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第73話 魔王、国王、大賢者?世界3大厄災ですわ!



 自分とジュリアの間を遮ってジュリアの前に立ったジュダルを見て、魔王、アルシエルはあからさまに顔を顰めた。

 「…何の用だ、半端者」

 「それはこっちのセリフだな、魔王よ。ここはお前が来るところじゃねぇと、何度言ったら分かるんだ?」

 魔王相手に怯む様子がないジュダル。

 (確か、大賢者様とエドモンド陛下は一度魔王を封印なさっているのですわよね。それにしても何故、魔王は大賢者様の事を『半端者』と呼ぶのかしら…)

 一旦鎖を外すことを諦め、事の成り行きを見守ることに決めたジュリアは、魔王とジュダルを交互に見ている。

 「俺だってこんな人間くせぇ所、1秒だっていたくないんだがな。その女を頂いたら早々に立ち去ってやるよ」

 ビシッと指を指されて、思わず唾を飲み込んだジュリア。

 「そいつは勘弁願いたいなぁ。あの女は俺の女だ。おいそれと他の奴にかっさらわれてたまるものか」

 「ちょっ!!いい加減なこと言わないでくださいまし!わたくしはジュダル様の物ではありませんのよ?!」

 こんな緊張感のある場でも、『俺の女』呼ばわりされるのはたまったもんじゃないと、すかさず反論するジュリア。

 「そうだっ!!何を、言っている!薔薇妃は私の妃だぞ?!」

 リリスと剣を交えながらも参戦してくるエドワードに対しては、ジュリアは一応今はまだ正式に薔薇妃の称号をはく奪されているわけではないため、否定はしない。

 「フン。誰の妃だろうが、関係のないことだ。力ずくで俺のモノにすればいい話だしな」

 (やっぱり、やっぱりですわ!何故こうも、わたくしとかかわりのある殿方は皆まともな思考回路を持ち合わせていませんの?!)

 つくづく男運のないジュリアである。

 そんなことを考えている間にいつの間にかジュダルと魔王の戦いが始まっていた。

 「2000年前は2人がかりで俺を封印するのがやっとだったくせに、1人で俺と闘うつもりか?」

 「ふん。今まで寝ていたお前ごとき、俺様1人で十分だ!」

 2人が繰り出す魔法はどれもジュリアの見た事のないものばかりで、ジュリアは自分が囚われているということも忘れて、2人の闘いに釘付けになっていた。

 (なんですの?あの黒い稲妻は。落ちた所がみるみる腐食していきますわ!…って、)

 「ジュダル様、魔王!ストップ、ですわ!!」

 ここ一番、大きな声を出して、突然2人を制止したジュリア。その声のあまりの大きさに(魔法を使って更に声を大きく響かせた)、思わず手を止めたジュダルと魔王。

 「な、なんだ?!何故止めるんだ、ジュリア」

 「お前の身が危ういと思ったからではないのか?」

 「ふざけんな!俺の方が優位にたっていただろ!」

 「そのようなこと、どうでもいいですわ!」

 自分をかけての闘いに対して、どうでもいいと言ってのけるジュリア。

 「そのような高位魔法をこのようなところで放つなんて、あなた方の常識は一体どうなっていますの?!」

 そう、ここはシャーロットの部屋。称号付きの側室の間よりもずいぶん狭いし、たとえ称号付きの側室の間であっても2人の放つ魔法に耐えられるわけがない。シャーロットの部屋は見る影を失くし、ジュリアが防護結界を張っていた場所以外ほとんどすっかり破壊され尽くしていた。

 「ふん。魔王に常識など通じるものか。人間ごときの常識を俺におしつけるのが間違っている」

 「大体、こんな非常時に常識なんて考えてられるかっ!」


 バキンっ


 反省するどころか、反論され、ジュリアの方から何かが壊れる音がした。

 「人間の常識を押し付けるな?常識なんて考えられない?」

 ジュリアの声は低く、そして俯いたままのジュリアからはしゅーしゅーと音を出しながら煙がたっている。

 「お、おい、ジュリア?どうした?」

 あきらかに様子のおかしいジュリアに、さすがにジュダルが心配し始めた。

 「人間の常識を押し付けられたくなければ、とっととご自身の御城に帰られたらいいのです!それに、ジュダル様は昨日敵のような感じを匂わせておきながら、何故何事もなかったかのようにわたくしを助けようとしているのですか!」

