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戦士の受難  作者: とんぼ。
第4章 魔術結社編

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「変わればいいさ」

 金雲街の宿にいるセイジとケイヤは、いつまでも経ってもハクエとクロが帰ってこないことに気づく。


 2人なら少しのトラブルでも問題はないと思うが、状況が状況だ。今の金雲街は『席連れ』の構成員が残っている可能性もないわけではない。


 「ケイヤ、2人を探しに行かないか?」

 「……………だな。流石に遅すぎる。」

 休めていた体を起こして2人は宿を出ようとする。彼らのとった部屋はやや大きく、真ん中に仕切りがある。

 取り外し可能なそれを使うことで一部屋を分けることが出来るのだ。今は仕切りが外されており、広々とした空間がセイジ達のいる場所となっている。


 そこを出ようとした2人だったが、バタバタとせせこましげな足音が聞こえた。かと思うと、ケイヤが開きかけた扉が勢いよく開かれる。

 「は、はぁ、はぁ。大変ですふたりとも!クロが、居なくなってしまいました!」

 「!?」

 「ハクエ。いったん落ち着いてから詳しく聞かせろ。」


 ケイヤの言葉によってハクエは落ち着き、事情を説明した。カシル少年と出会ったこと、『席連れ』の構成員であるトリルと交戦したこと、カシルが『席連れ』であったこと。

 そして、クロが自らの意思で『席連れ』を逃がしたこと。


 全てを聞いたセイジとケイヤは迷うことなく、クロを探しに行くこととした。外は変わらず、金色の靄が停滞している。


 「ここらへんはちっと入り組んでるな…」

 「では別れましょう。もし異変があれば逃げる、または大声で呼びあう。それで良いですか?」

 「あぁ。それじゃあ、俺はこっちを探す。」


 3手に別れて、各々クロを探すことに。セイジは真っ先に狭い路地へと入った。しばらく進むと広い道へと出る。

 そこには黒光りする屋根と赤く染められた柱がそれを支えている建物があった。建物、というより門か。


 門はその役割を果たしており、鼠一匹入れまいとぴったり閉じていた。そこの前に、一人の少年が座り込んでいる。


 「クロっ!良かった、ここにいたのか!」

 「…………セイジ……。」

 少年は探していたクロであった。外傷は特に見られず、ホッとしたセイジは彼に駆け寄る。


 近付くセイジを見て、クロの瞳は揺れる。立ち上がり慌てて逃げようとするが、足はもつれて地面に伏す。

 「だ、大丈夫か?」

 「……うん。………セイジ、ごめん。僕、『席連れ』を逃がしちゃった…。ハクエを、仲間を、攻撃して、それで、」

 「あぁ…聞いた。」


 クロの話に静かに頷く。彼はセイジと目を合わせず、砂を一粒一粒数えるように地面を見ていた。

 重石の如く項垂れる頭を、一層下へと傾けてクロは話し続ける。久々に喋ったみたいな弱々しい声に、少年の言い訳が乗っかる。


 「僕、カシルくんを助けたかったんだ。あの時、『席連れ』を、トリルを捕まえたら、カシルくんは悲しむかなって思って、」

 「それでハクエを攻撃して止めたのか。」

 「…………うん。ごめんなさい、僕、僕は、」

 セイジの一言に怯えきったクロは叱られた後の子供と等しく、肩を震わせる。


 その様子を見て、セイジはしゃがみ込み視線を合わせた。なんと言葉をかけようか、既に決まっている。

 マリアラコーンが見せた幻とその時のケイヤの言葉、それらを自身の内に取り込んでクロへ語りかける言葉とした。


 「クロ。お前はこれからどうする?」

 「………どう?…………分かんない。僕は、カシルくんも助けたいし、でも、『席連れ』はのばなしにしちゃいけなくて、」

 

 分からない。結局、自分は変わっていないのだ。人道にのっとっている訳でもないし、まして人助けが出来ている訳でもない。

 ハッドラに拾われたあの日から、変わらず自分の価値はなく、贖罪も済んではいない。


 そんな想いが溢れて、目の端から涙が溢れる。砂粒は上から降ってきた水で色を濃くして、模様を作った。


 「ぼぐは、がわりだがっだのに。でも、まっだぐ、がわっでない!」

 「変わりたい、それがクロのしたいことなんだな。なら、頑張ろう。俺も手伝おう。」

 「え、でも、ぼくは、仲間に、ひどいこと、」

 「それは謝ればいい。ハクエは何か罰を下すかもしれないが、仲間であることに変わりないと思うぞ。」


 何を簡単なことを、とでも言いたげにセイジは単純に明快に答える。まっすぐ答える。

 それは一種の恩返しでもあった。出来損ないの自分を見捨てないでいてくれたこと、あの日、パーティを組もうと誘ってくれたことへの。


 セイジは確信していた。『席連れ』を倒して尚且つ、カシルに辛い思いをさせないように出来るという。

 だって頼もしい仲間がいるんだ。微力かもしれないが、自分もいる。だからきっと大丈夫。


 「クロ行こう。俺はお前を信じてる。仲間だからな。」

 「っ。ありがとう、セイジ。」

 「あぁ。そうだ!金雲饅頭をたらふく買ったんだ!宿に置いてあるから後で食べないか?」

 「あははっ。丁度僕も買ったんだ。」

 「そ、そうだったのか…うーん、余りそうだったらケイヤの口に詰めるか…」

 「多分、げんこつ飛んでくるよ…」


 セイジの差し出した手をとり、クロは歩く。未だどうしようもない人間かもしれないけれど、これから、今から変わるために。

 心配はいらない。世界中探しても見つからない、頼もしい仲間達がついているのだから。


 

 

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