「血の繋がり」
「あれっ?セイジ達は居ないんですか…?」
「おう。アイツらは、だいぶ前に街行ったぞ。」
家に帰ったハクエは、居間にいたケイヤに聞く。
「まだ戻っていないんですね。」
「まっ、日が暮れる前にゃあ帰んだろ。それより客人だ。そのふざけた玩具置いて、オメェも来い。」
「い、言っておきますが私用ではありませんからね!」
一応否定しておくハクエ。ケイヤは、はいはいと流しながらお盆を片手にしている。
2人は客室へ向かった。お盆を持つケイヤの代わりにハクエはドアを開ける。
その先、客室には猫耳の生えた女が座っていた。
「貴方、レアンさんと一緒にいた方ですね!どうかしましたか?」
「その、助けて欲しいんですにゃ…。」
目を潤ませながら猫耳女は助けを求める。都合の良いことは理解していても。
「ご主人、レアン様のお家、ディランド家がレアーヌ領を力づくで奪おうとしていますにゃ…」
「あ?領地がどうこうっつーなら、レアーヌ領に行くか、認定ギルドんとこでも行ったほうがいいんじゃねぇか?」
「……ディランド家を止めるならそれでいいかもしれにゃいけど、それじゃあご主人様はあのまま、父親の言う通りに動く状態のままだにゃ…」
猫耳女の向かいに座ったケイヤは冷静に指摘する。彼はお人好しというわけではない。
助けを求められたら有無を言わず力になることはないのだ。
「レアンさんを助けるとしても、何故私達に?」
「………ご主人様は、貴方達と過ごす時は自然体にゃんです…。セイジくんのこと、にゃんだか親しげに話してたり、ハクエちゃんの言葉だってご主人様には響いてましたにゃ。」
ハクエの言葉。以前、彼女が教育とは何かと語った内容だ。その時、教育とは導くものとそう言われた。
レアンにとって教育は厳しく、辛く、だからこそ成果を出すもの。
導く、寄り添う、なんてものが滑り込む余地なんてない。
故に、ハクエに否定された彼は思ってしまった。己の受けた教育は、父は、正しくないのではないかと。
「……成る程。それで、私達ならレアンさんを止められると思ったのですね。分かりました。そういうことでしたら力を貸します。」
「ハクエ。わざわざ俺達がやることか?」
「そもそもレアーヌ領はセイジの家が統治しているでしょう?助ける理由はこの2つで充分です。」
「はぁ。んじゃ、作戦たてて行くか。猫耳女!レアンとこまで案内しろよ?」
「!はい!あっ、えとミーはホーリーっていいますにゃ!」
猫耳女、ホーリーはクリーム色の髪を揺らして頭を下げた。
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「旦那様、ディランド家に怪し気な動きがございます。」
「……そうか。」
「どうやら一人息子のレアン・フォン・ディランドに魔術を使わせる算段のようです。」
セイジの父、ドゥモンド・フォン・レアーヌは己の執務室に鎮座していた。
メイドからの報告を受けた彼は、顎に指を当てて少し考える。
自身の、束ねられた灰色の髪を弄った後言う。
「ディランド家とは少し交流があるしな…。私自ら赴こう。」
「はっ。テレッソ様とセイジ様にはお伝えしますか?」
ドゥモンドの息子達について聞いてみる。領主でないとは言え、レアーヌ家の一員。
こんな事態に呼び出す必要があると考えた。
「不要だ。テレッソは認定ギルドで仕事がある。セイジは花でも摘んでいるだろう。」
「……………旦那様、申し上げますが、セイジ様のお年の男児は花を摘んで遊ぶことはないと思われます。」
「何だと。では風が吹いても体が飛ばされることもないのか。」
「赤ん坊であっても、風で飛ぶことはないではありませんか…」
「ふむ。それもそうだな。」
この男は息子のことを綿毛か何かだと思っているのだろうか。
その言葉を飲み込み、メイドは出掛けると言った主人の手伝いをする。
口数を最低限にすれば威厳のあるドゥモンドは、メイドの持つ上着を受け取り出掛けようとした。
しかし、そこに来訪者がやって来る。
「父上、突然すいません。お伝えしたいことがございます。」
姿を見せたのは件の綿毛ボーイ。セイジ・フォン・レアーヌだった。