 「げっ!今、それ言う?!ってか、おい、それは高めてはいけない系の魔力じゃ…」

 いつの間にか、力づくで外そうとすれば激痛が走るはずの鎖を外し(おそらく先ほどの『パキン』という音は鎖を外した音なのだろう)、体中から出ていた煙はまぶしい光に代わり、ジュリアを中心に何倍にも膨れ上がっている。

 「常識を考えられないのであれば、ジュダル様も、魔王も、この場から立ち去るべきですわーっ!!!」

 その叫びと共に、ジュリアを覆っていた眩いばかりの光が大きな光の塊となり、ジュダルと魔王目がけて飛んで行った。

 「ちっ、ここまでか」

 光の塊が到達する前に、魔王の姿がぐにゃりと歪み、その場から消え失せる。

 「あ!ずりっ!!俺もっ!!」

 ジュダルも、先に消えた魔王に続いて亜空間へと逃げて行った。

 目標を失った光の塊はそのままシャーロットの部屋の扉の方へ飛んでいき、そこでエドワードと闘っているリリスに直撃し、光が一気に四方八方へと弾けた。

 「きゃああああぁぁぁっ!!!!」

 もろに光の塊を喰らったリリスは断末魔を上げ、そのままその場にうずくまる。

 「ば、薔薇妃。危うく私にもあたるところだったよ?」

 エドワードは部屋の外に出ていたので、ギリギリ光の塊に触れなかったが、リリスはちょうど入り口の所にいたので、光の塊を一身に受けることになってしまった。

 「あら、それはざんね…コホン。申し訳ございませんでしたわ。つい我を失ってしまい…」

 うっかり本音を漏らそうとして、慌てて訂正した。

 「ほんっと、あっぶねーな。何すんだよ、ジュリア!!」

 脅威がなくなり、ひょっこりと亜空間から顔を出したジュダルは不機嫌顔である。

 「…」

 チラリとジュダルの方を見たが、何も言わずすぐに視線を逸らすジュリア。

 「おい、無視すんなよ!」

 冷ややかな姿勢を崩さないジュリアの肩をジュダルがグイッと引っ張る。が、すぐにジュリアによって払いのけられた。更にジュリアはジュダルがふれていた箇所を汚れを払うかのようにパッパッと手で払う。

 「ジュリア、何だよ!その汚物に対するような扱いは!俺が助けに入ってやらなかったらお前、魔王に連れ去られていたんだぞ?!聞いているのかっ?!」

 「――ギャーギャーと、本当にうるさい蠅ですのね」

 あまりにも耳元で騒ぎ立てるジュダルに、ジュリアは心底うんざりとようやく重い口を開いた。

 「あ゛ぁ゛ん?何だ、その言い方は!」

 かつてないほどまでにジュリアに敵意をむき出しにされ、ジュダルも臨戦態勢になる。

 「そもそも、魔王を追い払ったのはわたくしですわ。あの鎖も、この通りわたくしが自身で外しました。大賢者様にしてもらったことなど、ただの時間稼ぎ位ですわ。それくらいで大きな顔をしないでくださいまし」

 「ぅっ」

 「それに、先ほども申しましたが、昨日はあのようにわたくしに対して裏切り行為をしていたばかりの方が、何故味方のフリ等を成されるのですか?そのようにコロコロと立ち位置を変えられる軽薄な方などに、何故わたくしが口を聞かねばなりませんの?」

