「魔術とその後」
突如、魔術を使う男に襲われたセイジとクロ。
体を蝕む魔術を止めるために、2人は早く対処をしなければと頭を捻っていた。
目の前の男が使う魔術とやらは、リキッド・フラーである程度対処は出来る。
が、セイジは未だ限定魔法を長時間使うことは出来ない。
そのため、リキッド・フラーはあくまでチャンスを作るための手段だ。
「……セイジ、君に考えがあるなら従うよ。」
クロは彼を信じて、頷く。その信頼に応えるためにも、セイジは斧を構える。
「ありがとう。クロ、兎に角相手の気を逸らしたい。手伝ってくれ。」
「分かった!」
意図を汲み取ってくれたのか、クロは杖を構える。
相手はというと、クロの持つ杖よりさらに大きい杖を握りしめて唱える。
「汝よ、涙を分かち合え。汝よ、虚空を駆けよ。然りて明くるは永久なり。トライアグ!」
先程も襲われたこの魔術。これはセイジらの大地が流動して、彼らの足を絡め取る効果を持つ。
既に体験した攻撃に、クロはセイジの考えを尊重して足止めに力を入れる。
「フローズン!」
風の刃では弾かれることを知ったクロは、土埃と共に動く大地事態を氷で包むことにした。
しかし、絶対零度の拘束は直ぐ様破壊される。
そうして大地の脅威は2人に近づく。また足に絡みつき、前への歩みは妨げられた。
「リキッド・フラー!」
そこにセイジは間髪入れずに限定魔法を使用する。これによって2人の足と大地に隙間が生じた。
隙を逃さず2人は駆け出す。対して男の伺えない顔色は変わった雰囲気がなく、平然と次の手を打つ。
「汝よ、怒りと共にあれ。汝よ、大地へ平伏せよ。然りて映るは刹那なり。トライアグ!」
次に発動させた魔術は、人間を包む程地面を隆起させる物だ。
セイジとクロなど、すっぽりと広大な大地の糧となってしまうだろう。
しかし、そんなことはさせまいとクロも魔法を使った。
「フラー!」
クロの魔法で2人に襲いかかる地面のみが上空へと浮き上がる。
重量のあるそれが、空へと上がるのはクロの力量を持ってこそだ。
セイジのリキッド・フラーは範囲内の物体を浮かせるが、クロのフラーは違う。
対象は限定されるのだ。その代わりに、浮遊の効果は洗礼されるという仕組みである。
「助かったクロ!」
そう言ってセイジは浮遊した大地へと飛び乗る。
丁度、2人と男の距離を埋める大地は橋のようであった。
セイジはその上を駆けて男の元へと走る。
「…っ!汝よ、」
「させんぞ!」
男の口が呪文を唱えて仕舞う前に、セイジは男目掛けて飛びかかった。
持っている斧は、男へ振るわない。ただ、彼の持つ長い杖へと振るう。
「ヒート!」
念の為、強化した斧でその杖をたたっ斬る。残念ながら折れることはなかったが、衝撃で男の手からは離れていった。
「はぁ、はぁ、これで、魔術は、使えまい…」
息を上げているセイジは残った力で男を拘束。
少し遠くへいたクロは様子を見て此方へとやって来ていた。
「セイジ!大丈夫?」
「あ、あぁ。それより、コイツの体は平気か…?」
彼の言う通り、男の使った魔術は人間にとって害でしかない。
それを不安がったセイジは、有識者であろうクロに現状を聞いてみる。
「……うん。大丈夫。少し疲労は溜まってるみたいだけど。」
「そうか…。良かった。」
瞬間、セイジの体は限界を迎えて地面に倒れ込んだ。
見かねたクロは咄嗟に支える。そうして気を失った男2人を介抱するのだった。




