「嘆きー。咆哮。」
山上の家ー。屋根上にてー。
「アゼグ!!」
ローンが力を込めてコインを少年に飛ばす。
「コ・・・・ン。・・・か、ね、の音色?」
飛ばされた、コインをジャンプで避け、少年が頭を抱えながら静かに呟く。
「さっきから、ちょこまかと。」
ローンの手から飛ばされたコインは、ブーメランのように再びローンに戻ってきた。
「くっそ!」
「・・・悲しきかな。」
足場の悪い中、ローンと少年が戦闘を繰り広げていた。
「ちっ!炎も、風も何もかも当たらねぇ。・・・というか、寸前のところで当たってないように見えやがる。」
ローンが肩で息をする。
「・・・夜明け?目覚め・・・色!黒・・・誰?憎しみ、悲しみ・・・嘆き、乾き、灯火、火、水・・・影?」
少年がうずくまりながら呟く。
「こいつ、何を言ってやがるんだ?さっきから攻撃する意思も感じられねぇし、こっちが仕掛けても避けてばっかりだしよ。」
「ローン。こいつの声に耳を貸すなよ。」
アゼグがローンに呼びかける。
「わかってよ!!んなことわよ!つーか、こいつ本当に今まで俺たちがあってきた少年とおんなじ人物かよ。まるっきりちげぇじゃねぇか。」
ローンがうずくまっている少年に向かい叫んだ。
「ロ?・・・・・ン?」
少年がガバッと顔を上げ、ローンと視線があった。
「ウッ!」
「ドグーン!!」と心臓が高鳴った。ローンが口から血を吐いた。呼吸が荒くなり、片膝をつき、口元を抑えた。
「ローン!!」
「っー!な、何が、起こったんだ?」
「しゃべるでない!」
アゼグが声を上げる。
「ーーー。」
少年が静かに立ち上がった。手にはいつのまにか黒い旗を持っていた。
(ーーこのままじゃ、やられる。)
「ドン!!」と大きな音を立てて、旗を地面に突き刺した。
「ク、く、クロキ?クロクロクロ、・・・・?クロキ?ハ、は、ーーーた?クロキハー?タ?クロキハタ・・・エ?クロキ、・・・ハタ・・・ノ・・・モト・・・ツド・・・エ?ーーー、ッ。クロキハタノモトツドエ。」
少年が呪文を唱えるようにつぶやいた後、旗に体重をかけるようにズルズルと地面に倒れた。
「ー!!」
(何がおこった?)
ローンの試行がぐるぐると巡る。
「あらら、今回はここまでのようですね。」
倒れた少年の前に1人の人物が現れる。紫の靴、青いズボンを履いていて、黒い、マントがなびいていた。
(コイツ、今上から?)
「対象人物。コードゼロアルファマイナスイチ.・・・ってそんな呼び方しなくていいかー。」
くるりと体を回転させて、ローンの方に一歩ずつ歩いてくる。
「どーせ、意識あるんでしょ?まぁ。喋れないし行動もできなんだろうけど・・・」
(間違いねぇ。コイツは、キュルアー!)
「名乗る必要なんてないでしょうね。一度僕とはあってるし、」
ふぅとため息をつきながらローンを見下ろしていた。
(アゼグ!!アゼグ!!!いまだ。コイツに攻撃を!!)
アゼグに必死に呼びかけるが、反応が全くない。
「何かしよーとしてるんだろうけど、どーせ死ぬ運命なんだから大人しくしてればいいもんなのにねぇ。」
ニヤリとキュルアーが笑う。
(さっきから、何がいいてぇんだ?)
