「強化の種類」
「ん…。」
「師匠。起きたようです。」
「良かったわぁ〜。おはようセイジクン。」
シュウによって気を失っていたセイジは、ようやくその意識を取り戻す。
どうやら少しの間、横たわっていたようだ。開きかけている瞳と共に、セイジは温かく柔らかい感触を感じる。
どうやら彼のすぐ下は地面ではないらしい。消去法で考えるならば、やはり膝枕だろうか。
「………悪い、少し気を失っていた…。」
「別にいいわよぉ〜。サっ!特訓再開しましょ!」
「そういうことだ。早く我の膝から降りろ。」
「……………………。」
別に期待していたわけではない。もしや、カナタが膝を貸してくれているのではないかと、そんなことを思っていたわけではない。
だが、それにしても、何故シュウが膝枕をしていたのだろうか。
ほんのちょっぴりの肩透かしをくらいつつも、セイジは礼を言ってシュウから即座に離れる。
「さっきの戦いでアナタの実力は分かったわ。ズバリ!今のアナタは『ヒート』をより強くする必要があるわね!」
「『ヒート』を?」
「そうだ。貴様が『ヒート』の修練を積めば我の一太刀にもマシな対応が出来る。」
2人は口々に、武器を強化する魔法、『ヒート』を使いこなすように言った。
曰く、武器を強化するといってもさらなる細分化がなされるようだ。
切れ味の強化、耐久力の強化、そしてそれらに伴う重量の増減等が大雑把に武器の強化とされているらしい。
シュウの攻撃ですぐさま弾かれてしまったのは、切れ味の強化が足りなかったようだ。
魔法の使用は周囲のエネルギー消費でなされる。詳しくいうとエネルギーを物質や現象へと変換しているのだ。
『エッフル』使用の際にも同様で、それぞれ切れ味や耐久力強化へエネルギーが割り振られている形である。
「武器の強化をより細かくちゃんと調整するにはダイヤルがもう1つ必要になるわね…。シュウ、これを取り付けてくれるかしら?」
「はい。斧を渡せ。……安心しろ、魔導具取り扱いの免許は持っている。」
「い、意外だな…。」
話をしつつ、カナタはダイヤルをシュウへ渡す。渡された彼はセイジから斧を受け取り、早速作業へ取り掛かるようだ。
斧はクロから貰ったものであるので、なるべく慎重丁寧に扱って欲しい。そう思ってカナタを観察する。
どうやらセイジの心配は杞憂だったようだ。シュウの手つきは普段の態度からは想像できないほど優しく、あれよという間にダイヤルは持ち手上部へと固定された。
元のダイヤルは金属製である。対して、ここで取り付けられたダイヤルはピカピカと金色に輝いている。
シュウへ感謝をして、すぐにダイヤル2つを使いこなせるようにする練習が始まった。
『ヒート』で強化する対象は細かくいえば切れ味と耐久力の2つ。必要なエネルギーは耐久力を強化する方が多く必要なようだ。
また、当たり前ではあるが耐久力を強化すれば自ずと重量も増す。そこを踏まえて取り扱う必要がある。
「………よし!『ヒート』!」
まずは1つめ、上のダイヤルで『ヒート』を使えるようにダイヤルを回す。次に、下のダイヤルで耐久力を強化する為に調整を行う。
成功したかどうかは重量次第ではっきりする。魔法を唱えた後、斧がずっしりとした感覚を味わったセイジは、成功したのだと悟った。
それは良いものの、これを咄嗟に行うとなると、まだまだ修練が必要になる。
「構えろ。後は実戦で覚えるのが1番だろう。我が相手をしてやる。」
「そうだな。よし、頼む。」
「ファイトよ!2人とも〜!」
カナタの声援を背に2人は向き合う。互いに武器を抜き、暫しの静寂が空間には取り残される。
はじめに動いたのはセイジであった。此方から仕掛けようと考えた彼は、早速シュウ目掛けて斧を振るった。
「壱心流『巌山一太刀』」
「っ、『ヒート』!」
練習したての『ヒート』を使用する。セイジは未だ慣れない2つのダイヤルを必死に回す。
今必要なのは切れ味の強化だ。耐久力の強化よりかはエネルギーを消費しないので、上のダイヤルは回しすぎないようにする。
大気中のエネルギーと必要とするエネルギーのすり合わせをしなければならないので、頭はパンク寸前だ。
「まだ精度が甘いな。『巌山一太刀』!」
「ひ、『ヒート』!」
残念ながら、セイジの斧は弾かれる。しかし、先程と比べればほんの少し攻撃を受け止められるようにはなっている。
徐々にあがる息と鈍る思考。セイジはそれらに負けじと頭を振って、魔法の発動と相手の攻撃に集中する。
何度剣と斧が交わったか。数え切れぬ打ち合いの後、遂にセイジの斧が剣を完全に弾く。
「!よし!やった、」
「一度攻撃を弾いただけで喜ぶな軟弱者。まだ勝敗は決していない。」
あまりに喜ぶセイジを見て、自身は負けてないとシュウはムスッと顔を顰める。
そんな2人を眺めるカナタは成長していく若人達を頼もしく感じながら、微笑むのだった。




