「新たな技」
犬探しの依頼を終えた次の日。セイジは変わらず特訓へと向かった。パーティ単位での依頼がなければ、日々こうして過ごすのだ。
家には居間で寝転がるケイヤがいた。彼を見たセイジはふとあることを思いつく。
ケイヤは柳閃流という派閥の技を巧みに使って戦うのだが、それをセイジもできないだろうか。
思い立ったら何とやら、早速頼んでみることにした。
「なぁケイヤ。俺にも柳閃流の技を教えてくれないか?」
「あ?オメェに?」
「無論礼はする。そうだな…このドラゴンの形をした石なんてどうだ!」
「いらねぇし家に持ち帰んじゃねぇよ!ハクエに文句言われても知らねぇからな!」
「ケ、ケイヤも石に触ったから同罪ということにしておこう…」
「やめろバカ!」
凛々しく胸をはったドラゴンの石。残念ながらケイヤには刺さらなかったようで、今すぐ捨てるように諫言された。
だがセイジとてこれ程格好良い石を捨てるつもりはない。なので、話題を石から逸らして柳閃流のことについて聞く。
石は取り敢えず背後の足元に置いておくことにした。
肝心のケイヤの答えはというと、渋々ながらも了承を貰えることに。彼の気が進まないのは、ひとえに面倒だからではなく教えることが得意だからだそう。
それでも柳閃流の技を教えて貰えるのだから、セイジにとっては嬉しいことこの上なかった。
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「んじゃ、オメェには柳閃流の初歩中の初歩、『花片裂き』を教える。」
「よろしく頼む。」
2人は訓練の為に草原へと来ていた。雲一つない青空の元、ケイヤは己の武器を肩に携えながら言う。
「前に、言ったと思うが武器を振るう時は持ち手に気をつけなきゃなんねぇ。」
「刃に遠い部分を持って戦い続けると疲れるんだよな?」
「あぁ。んでもって、『花片裂き』はその握る場所を移動させる技だ。」
説明しながら、彼は簡単に自身の刀を見せてくれた。セイジも、斧を持つ部分に対しては注意を払っている。
ケイヤは早速、実践してくれるようだ。
はじめは刃に遠い場所を握って刀を振るう。そうして相手に隙が出来れば華麗に身を翻して懐に入り、刃に近い部分を握って倒す。
彼の実戦はこの様な流れである。
「まっ、オメェも依頼やら特訓やらしてんだ問題はねぇだろ。やってみろ。」
「あ、あぁ!」
促されるままセイジは斧を握る。まずは遠い所。そして相手を錯乱させて、といったところでふと考える。
相手の隙を作るのならば、武器を増やす『エッフル』が有用なのではないかと。
それをケイヤに伝えると、顎に手をやって少しの間考える様子を見せた。
かと思うと、頷きながら言う。
「良いんじゃねえか。だとすると『エッフル』と『花片裂き』を一緒にしちまった方が戦いやすいな。」
「一緒に?新しい技としてってことか?」
「おう。名前でも考えとけよ。」
ケイヤにそう言われてふと疑問が浮かぶ。何故魔法を使用する時に呪文が必要なのだろうか。
周囲のエネルギーを使うのに、魔導具のダイヤルを回すだけでは駄目なのだろうか。
「なぁケイヤ。魔法を使う時、どうして呪文の詠唱が必要なんだ?」
「ん?そりゃオメェ魔法を識別するためだよ。」
「だが、ダイヤルを回すだろう?魔法によって回す度合いが違う訳だからそれで識別出来ないのか?」
セイジのさらなる疑問に対して、ケイヤは頭をかきつつしゃがみ込む。手招きされたので、つられてセイジもしゃがむと彼は地面に何かを書き始めた。
彼の書いた図では魔導具を持った人間が呪文を唱えていて、周囲の空気中はエネルギーと称して丸で囲まれていた。
砂のついた指を払いながら、ケイヤは図を指して説明を続ける。
「魔法ってのは周囲のエネルギーを使うわけだが、エネルギーを変換すんのにはダイヤル付きの魔導具と人間が必要なんだよ。」
「まぁダイヤルを回すために人間が必要になるんだろう。」
「いや、それだけじゃねぇ。人間の体は取り込んだエネルギーを魔法に変換する役割もあんだ。」
「つまり使いたい魔法をエネルギーから変換する為に、呪文を唱えて自分の体に合図するのか?」
「おぅ。」
今まで行ってきたことの原理が分かったセイジはどことなく、スッキリした面持ちとなる。
本当ならば育成学校で学ぶことなのだろうが、如何せんセイジは要領を得ていなかった。
幼い頃の記憶は朧げで、あまりの物覚えの悪さに医者へかかったこともある。幸か不幸か、病などではないと診断されたのだが。
魔法の仕組みを理解したところで、改めてセイジは『エッフル』と『花片裂き』を一緒にした技名を考える。
顎に指をあてて、空を仰ぐ。その様子をケイヤはのんびり見守って待つ。時間には余裕があるようだ。
「よし!『花片裂き』と名付けよう!」
「いいな。そんじゃ、あと少し練習したら依頼でも受けに行くか。」
「あぁ!」
澄んだ空の下、緑の生い茂る草原でセイジとケイヤは特訓をするのだった。




