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戦士の受難  作者: とんぼ。
第5章 マルジノー征伐編

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「壱心流の強さ」

 食人植物を倒し、のんびりしていたセイジに、突如背後からある人物が話しかける。


 「以前よりかは強くなっているようだな…軟弱者。」

 「いきなり失礼な奴だな!あっ、お前、壱心流のシュウだな!?」

 「不快だ。貴様に我の名を呼ぶ資格はない。」

 「名前を呼ぶのに資格がいるのか…。」


 ふんぞり返った物言いをするのは、壱心流の男、シュウである。

 彼は七林で眠っている時に出くわしたことがある。その際、襲いかかられたのだが。


 ここで、セイジは嫌な考えがよぎってしまう。シュウがいるならば、彼の師匠もまた共にいるのではないかと。

 シュウの師匠はとにかくあまり関わりに会いたくない人間なのだ。何せ、格好と言動が珍妙なのである。


 まぁいくら師匠といえど年がら年中弟子につきっきりなはずもない。セイジの心配はきっと、外れるだろう。


 「あららぁ?アナタ、えーと、セイジクンよねぇ?もしかしてアタシに会いに来てくれたのかしらぁ?」

 「……………違う。断じて。それと離れてくれ。」

 「はっ!まさか我に会おうと!?」

 「違う!どうしてそうなるんだ!顔を赤らめるな!」


 嫌な予感ほど、当たってしまうのは何故なのか。セイジは近付く女から離れながら考えた。

 シュウはセイジが自身を狙って七林にやって来たと思い、己の腕で肩を抱いていた。とんだとばっちりだ。


 どんな理由があってセイジがシュウへ好意を寄せてアタックをしに顔を見せに行かなければならないのだろう。

 休憩も程よく終えられたので、これ以上おかしな輩に絡まれないよう、セイジはこの場を離れようとした。


 そこを、露出の高い女は引き止める。体をぴったりくっつけて、至近距離から話を進めた。


 「ストップストップ!ねぇセイジクン、アナタもっと強くなりたいんじゃない?良かったらアタシ達がお手伝いしちゃうわよ〜。」

 「本当か!………先に聞くが、礼に何を求めるつもりだ…?」

 「お礼…?そうね〜。特別にいらないわよ〜。」

 「貴様、師匠を疑う気か。師匠は生まれてこの方、己の趣味も何もかもさらけ出してきたお方だ。」


 怪しむセイジへ、よくわからないシュウのフォローが入った。

 よく考えてみれば、頭を疑うようなほぼ全裸の格好をする彼女は文字通り、何もかもさらけ出している。


 それが信じる根拠とはなりにくいが、彼女達が実力者なのは事実。

 力を借りれば、また一歩強くなれるという確信を持っていた。


 「……それじゃあよろしく頼む。……名前を聞いてもいいか。」

 「よろしくねぇ〜。あぁ、名前を言ってなかったわね!アタシはカナタ。」

 「我は貴様に名乗る名などない。」

 「シュウだろ?知ってるさ。」

 「…………やはり貴様、我の事が気になっているのか…!?」

 「違う!」


 未だ拭えぬ疑惑に怯えるシュウへ突っ込みを入れつつ、特訓のためにセイジらは3人で七林の更に奥へ進むのだった。


―――――――――――――――――――――――

 カナタを先頭に、3人が辿り着いたのは七林の最奥とも言える場所。

 そこには透き通った湖があった。不気味な植物により光が差し込みにくい七林だが、不思議と湖の近くには光が溢れている。


 光、と称したがより近付くとそれは鱗粉のようなものだと分かった。

 吸い込んでも体に異変はないため、あくまで視覚的に良いだけだろう。


 歩いていたカナタは立ち止まり、後ろを振り返る。

 「それで?アナタは今、どんな魔法が使えるのかしら?」

 「確か、ヒート、エッフル、リキッド・フラーの3つだな。」

 「ふんふん。なるほどねぇ。それじゃあ、シュウと戦ってみましょうか!シュウお願いね〜。」

 「分かりました。………かかってこい軟弱者。」


 今の正確な実力を知るために、とカナタはシュウと戦わせるように話す。

 中々いきなりのことだが、セイジも教わる側の立場だ。大人しく、従うしかあるまい。

 

 シュウはセイジた向き合い剣を抜く。その刃は幅が広く、尚且つ大きさは彼自身とほぼ等しい。

 さぞ重たいだろうと思っても、シュウはそれをものともせず振るう。


 彼は真に実力者だ。それは、彼の戦いを見たセイジには分かっている。

 だからこそ、斧を構えて相手の一挙手一投足見逃さないように、息をとめるように、静かに構えた。


 「我から行くぞ。壱心流『巌山一太刀(がんざんひとたち)』!」

 「くっ、ヒート!」

 山をも両断するであろう一太刀が襲いかかる。咄嗟に『ヒート』で斧を強化して弾いたものの、重たい攻撃は耳に掠る。


 セイジはすぐさま後ろへ下がって頭を振った。耳の中にまで血が入るところであった。

 警戒は崩さずに、思考はより一層深める。恐らく『ヒート』でこちらから攻撃を仕掛けるのは得策ではない。


 何せ、強化した状態でもああして弾かれたのだ。それ以外の魔法を駆使して先手を打ちに行きたいところ。

 だとすると、後は『エッフル』を使っての攻撃か。この魔法は武器を増やすことが出来る。


 今のセイジでは斧が4つに増える。とにかく距離を詰めて、手数で押す。

 攻撃の方向性が定まった所で、セイジはシュウ目掛けて走り出す。


 「『エッフル』!」

 至近距離で斧を振る瞬間、急ぎダイヤルを回して呪文を唱える。

 セイジの振った斧は4つになって、一斉にシュウへと襲いかかった。彼の一太刀は凄まじい破壊力であるものの、速度は鈍い。

 

 故に、速攻で相手をおとす。そう思っての行動だったのだが、

 「壱心流『乱れ斬り』!」


 全ての斧が、シュウの剣捌きによって撃ち落とされる。

 彼は咄嗟の攻撃の際にも、刃に近しい持ち手を握ってなるべく素早い斬撃を試みたのだ。


 セイジの作戦も打ち破られてしまった。体制を整えるためにも、また後ろへ下がらなければ。

 そう思った刹那、斧を撃ち落としたシュウの刃がセイジへも向かう。


 「ぐっ。」

 「全く。逃げ腰が過ぎるな、貴様は。」


 彼の声とともに、セイジの首に衝撃が走った。その正体はシュウの刀の持ち手である。

 刃でなかったことは幸いであったが、かなりの強さであったため、セイジはそのまま意識を手放して地面へ倒れるのだった。

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