「知り合いの話は時としてこそばゆい」
ディランド領の領主が住む屋敷。そこに、一人息子のレアン・フォン・ディランドは居た。
傍らには猫耳を付けた女が立つ。
2人のいる空間はとてもじゃないが、穏やかな雰囲気とは言えない。
原因は猫耳女の剣幕にある。
「ですから!ご主人様は、本当に、それでいいんですかにゃ!?」
「………いいも何もそれしかないんだよ!だって、父様はそう望んでいる!俺は、従うだけだ!」
「だからって、理由もないのにレアーヌ領の人々を武力制圧するにゃんて、ご主人様はホントに良いと思うんですにゃ!?」
「…………うるさい!」
レアンは頭を振り、猫耳女の言葉を必死に否定する。それは己の選択がブレないための、防衛本能からだ。
猫耳女はそんな彼の姿を見て、取り合うのをやめた。
「……分かりましたにゃ。でも、ミーはこんなの認められにゃいです…。」
ドアを開けて去り際にそう言う。彼女の後を、レアンは追いかけられなかった。
彼は父に認めてもらうため、どれだけ非道でも、理にかなってなくとも従いたいのだ。
「これでいいんだよ…だって、父様がそう言うんだから。そうだよ。」
レアンの握った拳は震えており、この先への不安が見て取れるのだった。
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ハクエは街でショッピングにしゃれこんでいた。何せ連日依頼続きだったので、 今日は休むと決めていたのだから。
「いらっしゃぁ〜い、ハクちゃん!お買い物かい?」
「はい。今日は休みなので。」
彼女をハクちゃんと呼ぶふくよかな男は、夫婦で雑貨屋を運営している。
この雑貨屋にとってハクエは常連客だ。
「休み?そりゃよかったね!じゃあ、これなんか買ってかないかい?」
「…………何です、これ?」
差し出されたのはこけしのような人形であった。それは大きく口を開けており、何だか間抜けな面を見せている。
「面白いよ〜これ!なんと、飴ちゃんをプレゼント出来る!」
そう言いながら男は、飴を人形の口に入れて、腹部にあるボタンを押す。すると人形の口が閉じる。
ボタンを離すと、人形は口を開けて再度気の抜けた顔を晒す。
開いた口には先程入れていた飴が入っている。
「面白いだろ〜これ!どう?買うかい?」
「い、いえ。やめときます…。」
ハクエが物を買う時は、必ず考えることがある。それは必要性だ。
常識の範囲内でこの先必要だと感じるものであれば、どれだけ高くとも入手が難しくとも、手に入れる。
それが彼女の考え。それを踏まえると、この人形はどう考えてもいらない。
「え〜。あっ、でもほら、君のパーティメンバーは欲しがるんじゃない?セイジくんとかクロくんとか!」
「流石にセイジ達でもこれは要らないんじゃ………いや、欲しがりそうですね…。」
「ほらほら、プレゼントに!」
「分かりました…。お会計、お願いします。」
男の圧に負けたハクエは泣く泣く、アホ面をのっけた人形を買った。
精算をしていると、男の隣にはこれまたふくよかな女性が現れる。
その女は男の嫁であり、共に雑貨屋を営んでいるのだ。
「ハクちゃん、毎度あり〜。そう言えば、ハクちゃんのお友達のセイジくん、今日見かけたわよ。」
「セイジを…?」
「うん。ママァって、泣き叫んでいたわ。あの子、ママっ子だったのねぇ。」
「……そ、そうなんですね……セイジは一体何をしてるんですか…………。」
知り合いの思わぬ痴態に、ハクエは顔を赤くする。
これから街を歩く時はセイジから離れようか、なんて思った。知り合いとは思われたくないし。
一通り買い物を終えたハクエは、帰ったらセイジを問い詰めようと、家に帰るのだった。




