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戦士の受難  作者: とんぼ。
第3章 ディランド侵攻編

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「血の繋がり」

 「あれっ?セイジ達は居ないんですか…?」

 「おう。アイツらは、だいぶ前に街行ったぞ。」


 家に帰ったハクエは、居間にいたケイヤに聞く。


 「まだ戻っていないんですね。」

 「まっ、日が暮れる前にゃあ帰んだろ。それより客人だ。そのふざけた玩具置いて、オメェも来い。」


 「い、言っておきますが私用ではありませんからね!」


 一応否定しておくハクエ。ケイヤは、はいはいと流しながらお盆を片手にしている。

 2人は客室へ向かった。お盆を持つケイヤの代わりにハクエはドアを開ける。


 その先、客室には猫耳の生えた女が座っていた。

 「貴方、レアンさんと一緒にいた方ですね!どうかしましたか?」

 「その、助けて欲しいんですにゃ…。」


 目を潤ませながら猫耳女は助けを求める。都合の良いことは理解していても。

 「ご主人、レアン様のお家、ディランド家がレアーヌ領を力づくで奪おうとしていますにゃ…」


 「あ?領地がどうこうっつーなら、レアーヌ領に行くか、認定ギルドんとこでも行ったほうがいいんじゃねぇか?」

 「……ディランド家を止めるならそれでいいかもしれにゃいけど、それじゃあご主人様はあのまま、父親の言う通りに動く状態のままだにゃ…」


 猫耳女の向かいに座ったケイヤは冷静に指摘する。彼はお人好しというわけではない。

 助けを求められたら有無を言わず力になることはないのだ。


 「レアンさんを助けるとしても、何故私達に?」

 「………ご主人様は、貴方達と過ごす時は自然体にゃんです…。セイジくんのこと、にゃんだか親しげに話してたり、ハクエちゃんの言葉だってご主人様には響いてましたにゃ。」


 ハクエの言葉。以前、彼女が教育とは何かと語った内容だ。その時、教育とは導くものとそう言われた。


 レアンにとって教育は厳しく、辛く、だからこそ成果を出すもの。

 導く、寄り添う、なんてものが滑り込む余地なんてない。


 故に、ハクエに否定された彼は思ってしまった。己の受けた教育は、父は、正しくないのではないかと。


 「……成る程。それで、私達ならレアンさんを止められると思ったのですね。分かりました。そういうことでしたら力を貸します。」


 「ハクエ。わざわざ俺達がやることか?」

 「そもそもレアーヌ領はセイジの家が統治しているでしょう?助ける理由はこの2つで充分です。」


 「はぁ。んじゃ、作戦たてて行くか。猫耳女!レアンとこまで案内しろよ?」

 「!はい!あっ、えとミーはホーリーっていいますにゃ!」


 猫耳女、ホーリーはクリーム色の髪を揺らして頭を下げた。


―――――――――――――――――――――――

 「旦那様、ディランド家に怪し気な動きがございます。」

 「……そうか。」

 「どうやら一人息子のレアン・フォン・ディランドに魔術を使わせる算段のようです。」


 セイジの父、ドゥモンド・フォン・レアーヌは己の執務室に鎮座していた。

 メイドからの報告を受けた彼は、顎に指を当てて少し考える。


 自身の、束ねられた灰色の髪を弄った後言う。

 「ディランド家とは少し交流があるしな…。私自ら赴こう。」

 「はっ。テレッソ様とセイジ様にはお伝えしますか?」


 ドゥモンドの息子達について聞いてみる。領主でないとは言え、レアーヌ家の一員。

 こんな事態に呼び出す必要があると考えた。


 「不要だ。テレッソは認定ギルドで仕事がある。セイジは花でも摘んでいるだろう。」

 「……………旦那様、申し上げますが、セイジ様のお年の男児は花を摘んで遊ぶことはないと思われます。」


 「何だと。では風が吹いても体が飛ばされることもないのか。」

 「赤ん坊であっても、風で飛ぶことはないではありませんか…」

 「ふむ。それもそうだな。」


 この男は息子のことを綿毛か何かだと思っているのだろうか。

 その言葉を飲み込み、メイドは出掛けると言った主人の手伝いをする。


 口数を最低限にすれば威厳のあるドゥモンドは、メイドの持つ上着を受け取り出掛けようとした。


 しかし、そこに来訪者がやって来る。


 「父上、突然すいません。お伝えしたいことがございます。」


 姿を見せたのは件の綿毛ボーイ。セイジ・フォン・レアーヌだった。

 


 

 


 


 

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