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戦士の受難  作者: とんぼ。
第3章 ディランド侵攻編

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「戦いのあと」

 パリン、屋敷の窓が割れた音が響く。無論、この音は屋敷の一室にいる男達にも聞こえた。


 「どうやら客人のようだが?」

 「ですねぇ。もしやドゥモンド殿のお連れですかな?」


 セイジの父であるドゥモンドの前には、レアンの父であるモルスが座っている。向かい合っている2人は互いに探り合っていた。


 「連れ?さぁな。それより話を戻せ。」

 「失礼失礼。」


 小さく薄い丸眼鏡を押し上げて、モルスはニタニタ笑う。そしてティーカップをつまんでおもむろに紅茶を味わい始めた。


 「ドゥモンド殿は聡明であられる。故に、私の考えに賛同して下さると思っているのですよ。」

 「貴公の考えか。悪いが陰謀論めいた思想に付き合う程暇ではない。」

 

 嫌な笑みを浮かべるモルスを突っぱねる。彼は言っていた。いずれ古の魔術師により災いがもたらされると。

 だが、彼はこの考えに懐疑的だ。確定してもいない事柄に対して、モルスは警戒をしすぎている。


 「……そうですかそうですか。それは残念で仕方ありません。」

 己を否定されたモルスは交渉の余地などないと理解したのか。立ち上がってドゥモンドを睨む。


 「残念か…。それは私もだ。貴公はどうやら子を愛してはいないらしいからな。」

 「愛していない…?おかしなことを。私はレアンを愛していますよ。」


 おかしいのはそちらだと、ドゥモンドは思う。真に息子を愛しているなら、害になる魔術など使わせやしない。

 魔術師でない人間が魔術を使うには、専用の魔導具が必要だ。そして、モルスはそれを用意して息子に使わせている。


 これはドゥモンドにとって愛などではない。領主として認めてはいるが、いち親としては到底認められないのだ。


 「汝よ、地を這え。祝福されし望月よ、旅人を導け。ノストマーク!」

 腰に刺した剣を抜いて、モルスは唱える。それに対応するため、ドゥモンドは椅子に掛けた斧を構えた。


 彼の斧は持ち手が細長く、肝心の刃の部分は小さくなっている。

 魔術の効果は分からないにせよ、対処しなければと思いダイヤルへ指を掛けた。その瞬間理解する。魔法が使えないことに。


 「ドゥモンド殿?いかがしましたかな?まぁ、何もなさらないならそれでも構いませんが!」

 余裕綽々のモルスはドゥモンドへ向かってくる。だが、これしきのことで焦る男ではない。


 「舐められたものだ。たかが魔法を使えない程度で勝てると思われるなんてな。」

 目前のテーブルを蹴り上げて、視界を遮る。直行するモルスは当然、これを避ける為に横へ移動。


 ドゥモンドはと言うと、わざわざ彼に合わせることはなかった。

 手にしている長い斧でテーブル、そしてその先のモルスごと攻撃をする。


 不意を突かれて焦るモルスには構わず、そのまま彼の指を切り落とす。自ずと握っていた剣は落ちる。


 「ぐっ…。こ、後悔しますよ…。魔術師はいずれ私達を脅かす…。」

 「だからといって、自身も魔術を使おうなんて考えにはならんな。」


 見上げるモルスへそう宣言した。いくら脅威を見据えても、己の身を魔術へ捧げて、糧にするために他者の領地を侵攻するなんてことはしたくない。

 相容れぬ考えの者を見つめながら、ドゥモンドはそう思うのだった。


―――――――――――――――――――――――

 「えと、御免下さい。」

 「はいはーい!あ!君、体はもう平気なの?」


 来訪者の為にドアを開けたクロは尋ねる。彼らの家へと来たのはレアンとホーリーだった。

 あの騒動から1日。昼食を食べ終えてゆっくりしていたクロ達は、訪れたレアンに驚く。


 「まぁ、後遺症は出るかもしれないけど、今は平気。」

 「そっか。それじゃあ、あがってあがって!セイジ達も居るから!」


 明るく迎えたクロは扉を開けきって、レアン達を歓迎する。

 家に入るとセイジが寝っ転がっているケイヤへちょっかいを出していた。


 片手にはハクエから貰った玩具を手にしている。この人形型の玩具はボタンを押すと口を閉じて、離すと開く仕様だ。

 セイジはそれを利用してパカパカ開けながら遊んでいる。


 「見ろケイヤ。この玩具、飴を渡してくれるんだぞ。」

 「そりゃあもう聞いた。つぅか今日で何回目だ?それ言うの。」


 「さぁ?俺はそんな細かいことは気にしない質なんだ。」

 「はぁ。そうかよ。」

 飽き飽きしているのにも関わらず、セイジは顔の近くでパカパカ玩具の口を開け閉じしていた。


 そうして遊んでいる所に、クロがレアン達を連れてくる。気付いたセイジは彼らに近寄る。

 「レアン!体は平気なのか?」

 「うん。色々、迷惑かけたね。ごめん。」  


 頭を下げるレアンにセイジは慌てる。

 「謝る必要はない!結果として何も損害はなかったんだ。」


 彼の思いはクロとハクエも同様だ。何事もなく終えたので、頷く。

 ケイヤはというと、既に興味なさげに座っていた。


 「色々ありましたし、今は休みましょう。そうです!ホーリーさん、一緒にお出かけへ行きませんか?」

 「えっ、ミーとですか?別にかみゃいませんけど…。」


 手を合わせてハクエは提案をする。ホーリーは少し驚いたものの、その提案をのむ。

 同世代の人間と出掛ける、なんていうのは彼女にとって珍しい。故に自然と緊張してきた。


 「それじゃあ僕達はお菓子でも作ろうよ!セイジ、材料買ってたし!」

 「分かった。すぐ用意しよう。」


 「女子供じゃねぇのに、何で菓子なんか…」

 「ほら!ケイヤもやろうよ!」


 乗り気でないケイヤを引っ張って、クロは台所へ向かう。

 部屋で立ち尽くしていたレアンはセイジが案内するように、一緒に行った。


 一段落ついたセイジ達の休日が始まる。

 

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