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戦士の受難  作者: とんぼ。
第7章 生命の問答編

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「人と魔物と」

 師匠と名乗る少女について行くセイジ。彼らは白い花が点々とする山岳地帯にいた。

 2人はしばらく暗がりを歩く。すると、何やら粘着質な音が後ろから聞こえてきた。音は徐々に彼らに近付いてくる。


 「っ!あれは、アマルンガムか!」

 振り返ったセイジは音の正体であろう巨大な影をみる。はっきりとは目視出来ないものの、明らかに人間とは違う姿。恐らく、彼の探していたアマルンガムという魔物で相違ないはず。


 すぐさま少女に確認をとろうとする。がしかし、彼の前に居たはずの少女はいつの間にか姿を消していた。

 始めから存在などしなかったかのように、忽然と。


 「!?あいつは何処に…。いや、それよりもアマルンガムを倒さなければな。『ヒート』!」

 少女の行方は気になるが、それよりも依頼の優先をする。斧を構えて『ヒート』と唱えたセイジは、アマルンガムの元へと走った。


 魔法により強化した斧をアマルンガムへ振るう。その直前、セイジは見た。アマルンガムという魔物の全貌を。

 魔物の体はぶくぶくと膨れ上がっており、おおよそ人間とは比べ物にもならない。故に、思ってもいなかった。


 まさかアマルンガムに数多の顔がついており、それが人の顔であるなんてこと。


 「なっ!?」

 アマルンガムについている顔のひとつ。目をギョロつかせたものと顔が合う。それは乾いて青紫色になった唇をぱくつかせ、うめき声を絞り出していた。


 予期せぬ姿で不意にとられるセイジ。無論、そんなことは魔物にとって関係ない。アマルンガムは細々とした腕の一つを思い切りセイジへぶつける。

 アマルンガムの爪は手入れが行き届いていなく、伸び切っていた。それがセイジの体を突き刺す。


 咄嗟に体をひねった為、重傷にはならなかったものの、魔物の攻撃はセイジの左腕に命中。

 その拍子に武器である斧を落としてしまった。何とか斧を拾おうと試みるが、アマルンガムの攻撃は止まらない。セイジは防戦一方で、武器を持つことさえ叶わなかった。


 「アァ、ア、」

 攻撃が出来ないという焦りの他に、彼の内では恐怖が混在する。何故なら、先から発するアマルンガムの声が不気味でならないからだ。

 声、と表現するが到底声とは思えない。思いたくもない。しゃがれきったうめき声が、アマルンガムの無数の口から聞こえてくる。


 それと共に、4つの腕が次々襲いかかってきた。孤独なセイジになす術などない。

 

 「くっ。」

 一つの腕がセイジの足を抉る。痛みに怯まず動こうとしたが、その動きは明らかに鈍ってしまった。

 セイジの生じた隙を、アマルンガムは決して逃がしはしない。残りの3つの腕で、相手の生命を確実に終わらせようと迫る。


 間近に迫った死。必死に逃げるセイジは、何処かで思っていた。次の攻撃は避けられない。避けようもない。


 ここまでか。そんな考えが彼の頭をよぎる。アマルンガムの伸びた腕は強靭な爪で以て、セイジを終わらせた。


 そんなことは、起きなかった。


 「大丈夫カ!セイジ!」

 「!ゴブ!?何故ここに!?」

 「オレ、もう一回話したくて来た!タイミングばっちり!」

 「…………あぁ。ばっちりだ。助かった!」


 アマルンガムによる生命を断つ攻撃。それを防いだのは他でもないゴブであった。彼は己の棍棒に穴を開けながらも、セイジを庇ったのだ。

 ゴブはセイジこ前に立ちながら背負っている2つの棍棒の内、ひとつを手にする。攻撃はまだ来るはずだ。


 警戒するゴブへ、アマルンガムは続けて攻撃を行う。無数の手は四方八方、あらゆる角度からゴブを狙っていった。

 何とか全て対処をしようとするが、絶え間ない攻撃で棍棒は使い物にならなくなる。ゴブは最後の棍棒を手に、アマルンガムへ立ち向かうものの限界はすぐに垣間見えた。


 「ゴブっ!上!」

 「!」


 斧を拾いに走るセイジは目にした。ゴブの上空から腕が伸びていることを。小賢しくもその腕は他の腕に隠れており、直前まで姿が見えなかった。

 そして、鋭い爪はゴブの体を貫く。


 「させないよ!『ウィンド!』」

 「クロ!」

 「遅くなってごめんね。それとゴブ。厳しい言葉を掛けたことも、謝るよ。」

 「いや、オレもごめん。もう一度話したいと思ってた。」

 「…………そっか。それじゃあさっさとこの魔物を倒しちゃおう!」

 「おぅ!」


 クロの放った風の刃は、伸びたアマルンガムの腕を刻む。その隙にセイジは斧を拾い上げて攻撃の姿勢に移った。

 再びアマルンガムは腕を振り回す。荒れに荒れた様は、怒りさえ感じた。だが動きはクロの攻撃で鈍っている。


 その為、アマルンガムの攻撃は脅威になりえなかった。ゴブが棍棒一本で腕をいなす。

 セイジはゴブと対峙するアマルンガムへと走り出した。すぐさま相手の懐に入り、彼は唱える。


 「『花片裂き(エフェラーズ)!』」

 それにより彼の持つ斧が増えた。振るった斧は数多の実像を引き連れて、強くアマルンガムへ叩きつけられたのだった。


 こうして集落を脅かす魔物は、人とそして一匹の魔物の手により討伐された。

 

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