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戦士の受難  作者: とんぼ。
第6章 聖女のヴェール編

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「大切な貴方」

 セイジとケイヤが依頼へ行っている間。白髮を伸ばした白魔導士ハクエは友人であるホーリーと出掛けていた。


 「ん!これ美味しいですにゃ!」

 「それは良かったです。私の仲間も好きなんですよ、金雲饅頭。」


 肩を並べる2人がいるのは、金色の靄が立ち込める金雲街。そこの茶屋で一服をしていた。

 ここの名物である金雲饅頭を口に運ぶホーリーは、先ほどから手が止まらない。よほど気に入ったのだろう、次々饅頭を口に詰める。


 それを微笑ましげにハクエは見つめる。ホーリーの姿に、己の弟たちの姿を幻視した。

 視線に気づいたホーリーはもしや口に何か付いているのかと思ったが、どうやら違ったらしい。


 口元をほんのり気にしつつ、ハクエと話す。


 「そういえば聞いて下さいにゃ!みー、やりたいことを見つけたんですにゃ!」

 「それは良かったです!それで、どんなことをしたいんですか?」

 「色んにゃ人を楽しませることをしたいんですにゃ!」


 明るく言い放ったホーリーに、ハクエは安心を覚える。

 以前、彼女に言ったのだ。本当の願いや幸せはいずれ見つかると。だからこうしてやりたいことを見つけられたのは僥倖だ。


 教師の真似事をするハクエは、度々ホーリーのやりたいことについて聞いていた。

 勿論、聞くだけでなくアドバイスもするつもりである。


 人を楽しませること。それをキーワードに、ハクエは自身の頭を動かす。

 なるべくホーリーに合う仕事がないものかと。


 「あっ!『旅乗り』で働くのなんてどうですか!あそこは娯楽施設ですし!」

 「『旅乗り』…。確かに楽しそうですにゃ!」

 

 ハクエの提案にホーリーは賛成という具合に顔を輝かせる。かと思うと、自身の懐に手を入れて何かを探す。

 ゴソゴソとお目当ての物を見つけたホーリーは、握りしめた手を開いてハクエへ見せる。


 「その、ハクエちゃん。これプレゼントですにゃ!」

 「プレゼント…?誕生日ではありませんがどうかしたんですか?」

 「お、お礼ですにゃ!色々相談乗って貰ったり、お出かけしたりして、その…。とにかく!貰ってほしいですにゃ!」

 

 口をパクパクしながらホーリーはまくし立てる。あまりの勢いにハクエは瞬きをした後、真剣な彼女の眼差しに負けてプレゼントを受け取る。


 礼を言って受け取ったのは、箱だった。青く、手触りの良い箱を開けると中にはピアスが入っている。

 形は猫の顔であり、やや小さいサイズ感も可愛さを引き立てていた。


 しばらくピアスとにらめっこをしていたハクエを見て、ホーリーは不安になる。もしや気に入って貰えなかったのだろうか。

 頬が引きつるのを感じながら、ホーリーは慌ただしく手を動かす。


 「や、やっぱり子供っぽいですかにゃ…。その、ごめんにゃさい!嫌だったら着けなくっても、」

 「まさか!嫌なわけありません!むしろ嬉しくて。ありがとうございますホーリーさん。」


 ピアスを摘みながらハクエははにかむ。それを見て、ホーリーは心の底から良かったと思う。

 

 ハクエは受け取ったピアスを早速つけてみたが、予想通り似合っていた。

 猫のデザインを選んだのは特別な意味があったというわけではない。訳では無いが、鏡を見る度にプレゼントしたピアスを見てくれたら嬉しいな、なんて思っただけだ。


 そんなホーリーの心情とは別に、ハクエは悩ましげに考え事をする。

 可愛らしいピアスを貰ったのだから、此方も何かお返しをしたい。


 「ホーリーさん。欲しいものなんてありますか?お礼にプレゼントしちゃいます。」

 「えっ!?いや、その、みーのプレゼントもお礼みたいものにゃので、お礼にお礼は不要ですにゃ!」

 「そうですか…。ならプレゼントのお礼ではなく、いつもショッピングに付き添ってくれるお礼ということで。それで、欲しいものはありますか?」


 何としてもお礼は突き返せないようだ。観念したホーリーは、先のハクエ同様頭を悩ませる。

 欲しいもの。以前であれば温かい食事と寝床、と答えたことだろう。


 だが今は違う。幸運なことにその2つで困っていることはない。ならばどうするか。木目調の店内の壁を、正確に言うならば宙を見て唸る。


 「あっ!そうですにゃ!またオススメのお店教えてほしいですにゃ!」

 「それで良いんですか?」

 「はい!それが良いですにゃ!」


 そうすればまた一緒にいられるから。そこまでは口にしないし、出来ないが、ホーリーは心の内で思っていた。


 彼女の提案に少し驚いたものの、ハクエは提案を呑む。

 脳内では既にいくつかの候補が浮かび上がっている。次はいつ、何処へ行こうか。


 ハクエは大切な友人との休日へ胸を弾ませて、残りの饅頭を頬張るのだった。

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