「違和感」
(ーー。ーー。ここー、は、ーーー、どこ?)
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
車内に沈黙の空気が流れる。須藤がバックミラーに目をやれば、後部座席に腕を組んでどっしりと座っているライメイと、目線を下に向けているローンの姿が見えた。
「っ!!」
目線を前に戻して、ハンドルに力を込める。
「・・・・」
「何か、考え事か?」
ライメイが沈黙の空気を破るように口を開いた。
ライメイの問いにローンがコクリと頷く。
「わからない・・・というか、いくつか、・・・なんとも言えない。言葉にできないような、・・・不思議な疑問があるんだ。」
ローンがゆっくりと言葉を選ぶように話し始めた。
「疑問・・・とな?」
ライメイがローンに視線を向ける。
「あの時お二人は戦っていたのでは?、」
須藤が会話に割り込む。
「あぁ。そうだ。」
ライメイとローンが頷く。
「俺は、ライメイに飛ばしてもらって、屋根上にいたあの少年と戦っていた。」
ローンが目を瞑り、あの時の光景を思い出していた。
「その戦いの中で、俺自身がどうも変な感じがしたんだ。」
「変な感じとは?」
「・・・それを、うまく言い表せないんだが、なんというか、喋り方も俺自身じゃなかった?ような感じがしてて・・・それに、俺はあの少年と戦っている時に致命的な怪我をおったはずなんだ。・・・だけど、こうして、怪我なく動けている。・・・考えれば考えるほど、よくわからないんだ。」
再びローンが視線を下に向ける。
「・・・そのコインに聞いてみてはどうだ?」
ライメイが首を傾げた。
「・・・それが、さっきから呼びかけても全く反応がないんだ。」
ローンがコインに視線を向ける。
ローンの手のひらには、何も反応のないコインがただ置いてあった。
(・・・なにも反応しないし、怪我も治す・・・やっぱり、あのコイン。それに、あの子も。)
再び沈黙の空気になり、ただ車のエンジンの音が車内に響く。
「アッハ!!貴方達も大変ねぇー」
エポカが紫電に向け笑う。
「私もいることを、忘れないでもらえるかしら!!!」
魔女が炎の弓の矢をエポカに向けて放つ。
「そんなもの!!!」
ブン!とカマを振るい矢をかき消した。
「見えてるわよ!甘すぎる!!!」
エポカの背後から攻めてきていた紫電をなぎらはった。
「ちっ!!せっかく近づけたのに。」
エポカから飛ばられた紫電がバランスを立て直す。
「ピキピキ、パリーン。」
遠くの方でガラスが割れるような音が響いた。
「あの子は大丈夫なの?」
「わからねぇ。だけど、こいつをどうにかしんねぇ限り、向こうに行けねぇだろうが!!」
「あらあら、随分と熱くなっちゃって、ほーんと、飽きないわね。あなたたちの抗いって。フフッ大人しく救済の道導に従えばいいものを。」
エポカが不敵に笑う。
「その救済が気にイラねぇんだろうが。俺の大切な・・・」
紫電の刀を込める手に力が入る。
「・・・でもまぁ。少し遊んであげましょうか。」
エポカがカマに力を込めた。カマの先が黒いオーラのようなものな纏われた。
エポカがカマを振るった。
「ふせろ!!」
紫電の叫び共に、紫電と、魔女が地面に伏せた。
ドーーン!という音が響いた。紫電と魔女が体を起こすと、周りにあった建物が全て崩壊していた。
「う、嘘だろ。」
「今まで、遊ばれてたっていうの?」
魔女と紫電にそれぞれ鳥肌が逆立つ。
「人の子らには、力の差を見せつけるのが1番効率がいいって聞くのだけど・・・それは、あなたたちも一緒なのかしら?」
エポカがもう一度先程と同じ攻撃の体制に入った。
同時刻ー。アリス側。
「シールズ!!お願い目を目を覚まして!!」
アリスがシールズに向けて必死に叫んでいた。
「グッ!!ぎゃあ!!ニンニンダァ!!」
シールズがアリスの声が聞こえていないように暴れる。
「本当に化け物みたいだな。瓦礫に埋まっても、何度もこちらから攻撃したとしても、いっさいたおれるようすなどミジンも感じないぞ。一体どうなっておるんだ?」
槍に形を変えているニカルが喋る。
