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戦士の受難  作者: とんぼ。
第3章 ディランド侵攻編

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「知り合いの話は時としてこそばゆい」

 ディランド領の領主が住む屋敷。そこに、一人息子のレアン・フォン・ディランドは居た。

 傍らには猫耳を付けた女が立つ。


 2人のいる空間はとてもじゃないが、穏やかな雰囲気とは言えない。

 原因は猫耳女の剣幕にある。


 「ですから!ご主人様は、本当に、それでいいんですかにゃ!?」

 「………いいも何もそれしかないんだよ!だって、父様はそう望んでいる!俺は、従うだけだ!」

 

 「だからって、理由もないのにレアーヌ領の人々を武力制圧するにゃんて、ご主人様はホントに良いと思うんですにゃ!?」

 「…………うるさい!」


 レアンは頭を振り、猫耳女の言葉を必死に否定する。それは己の選択がブレないための、防衛本能からだ。


 猫耳女はそんな彼の姿を見て、取り合うのをやめた。

 「……分かりましたにゃ。でも、ミーはこんなの認められにゃいです…。」 


 ドアを開けて去り際にそう言う。彼女の後を、レアンは追いかけられなかった。

 彼は父に認めてもらうため、どれだけ非道でも、理にかなってなくとも従いたいのだ。


 「これでいいんだよ…だって、父様がそう言うんだから。そうだよ。」

 レアンの握った拳は震えており、この先への不安が見て取れるのだった。


―――――――――――――――――――――――

 ハクエは街でショッピングにしゃれこんでいた。何せ連日依頼続きだったので、 今日は休むと決めていたのだから。


 「いらっしゃぁ〜い、ハクちゃん!お買い物かい?」

 「はい。今日は休みなので。」


 彼女をハクちゃんと呼ぶふくよかな男は、夫婦で雑貨屋を運営している。

 この雑貨屋にとってハクエは常連客だ。


 「休み?そりゃよかったね!じゃあ、これなんか買ってかないかい?」

 「…………何です、これ?」


 差し出されたのはこけしのような人形であった。それは大きく口を開けており、何だか間抜けな面を見せている。


 「面白いよ〜これ!なんと、飴ちゃんをプレゼント出来る!」

 そう言いながら男は、飴を人形の口に入れて、腹部にあるボタンを押す。すると人形の口が閉じる。


 ボタンを離すと、人形は口を開けて再度気の抜けた顔を晒す。

 開いた口には先程入れていた飴が入っている。

 「面白いだろ〜これ!どう?買うかい?」

 「い、いえ。やめときます…。」


 ハクエが物を買う時は、必ず考えることがある。それは必要性だ。

 常識の範囲内でこの先必要だと感じるものであれば、どれだけ高くとも入手が難しくとも、手に入れる。


 それが彼女の考え。それを踏まえると、この人形はどう考えてもいらない。


 「え〜。あっ、でもほら、君のパーティメンバーは欲しがるんじゃない?セイジくんとかクロくんとか!」

 「流石にセイジ達でもこれは要らないんじゃ………いや、欲しがりそうですね…。」


 「ほらほら、プレゼントに!」

 「分かりました…。お会計、お願いします。」


 男の圧に負けたハクエは泣く泣く、アホ面をのっけた人形を買った。

 精算をしていると、男の隣にはこれまたふくよかな女性が現れる。


 その女は男の嫁であり、共に雑貨屋を営んでいるのだ。


 「ハクちゃん、毎度あり〜。そう言えば、ハクちゃんのお友達のセイジくん、今日見かけたわよ。」

 「セイジを…?」


 「うん。ママァって、泣き叫んでいたわ。あの子、ママっ子だったのねぇ。」

 「……そ、そうなんですね……セイジは一体何をしてるんですか…………。」


 知り合いの思わぬ痴態に、ハクエは顔を赤くする。

 これから街を歩く時はセイジから離れようか、なんて思った。知り合いとは思われたくないし。


 一通り買い物を終えたハクエは、帰ったらセイジを問い詰めようと、家に帰るのだった。




 

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