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戦士の受難  作者: とんぼ。
第4章 魔術結社編

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「晴れやかな回答」

 「セイジ!ケイヤ!起きて!」

 「う…ん?クロ…?」

 「ふわぁ〜あ!何かあったのか?」


 呼びかけられたセイジとケイヤは重たい瞼をこすりつつ起き上がる。何故眠っていたのか、何故クロとハクエがいるのか、朦朧とした意識の中ではその答えが浮かび上がらなかった。


 「二人とも、疲れているのは分かりますが大事な話をするところなんですよ。全く。」

 「まぁまぁ。それでね、僕たち、二人に言わなきゃいけないことがあってね、」

 クロとハクエは互いに目を合わせて口を開く。心なしかいつもよりも晴れやかな顔を見せている。


 「実は僕達、『席連れ』に入ってるんだ。それで、二人にも是非入って欲しいな。」

 「は?」

 「驚くのは分かります。ですが、聞いてください。『席連れ』の教祖、ソシル様は本当に幸福を感じさせて下さるんです。」


 「せ、席連れに…?冗談だろう?だってその組織は各地で殺人も窃盗もする集団なんだって、」

 「違うよ。それは幸せの為に必要な行為なの。だから、無駄じゃないし仕方ないことなんだ。」


 熱を帯びた二人の語り。微笑ましく思った明るい表情も、今や狂信者が幻を見せられた様を体現したように感じてしまう。

 ごちゃついた頭は思考の糸が絡まり、ハクエとクロの言葉を処理することができない。


 許容範囲を超えた事実に、セイジはただただ呆然としている。だって、ハクエもクロも仲間なのだ。

 周囲からちっとも期待をされなかった自分を受け入れて、仲間といって、隣にいてくれたのだ。


 今、彼らを拒絶すれば、もう二度と一緒に居てくれないかもしれない。失望させてしまうかもしれない。

 孤独の恐怖がセイジを襲う。幼い甘さが思考を止める。


 もう、受け入れてしまおうか。一緒に『席連れ』へ入ってしまおうか。そうすれば、少なくとも共にいれるのだから。


 安易な選択。それを許さない人間が、この場にはいた。

 「おい、『席連れ』に入ってるって本気で言ってんのか?」

 「うん。ケイヤ、聞いて欲しいんだ。ソシル様は言われている通り、本当に『幸福の魔術師』でね、悩みも何もかも無くなってね、」

 「…………そうか。んじゃ、ワリィけどお縄についてもらうぜ。」


 対話という名の勧誘を、ケイヤはバッサリと切り捨てた。もう話すことはないとでも言いたげにおもむろに剣を抜く。

 

 「ケイヤ!?待ってくれ!もう少し話を…」

 「話してどうにかなんのか?それともオメェも『席連れ』に入って手を汚すか?」

 「そ、それは……。だが、クロとハクエは大切な仲間だろう…?」

 だからやめよう。受け入れよう。そう思って、ケイヤに触れてしがみつく。


 しかし、縋った手は振り払われる。荒くのけられた手を伝って、ケイヤの静かな怒りがセイジを貫いた。

 心臓が鷲掴みにされたような錯覚に陥る。おふざけではない、真の怒りが空気をピリつかせた。


 「セイジ。オメェは仲間の言うことは何でも信じて、何でも肯定すんのか。」

 「…………」

 「俺は仲間だからこそ、ちげぇと思った道を進ませるわけにはいかねぇ。『席連れ』なんつぅ、理不尽を他人に押し付ける集団に仲間を入れとくつもりはねぇよ。」

 「ケイヤ…残念です…。分かって頂けないとは。」


 それだけ言ったケイヤはハクエとクロに己の刃を向ける。対する2人は、ケイヤの意思が固まったのを悟り残念がる。

 やはり、2人は変わらず仲間だ。だからこそ、こうして話してくれた。それを拒否するのか。セイジに出来るのか。


 「ウィンド!」

 葛藤の最中にいるセイジには構わず、3人の戦いの火蓋は切られた。クロは容赦なく風の刃でケイヤとセイジを襲う。

 棒立ちのセイジを庇うために、ケイヤは地面に剣を突き刺して大気中へ払った。


 強靭な風の刃は舞い上がった石や土を無駄に切りつけて、肝心のセイジ達へ届く前に消えてしまう。


 「フローズン!」

 息をつく暇もなく、攻撃は続く。ハクエはクロの後ろについて、いつでも回復魔法を使えるようにしている。


 ケイヤの起こした土煙は冷却され、目眩ましの役割は失った。まるで先をよんでいるような対処だ。しかし、ケイヤは構わずクロの近くへと走る。


 彼は本気だ。本当にクロとハクエを相手取ろうとしている。仲間であるのに。いや、仲間だからこそ。

 

 「俺は、俺は、どうすれば、いい、俺は、」

 「おいセイジ!オメェがやるべきなのはうじうじ考えることなのかよ!ちげぇだろ!オメェはなんで強くなりてぇんだ!」

 

 ケイヤの叱責が胸を叩く。


 どうして強くなりたいのか。それは家族や仲間に報いるためだ。なら、今の自分で十分なのか。いや、そんなはずない。

 こんな場所で止まってはいけない。そうだ、『席連れ』に入った自分は強くなんか言えない。


 そんな自分は家族にも仲間にも胸を張れる自分ではない。

 分からないで埋め尽くされた頭は、ケイヤの喝ですっと晴れゆく。疑問には明確な回答が浮かんできた。


 このままではいけない。クロとハクエと一緒に『席連れ』へ入るなんてのは論外だ。


 「…………ケイヤ!ありがとう!俺も戦おう!」

 「はっ!頼むぜ!」


 セイジは斧を強く握りしめる。強い自分になるために。大切な仲間のために。

 


 

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