「休日の過ごし方」
「よし。それじゃあまずは生地作りだな。クロかレアン、これを混ぜておいてくれ。」
クッキーを作るため、セイジ達3人はやや手狭なキッチンに立つ。ケイヤも居たのだが、男4人はむさ苦しいと言って居間に戻ってしまった。
クロとレアンは不慣れながらも、2人でクッキーの生地を作っていた。セイジはその隙に、溜まった洗い物を片付ける。
「……ねぇレアン。このままでも美味しそうじゃない…?ちょっと食べてもいいかな…」
「止めないけど、腹壊しても知らないよ。」
ちょびっと生地を試食しつつ、2人は順調に生地を作った。終わるのを見計らって、セイジは指示を出す。
「混ぜ終えたら生地を寝かせておいてくれ。」
「分かった!あっ、でも僕の部屋シングルベッドなんだよね…」
何やら勘違いをしているクロは、悩ましげに言う。隣に居るレアンは少し考えた後、さらりと提言した。
「うーん。君がソファを使えばいいんじゃないの?」
「確かに!そうしよう!」
「待て。寝かせるっていうのは文字通り睡眠を取らせる訳じゃないぞ。」
このままほうっておくと、クロのベッドに生地が横たわりそうなので、セイジは手を拭きながら注意した。
「そ、そうだよね!まぁ俺は知ってたけど!」
「えっ!?」
見栄を張るレアンに、クロは驚く。同じく料理経験の薄い同士と思っていたのに、裏切られた気分だ。
お料理知らずの2人を置いて、セイジはケイヤの様子を見に行く。居間で休んでいたケイヤは何処かへ出掛けるらしく、用意をしていた。
「ケイヤ、出掛けるのか?」
「おう。七林の様子見に行く。」
「そうか。気をつけてな。」
彼自身の故郷、七林では以前から不審な人間が目撃されている。それを心配してのことだろう。
セイジは引き留めず、気をつけるよう言って騒がしいキッチンへ戻る。
「……お前達は何してるんだ…?」
「子守唄歌ってるんだ。でも、レアン音痴でさ。」
「どんぐりの背比べでしょ!?俺も酷いけど君も中々だからね!」
話を聞いていなかったのか、2人は未だ生地を眠らせようと子守唄を聞かせていた。しかも、歌としては下の下。
こんなものを聞く生地が可哀想だ。
「とりあえず静かにしてやれ。生地が泣いてる。」
突っ込むのを諦めたかセイジは、2人へそういうのだった。
―――――――――――――――――――――――
「どうです、ホーリーさん。この人形可愛いですよね?」
「本当ですにゃ!にしても、ここは沢山人形が売ってますにゃ…」
ホーリーの言う通り、一つの店だけでなく、数々の店に人形が並べられている。
多種多様な人形は住民でない人からすると新鮮なものであった。
「ここは人形が有名ですからね。人形師も居ますよ。」
「へ〜。」
オススメと言いたげに、ハクエは人形をホーリーへと差し出す。それは着せ替えが出来るらしく、可愛らしい服からパンクな服まで店に置いてあった。
着せ替え人形を受け取ったホーリーは不思議そうに言ってみる。
「……にゃんだか意外ですにゃ。ハクエちゃんは人形とか、無駄なものだから買わにゃいって言う人かと思ってましたにゃ。」
「あははっ。確かに、有用ではないかもしれませんね。でも、損得だけを考えて生きていたら疲れてしまいますよ。」
はにかみながらそう答えた彼女は、完全オフモードといった具合。確かに、ハクエの言う通りいつも気を張って生きるのは疲れてしまう。
ホーリーはそのことに気づいて、体の力を抜く。彼女の生まれ育った場所では、こんなこと言語両断だ。何かしら気を配っていなければいけない。
それでも、今は、この瞬間は、ハクエと一緒に楽しみたかった。
「ハクエちゃん、今日は誘ってくれてありがとうございますにゃ。」
2人で買った着せ替え人形を手にして、礼を言う。隣を歩く彼女は優しい笑顔で返す。
「いえいえ。こうして遊ぶのも人間、大切ですから。また遊びましょうね。」
「はい!」
こうして2人の休日は緩やかに終えるのだった。