 「うっ」

 それだけ言ってのけると、ジュリアはまたツーンとジュダルから顔を逸らした。

 「…お、俺がどんな思いでお前を罠にはめたと思うんだ!全部お前のためなんだぞ!」

 「…わたくしのため?」

 ジュダルの言葉にゆっくりと振り返るジュリア。

 「あ、あぁ。そうだ。俺は―――」

 ジュダルが言葉を紡ごうとしたが、その言葉はジュリア目がけて飛んできた何かによって遮られる。勿論、その飛んできた何かはジュリアに当たることはなく、寸でのところでジュリアに撃ち落されてしまったため、ジュリアを傷つけることはなかった。

 「ちぃっ…どこまでも目障りな、女めっ」

 何かが飛んできた方へ視線をやると、ジュリアの先ほどの攻撃により、全身が焼け焦げ、見る影の無くなったリリスが息も絶え絶えにその場に倒れていた。ジュリアに最後の攻撃をした後は、怒ったエドワードに髪を掴まれ、腕を拘束されている。

 「最後のあがき、といったところでしょうか。わたくし、貴女にはそれほどまでに恨まれるような覚えはございませんのですが」

 これが前世の牡丹妃や、アイリスであれば、いくらでも理由は出てきそうだけれど、『薔薇妃日記』の中にも、リリスに対しての情報はそこまででてこなかった。

 「ふんっ。お前が、お前ごときが魔王様にお近づきになるなど、許せるものかっ!お前さえいなければ、魔王様の御心は私のものだったのに!」

 吠えるように叫ぶリリスにジュリアは心底うんざりした。

 (なんですの?どいつもこいつも。わたくしには全くその気はありませんのに、勝手に嫉妬して、わたくしに対して敵意をむけるなんてっ!)

 後宮に入る前から、こういったやっかみは数えきれないほどあり、慣れていたが、ここまで実害を伴うのはさすがのジュリアでも怒ってしまう。というか、いままではやっかみはあってもジュリアに害が及ぶ前に防いでいたし、若干自分からそれらを助長させるような面もあったため、気にしてもいなかったのだが、リリスと魔王のソレはジュリアにとって全くの予想外の事なので、迷惑以外の何物でもなかった。

 「リリス、と仰いましたでしょうか。僭越ながら、申し上げますわね。魔王の心が貴女のものにならなかったのは、わたくしのせいではなく、貴女に魅力がなかったからですわ」

 きっぱりと身も蓋もないことを良い放つ。

 「それに、わたくしは魔王に対して何も思ってなどいません。…失礼、何も思っていないというのは間違いですわ。正しくは、『大変迷惑』と思っています。好意などはかけらもございませんわ。むしろ嫌悪感しかございませんもの。今後一切関わり合いにはなりたくありませんわね」

 つらつらと、目一杯の毒を笑顔で吐くジュリア。

 「わたくしのためにも貴女はわたくしになど構わず、もっと自身の魅力を高めて魔王の心をしっかりと握っていればよろしかったのに。無駄な努力、ご苦労様ですわ」

 「くっ!!!おのれ、おのれぇっ!!!」

 ジュリアの嫌味に怒りが沸点に到達したリリスは、その大きな目を最大限にカッと見開き、口からドロリと黒い液体を出したかと思うと、その黒い液体はみるみるリリスの形を成していき、そのままジュリアに襲い掛かってきた。

 「出ましたわね。でも、ご愁傷様ですわ」

 このことを見越していたかのように、ジュリアはパチンと指を鳴らすと、地面から鎖と枷が出現し、それらは瞬く間にジュリアに襲い掛かってきたリリスを捕えた。

 「な、なんだこれは!!こんなものっ…ぎゃあぁぁぁぁあっ!!!!」

 枷を無理に引きちぎろうとしたリリスが断末魔を上げた。

 「あら。成功ですわね。先ほどの魔王の枷を再現してみましたわ。もちろん出力最大で。ご忠告申し上げますわ。ソレ、無理に外そうとなさいますと、死にますわよ?」

 クスクスと楽しそうに話すジュリアは、魔王以上に極悪顔になっていた。



 

すみません、久々の更新です。

ちょおっと、ここ最近本業の方が忙しく、出張やらなんやらでPCに向き合えない日々が…

しばらくはこのような状態が続きそうなので、週一くらいの更新になるかもです。

すみません。

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