「ひとやすみ」
カシルに連れられてクロ達は公園へ来ていた。金色の靄が立ち込めること以外は、他の公園と大差などないようだ。
「クロさんもっと強く押しても大丈夫だよ!」
「分かった!結構強く押すよ!」
「わーっ!」
ブランコに乗るカシルの背中を、クロは押している。要望通り、少し強めだ。
ブランコとは離れた場所にあるベンチでは、ハクエと人形が座っていた。
「はぁ。私、もう帰りたいな…でも無理だよね。私、人形だし…」
「ど、どうして帰りたいんですか?もしかして体調が優れないとか…」
「はぁ…そうじゃないけど…外にいたくないっていうか…はぁ…。静かな所に居たいな…」
「な、成る程!それでは人の少ない場所へ行きましょうか。」
膝の上に人形を乗せて話す。おさげの人形は相変わらず眉一つ動かないが、やはり何か不満げである。
ハクエはそんな彼女の機嫌を取るためにも、公園内の人気が少ない場所へと移動した。
木組みで出来た遊具はなく、ただベンチと噴水がぽつんと立っている場所だ。
風がよく通り、寂しさを感じずには居られないが人形にとっては絶好の場所らしい。先とは打って変わった明るい声色で話しかけてくる。
「……私、ここ好きだなぁ。静かで、人もいなくて。ちょっと寒いけど。」
「そうですか!それは良かったです!クロとカシルさんが遊び終わるまでここでゆっくりしましょうか。」
「うん。」
なんだか今日は何もしない時間が多いな、とハクエは思った。しかし、慌ただしい日々を考えれば、そんな時間も必要だろう。
彼女はただじっと、膝の上にいる人形と共に閑散とした空間へ身を委ねるのだった。
―――――――――――――――――――――――
宿に戻ったセイジとケイヤは2人で休んでいた。何処へいっても変わらないケイヤは、家にいる時と同様に床で寝そべっている。
対してセイジは真剣に何かを眺めていた。彼は薄い紙を大事に、しかし必死に指でなぞる。
そこに書かれているのは彼にとって難しく、重々しいものなのだ。
「セイジ、何見てんだ?」
「依頼完了の書類と統括局から届けられた書類だ。……認定ギルドになるにはまだ依頼が必要なんだな…」
「そーだな。まっ、俺達なら出来るぜ。」
ケイヤは適当にひらひら手を振り返す。あまり真剣に言っているようには見えないが、セイジは知っていた。
彼は本当に、自分たちなら認定ギルドになれるということを。何故なら所属するギルド『宿り木』の一人一人が夢を持ち、その為に認定ギルドになることが必要だからだ。
『宿り木』は現在、S級15位。認定ギルドとなるには3位以上にならなければならない。なので、彼らの夢へと続く道はゴールさえ見えやしない。
それでも、きっと、認定ギルドになれる。きっと、それぞれの夢を叶えられる。ケイヤの態度はそう言っているかのように思われた。
「たのもひいな。へいはは。」
「おい待て!饅頭食いながら書類にベタベタ触るんじゃねぇ!」
「へいはもはへるは?」
「俺も饅頭は食うけど、とりあえずその紙置け!」
ケイヤの頼もしさに言及し、右手には饅頭。左手には書類を持つ。
それに気付いたケイヤはすかさず注意をしてきた。目敏いというか、しっかりしているというか。
何はともあれ、ケイヤの注意が功して重要な書類は守られるのだった。