「そんなのわからないわよ!今はとにかくこの状況をどうにかしないと。」
「フフゥー!!」
シールズがなりふり構わず暴れる。
「お願いシールズ!!」
アリスが叫んだ瞬間。アリスの背後から突然突風が吹き荒れた。
「キャア!!」
「なんだぁ?」
突然吹き荒れた風によってアリスがバランスを崩して、地面から足が離れた。
「シールズは?」
瓦礫に必死に捕まりながら、シールズの方に目線を移動させる。
「ガッ!!」
「嘘でしょ?」
「なんと、・・・」
アリスの目の前で、なんとシールズが突風によって吹き飛ばされていた。
数分たっただろうか、アリスは瓦礫から離れて、あたりを見渡した。
「・・・ほんとひどいわね。」
「・・とりあえず奴らのところに戻った方が良いだろうな。」
シャープペンシルに姿を戻したニカルが話す。
「・・・そうね。」
アリスがシャープペンシルを胸ポケットにしまい足場の悪い中を歩き出した。
(あの重い盾ごと飛ばす。・・・どれほどの強い風なのだ。)
「うっ。!!」
アリスが足を突然止めて、頭を抑えてうずくまった。
「どうした、小娘?」
ニカルがアリス声をかける。
「ぅっ!!うー!頭が・・・頭が割れる・・ように痛い。」
アリスが頭を抑えてうめく。
「・・・一体なにがおこっていというのだ?魔女達は無事なのか?」
魔女達ー。
(・・・今の風?もしかして、あたり?)
「フフッ。フフッ。フハハハーーー!!!」
エポカが突然高笑いした。
「いちいちムカつく様な笑い方だなぁ!!」
紫電が刀に力を込めて走り出した。
「そろそろ。楽しい時間も終わりにしましょうかね。お迎えもくるもんだしね。」
「なにをわけをわかんねぇことを!!」
「ねぇ。そうでしょ。紫電。・・・いえ、紫龍?龍莉?あなたの名前はなにかしら?いつから、その前に変わったのかしらね?」
紫電のあしがぴたりと止まった。
「っー、!!!」
ガランっと紫電のてから刀が落ち、身体全体が震え出す。
「お、ぉ、ぉーーー!!おれはぁ、、!!」
紫電が膝をつき、空を見上げて叫び出した。
「うっ!!」
「頭が!!」
紫電を見守っていた魔女と山上も頭を抑えてうずくまった。
「っ!!う。」
魔女が紫電に、声をかけようとするがうまく喋ることができない。
「がぁ!!」
紫電が大声を上げ意識を失った。
(・・・何が起こってるの?・・そんなことも考えられない・・・このままじゃ。エポカに・・・でもそんなことできる状態じゃない。紫電!!・・・ダメだ・・・意識が。)
紫電に、続くように、魔女と山上も意識を失った。
「本当は殺したいけど、せっかくのかわいい子を放ってこくことなんてできないんだよねぇー。今回は見逃してあげる。でも次は本当の君とあえるといいけどね。」
パチンも、指パッチンをしてエポカが姿を消した。
「せ!先輩ー!先輩ーーー!!!」
「うっ!」
「おい!魔女ー!大丈夫か?」
「ん?」
須藤とローンによって、山上と魔女が目を覚ました。
「っ!!紫電は?」
「そんなに急に動くと危ないぞ!」
「あんずるな、紫電なら意識はある。」
ライメイに抱っこされ、魔女の近くに、紫電が来た。
「よっかったぁー」
魔女が安堵のため息を漏らす。
「ところで、アリスさんの姿が見えないのですが。」
須藤があたりを見渡す。
「そういえば、」
魔女がハッとする。
「おーい。みんなぁ!!」
アリスが遠くの方から手を振りながら駆け寄ってきた。
「アリスさん!!よかったご無事だったんですね。」
「・・・シールズさんは?」
アリスが顔を下に向ける。
「・・・それも含めて、話し合いをしましょう。」
山上がふらふらしながら立ち上がる。
「先輩まだ動いちゃダメですよ。」
須藤が山上に肩を貸す。
須藤が警察車両の後部座席のドアを開けた時、その場にいた全員にぴしりと僅かな頭痛が走る。
(ずっと、近くに、私たちの近くにいたーーはず、なのにーー今まで存在を忘れていたように彼女は最初からそこにいたように思えた。)
須藤が声を失う。須藤と山上の視線の先には後部座席に横になって静かに寝息を立てている梨杏がいた。