ローンがキュルアーを睨む。
「おっと、喋りすぎたね。こんなキャラじゃないのに・・・まぁいいや、どーせまた会えるんだし。それじゃねぇ。死ねない苦しみのおにぃーさん。」
くるりと、ローンを振り返って、少年の方に歩みを進める。
「よいしょっと。」
キュルアーが少年を抱える。
「それじゃあねぇ。」
手を振りながら、影に消えていった。
「っ!何が起きている!」
玄関前のライメイ叫びが耳に入り、ローンは意識を失った。
山上の家ー。玄関前。
「グルルーー。」
「バウ!!ワウ!!」
「はぁ、ハァ。流石に数が多すぎる。」
ライメイが汗を拭い。口を開く。先程から、何体も何回も黒い影の獣のようなものを倒しているが、一向に数が減らない。
「どうなっておる。・・・ローンは無事なのか?」
ライメイが屋根上を見つめる。
「グルルーー。」
「っと、今はそんなこと気にしている場合では、無いな、やつを信じて待つのみ!!」
ライメイが棍棒に力を込めて雷を発生させた。
「ヌゥーーおーー!!」
ドッカーーーーーーン。と雷が落ちるような音が辺りに響き渡る。
「グキャァ!!」
叫び声と共に獣たちが煙のように消えていく。
「・・・やはり全く倒したという感覚が無いな。」
ライメイが呟く。
「グルル。」
そしてすぐに復活?する。
「このままでは、ジリ貧というものになってしまう。」
ライメイが呟いた瞬間ー。屋根上からドンという音が響いた。
ライメイと辺りにいた、黒い影の獣たちが一瞬で時が止まったように停止した。
「クゥーーん。」
「ニャァー〜ん」
数秒間の沈黙の後黒い影の獣たちが低い唸り声をあげながら苦しみ出した。
「何が起こっている。おい!ローン!!そっちは大丈夫か?」
ライメイが困惑し、ローンに呼びかけるが、ローンからの返事はない。
「どういうことだ?」
黒に影たちが一箇所に集まり出し、1つの大きな人影になった。
「影が人型になった?」
ライメイが驚愕した。
「ぅっう・・・アッアーーァ!!!」
影の人型がうめき声なのか、嘆きの声かわからない声を上げた。
「コイツはいったい・・・」
ライメイが息を飲み込んだ。
「ウッガッ!!」
影の人型のような物が剣のようなものを取り出し、自分の前に構えライメイに向けた。
「・・・」
(表情はわからぬが、いい目をしているのは間違いないみたいだな。)
「グッグッ・・・ギャァァーーー!!!」
黒い影の人型が叫んだと同時にライメイに駆け寄った。
「ヌッ!!」
影の剣のようなものを棍棒で防いだ。ライメイと影の人型と距離が開いた。
「グキャァ!!」
「はやー」
ライメイが喋る暇を与えないぐらい素早く、襲いかかってきた。
「痺れろぉー!!」
コンボウに雷を纏わせて影の人型に攻撃した。
「ヌギァ!?」
影の人型が後退する。
「?今度は攻撃が効いているのか?」
ライメイが首を傾げる。
「グッグッぎゃあ?」
「痺れているのだろう。」
ライメイが影の人型に距離を縮めた。
「はぁーー!!」
ライメイが影の人型に向け、トドメの攻撃を仕掛けた。影の人型が笑ったように見えた。
「ドォーン。」と低い鈍い音が響いた。
「パラパラ」と音を立てて地面が抉れていた。
「ハァ、ハァ、ハァ・・・。・・・終わったのか?」
ライメイが肩で息をしていた。地面に突き刺さった、棍棒を抜き差した。
「おい!ローン!こっちはなんとかなったぞ!そっちは大丈夫か?」
息を整えて山上の家の屋根上に向かい声を上げた。
「お、終わったのですか?」
「ガチャ」と玄関の扉が開き須藤が顔を覗かせた。
「あぁ。」
ライメイが頷いた。
「こっちは、大丈夫です。少し気を失っていましたが、なんともありません。」
屋根上から、ローンが顔を覗かせた。
「うむ。」
ライメイが頷いた。
「ピリリリ」
須藤のスマートフォンが着信を告げる。
「あっ。先輩からの電話です。」
「ピッ」と通話ボタンを押して電話に出た。
「はい。もしもし、お疲れ様です。須藤です。」
「やっと繋がった!!そっちは大丈夫?いつ頃来れそう?」
「わっあわわ!!お、落ち着いてください。先輩。・・・今から向かいますから!!」
須藤がスマートフォンを耳に当てながら須藤がライメイに視線を合わせる。
「わかった。気をつけてきなさいね。なるべく早く。」
「はい。わかりました。」
電話を切った。
「急ぎましょう。」
ライメイと須藤が頷いた。




