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戦士の受難  作者: とんぼ。
第3章 ディランド侵攻編

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「予定調和のハプニング」

 「おっし。そんじゃ、オメェらこれに乗れ。」


 ケイヤは借りてきた馬車を指差す。ハクエらは従って乗る、かと思われたが何か考えがあるらしい。


 「ケイヤ、運転は私に任せてください。」

 「お、オメェにか?」

 

 この言葉に、ケイヤは警戒を抱く。彼女の提案は一見ありがたいものだ。

 が、それはハクエの気性が荒くなかったらのこと。


 「急ぐんですよね?なら私の運転が最適でしょう?」

 「…………そうだな。よし。かっ飛ばせ!」

 「任せてください!」


 思い切り胸を張ったハクエ。ケイヤは既に腹をくくった。どうにでもなれと。

 意気揚々とした彼女をみて、ホーリーは手を合わせて喜ぶ。


 「ハクエちゃん、にゃんだか頼もしいにゃ!」

 「んなこと言えんのは今だけだぜ…。」


 念の為、彼女に忠告をしておく。頼もしく感じるハクエは、運転席でも同様ではないということを。


―――――――――――――――――――――――

 セイジ達はディランド領を抜けて、既にレアーヌ領へと入っていた。

 「それでセイジ、用事というのは何だ?」


 ドゥモンドは、息子の語ったディランド領での用事とやらを聞く。

 馬車の中、向かいに座るセイジは背筋を伸ばして答えた。


 「はい。その、ディランド家に集められた人がいまして、その人の父親が心配して『累涙楔糸』という御守りを渡してくれとのことで。」

 「なる程。ならばお前達は此処へ行け。その男も恐らくこの場所で労働力となっているはずだ。」


 そう言ってドゥモンドは簡略的な地図をセイジへ渡した。

 地図はドゥモンドらが事前に調べ作成したものであり、侵攻のため集められた人々がいる場所を示している。


 「ありがとうございます。父上はどうなさるのですか?」

 「私はディランド家の領主と話をする。お前たちとは別行動だ。」

 「分かりました。お気をつけて。」


 声を硬くして、セイジはそう言った。彼とクロはドゥモンドに従い、別行動をとろうと歩く。

 その前にセイジの後ろにいたクロへ、ドゥモンドが話しかけた。


 「クロ…と言ったな。普段は息子と何をして遊んでいるんだ…?」

 「えっ!?何をして…ですか?えーと、」

 「やはり花を摘んで遊ぶのか?」


 「花?い、いえ。花は摘みませんけど…」

 

 素っ頓狂な疑問に驚くクロ。面食らっている所に、助け舟が出される。

 「旦那様、そのようなお話はまた後ほどなさってください。」

 「む。そうだな。ではくれぐれも気をつけていけ。」


 ピシャリと言い放つメイドによって、クロは無事に解放された。

 しかし、ドゥモンドの妙なテンションに気付いたのはメイドのみ。


 セイジとクロは不思議なことを聞く男に、首を傾げるだけだった。


 そうして様子のおかしい男と別れた2人は、渡された地図の通りに進む。無論、徒歩で。


 「それにしても、セイジのお父さん、威厳ある人だね。」

 「あぁ。だが、今日は前よりずっと話せた。」


 今の今まで緊張で固くしていた頬を、セイジはようやく緩める。

 「そっか。それは良かった!」

 

 セイジの特訓に付き合ってきた彼としては、少しでも前向きになった姿は嬉しい。

 

 歩く2人は、地図に示された場所を目指す。


 「汝よ、涙を分かち合え。汝よ、虚空を駆けよ。然りて明くるは永久なり。トライアグ!」


 声が聞こえた。かと思えばセイジとクロの足に何かがしがみつく。


 「何だこれは!?」

 「分からない!でも対処しなきゃ!ウィンド!」


 見てみれば、歩みを止めたのは隆起した地面が理由であった。

 動けないクロは咄嗟に呪文を唱えて、不可視の刃を放つ。


 が、それも虚しく相も変わらぬ大地はセイジ達の足を止めている。


 「……一か八か!リキッド・フラー!」


 クロのウィンドは効果がなかった。果たしてセイジが唱えたリキッド・フラーは効果を成すのだろうか。


 懐疑的なセイジとは反して、彼の限定魔法はその力を示した。

 2人の足に絡む変形した地面が、魔法によって僅かに浮いた。


 それにより出来た隙間から、なんとか抜け出す。


 「汝よ、怒りと共にあれ。汝よ、大地へ平伏せよ。然りて映るは刹那なり。トライアグ!」


 「またっ!くっ、何なんだコイツは!」

 「不味いよセイジ。これ、魔術だ。」


 再び移動を始める地面。土埃をあげて、今度は2人を包み込むように迫ってきた。


 とにかくそこから離れようと走るセイジは、クロに聞く。


 「魔術!?魔法じゃないのか?」

 「うん。魔法は大気中のエネルギーを使うけど、魔術は違う。生き物のエネルギーを使う、強力な力なんだ。」


 「生き物のエネルギー……なら、使っている人間は…」

 「予想通り、不味いことになるよ。だから、早く止めなきゃ。」


 そう言っている間にも、魔術を行使する男は2人の元へやって来ている。

 その間も地面は激しく動いていた。


 セイジは考える。素早く、目の前の相手を倒さなければと。

 

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