辺りにあの人は立っていたはず…あ…!」

お嬢様が何かに気づいたようです…

紅華「ごめんなさい、ちょっと聞きたいんだけど…」

お嬢様は小さな屋台を見つけて店主さんに話しかけました。

屋台はポップコーンとソフトドリンクを売っているお店でした…お嬢様はお金を払いポップコーンを購入すると店主さんに話しを聞きます。

紅華「確かにこの男だったの?」

店主「それは分からないけどね…帽子を被って無表情な男が1人で観光地に来てるなんて…なんか事件でも起こさなきゃイイなぁ…って心配していたんだよ!」

紅華「この辺りで事件なんてあったの?」

店主「いや…別に無いけどさ、たまにあるだろう?何が不満だか知らないけど…いきなり暴れたり人を襲ったりする奴がさ!」

紅華「そうよね?…うん、ありがとうね!」

話を聞き終えて私達は屋台を離れました…お嬢様はポップコーンを一粒一粒口に運びながら真剣に何かを考えているようでした…

挿絵(By みてみん)

紅華「防犯カメラには写らないけど、そういう男は確かに居た…一体どういう事かしら…?」

老鉄「それでしたら幾つかの可能性があります。」

紅華「どんな?」

老鉄「一つはリアルタイムで防犯カメラをハッキングし、その人物の映像だけを削除してしまう方法です、もう一つは…コレは帝国の高官が実際に使っていた権限ですが、暗殺防止の為に、特定人物の情報を防犯カメラ映像から自動的に消す権限です。」

紅華「帝国軍ならありそうね?」

老鉄「映像には写っていても、AIによる画像処理の段階で存在そのものを消してしまうのです。」

紅華「そんな事まで出来るの?」

老鉄「…はい!…しかし現在ではそんな権限を持った人物は皇帝くらいかと?」

紅華「皇帝……まさか……」

老鉄「ですがお嬢様…もし本当にその権限を使える人物だった場合…」

紅華「……」

老鉄「なぜ“私”を見ていたのでしょう?」


リントハイム邸に戻ると、お嬢様はリントハイム様にご報告します。

リントハイム「…なるほど?だとすると…あの人物はやはり…」

紅華「ゼロス・ハイマンの可能性が高いと思うの…」

リントハイム「先生…どうして……」

紅華「だとしてもおかしいわ!彼はもう100歳を越えているのよ、画像の人物はもっと若かった…」

リントハイム「……」

紅華「……」

リントハイム「私は…誰にも話すつもりはなかった。」

私のカメラがリントハイム様の真剣な表情を捉えます…

リントハイム「だが君達なら…知る資格がある。」

紅華「……うん…」

リントハイム「…いいだろう、君達には話すが…コレは三人だけの秘密だ!」

紅華「…どうやら相当危険な話みたいね?」

リントハイム「そうだ!…だから…」

紅華「とっくに命は預けてるのよ…今更…水臭いわ!」

老鉄「私はお嬢様の判断に従います。」

リントハイム「そうか…ならば聞くといい…!」

そして、リントハイム様の口からゼロスさんの秘密とリントハイム様の過去が語られました。


リントハイム「あれはまだ私が15歳の時だ…当時の私はすでに帝国のアカデミーを卒業した天才少年と呼ばれていた…」

リントハイム様は静かに語り始めました…

リントハイム「当時の帝国は銀河の半分までを支配下に置き、銀河統一も時間の問題だと言われていた…」

老鉄「その頃はまだネビュラ星間連合は存在して無かったですね?」

リントハイム「そうだ!…母体になった組織、通商星間連合というのは存在していたが、帝国に対抗するには到底、力不足だった……」

紅華「自由星間同盟は一枚岩じゃないし…やはり帝国に対抗するには力不足よね?今でもそうだけど…」

リントハイム「その頃、帝国軍の天才軍略家と言われたゼロス・ハイマンの後継者として、私は軍に配属されたんだ!」

老鉄「ゼロス・ハイマンの記録は私のアーカイブにも残っています、銀河の半分を支配出来たのも彼の功績で…皇帝の信頼も厚かったようですね?」

リントハイム「彼は私の事を弟子とし、さまざまな事を学ばせた…何よりも……2人で銀河の各地を旅した事…それが今の私を作ったと言っても過言ではない…」

紅華「ふーん?ずいぶんと優雅な少年時代ね?」

リントハイム様は目を閉じて、少年時代に思いを馳せているようすでした…

リントハイム「…その旅で私は… 戦場の凄惨さや難民キャンプの飢餓、裏社会の狡猾な罠、平和を謳歌する人々…それをこの目で見て体感したのだ!」

紅華「……」

リントハイム「…それらは教科書には載っていない「人間の生々しい醜さ」の見本だった…」

リントハイム「同時に、明日の命も知れぬ極限状態の中で、なけなしのパンを分け合う難民たちの姿…「人間の圧倒的な美しさ」もまた、私の心に刻まれたのだ!」

お嬢様は言葉を失っていました…お嬢様自身も15歳で人間の醜さを思い知らされたのです…



## 老鉄の独り言:ログ010

【光】

人間は矛盾した生き物です。

争いを生みながら、平和を求め。

憎しみを抱えながら、誰かを愛そうとする。


リントハイム様が見た「人間の醜さ」とは、

きっとそういう物なのでしょう。

ですが……

極限の絶望の中で、

誰かのためにパンを分け合える生き物。

そんな人々の中に私は、

光を見たような気がするのです。

今回はリントハイムの師匠、ゼロス・ハイマンとの関係か明らかになりました。

作者の私(めぐみと純)自身も「何事も、やって見なければわからない!」と考えている人間なので…ゼロスもそういう思想の持ち主だと思います。

さて、若き日のリントハイムはこの後、どんな風に考えて今に至るのか…?

…次回に続きます。

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