↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/78

第74話 捕えたリリス?とりあえず、躾けはしっかりするつもりです。



 先ほどの闘いのせいですっかり見る影を失くしたシャーロットの部屋で、にらみ合っている女たち。

 ジュリアとリリスである。

 「さて、それでは尋問といきましょうか」

 顎に手を当て、床に膝をついているリリスを上から見下ろしているジュリア。

 「お前に話してやることなど何もないわっ!!――ぎゃあぁぁぁっ!」

 少しもしおらしさを見せようとしないリリスに、ジュリアがパチンと指を鳴らすと、リリスの全身に電流が走り、激痛を与えた。

 「言葉と態度にはお気を付けくださいまし。今の貴女はわたくしの気分一つで生き死にが決まるのですよ?」

 口元は楽しそうに笑っているが、視線は冷ややかなジュリアを見て、リリスはゾッとした。

 「では、まず1つ目の質問ですわ。貴女はいつごろから牡丹妃様に憑りついていましたの?」

 「…」

 「…どうやら、まだご自身の立場がお分かりでないようですわね」

 ジュリアから視線を逸らし、口を開こうとしないリリスに、ジュリアは再び左手を掲げ、パチンと指を鳴らす――と同時に、リリスは顔を歪めて悲鳴を上げた。

 「そのまま反抗的な態度ばかり取っていますと、死んでしまいますわよ?」

 「ひぎっ!わ、分かったから、お願いっ!!」

 持続的に電流を浴びせられ、ついに観念したリリスを見て、ジュリアは左手をスッと下ろした。

 「では、答えて頂けますか?」

 「あ、あぁ。私がその女に憑りついたのは今日が初めてよ。ただ、以前より、ずっとその女とは取引をしていたけれどね」

 「取引?」

 「そうよ。2ヶ月くらい前からその小刀を通じて、その女と連絡を取り、ありとあらゆる知恵や、力を授けたわ。もちろん、『闇』のだけれど。そのおかげでその女の精神はどんどん蝕んでいき…と、いっても、元々性悪だったのだから、そう変わりはなかったけれど、まぁ、日が経つごとに私が付け入る隙がどんどん大きくなっていったわね。そして、その女の最大の望みであるあんたの排除と、あの女の抹殺を、手伝ってあげたのよ。その女、アイツの生まれ変わりだっていうのに、罪悪感とかかけらも持ち合わせていないんだもの。こんなに御しやすい人間は初めてだわ」

 憐れみと侮蔑を交わらせた視線をアイリスに向けるリリス。

 「成程。分かりました。では次に、今回の件に関与しているそちら側の陣営は貴女と、魔王だけですか?」

 「…そうよ。そもそも今回の事は私の独断で行ったことだもの。まさか魔王様までいらっしゃるなんて、私も思ってもみなかったわ」

 「あら。では、シノブさんを操っていたのは魔王ではなく、貴女ですのね」

 あんな登場の仕方をされたものだから、てっきり魔王がシノブを操っていたと思っていたのだが、どうやら違うようだ。

 「えぇ。その男には苦戦させられたから、特別に操って仲間殺させようとしたのよ。それでも、最後まで抗って命をとることまでは出来なかったけれどね」

 「そうでしたの…」

 『闇の力』に抗うのは『闇の魔力』や『光の魔力』を持っているジュリアやジュダル、エドワードであればそれに抗ったり、それを跳ね返したりすることは可能だが、何の免疫もない人間が、それも精神系の魔法に抗うのはかなり困難だ。それ相応の精神力を使うし、逆に寿命を縮めてしまうことにもなりかねない。何より、それだけの強さの『意志』を持つこと自体、ほとんどの人間は出来ないのだ。それ故、クリスティアナ達をを操られ傷つけはしたものの、最後の最後で踏ん張り殺すことはしなかったシノブにジュリアは心の中で感謝した。

 そしてすぐに気持ちを切り替え、再び厳しい表情でリリスを見る。

 「それでは次の質問に参りますわ。貴女は2000年前にも今回のように当時の牡丹妃様を操って当時の薔薇妃様を殺めたようですが、それは貴女の意志でしょうか、それとも魔王の意志ですか?」

 「っっ!」

 「…その表情、やはり貴女の独断でなされたことなのですわね」

 「そ、そうよ。…いいえ、違うわ。魔王様のご指示よ!」

 一度は肯定したものの、すぐに否定をするリリスにジュリアは首を傾げる。

 「何を、仰りたいのですか?」

 「元々この後宮に私を送り込んだのは魔王様よ。魔王様のご指示はあの小刀で王を殺すこと」

 確かに、エドワードに聞いた話では、エドモンド王と心中しようとしたケイティが、エドモンド王に刃を突き刺そうとした時、間に入って代わりに刃を受け、その結果当時の薔薇妃は命を落としたということだったが。

 「王と、その男によってあの時魔王様は封印されてしまった。でも、まだ初めの頃は魔王様と意志の疎通をとることが出来ていたわ。そして、魔王様は王を闇の力を纏わせた刃で貫けば、魔王様の封印は解けると仰り、魔王様の鏡を使って、ここに入り込むように仰られたのよ。」

 (そう言えば、エドモンド王と大賢者様が魔王を封印したという史実がありましたわね。あれはちょうどそのあたりの頃でしたのね)

 「そこで私は一番闇に染まりやすい女を見つけた。それが昔のその女よ。」

 リリスの指差す先にはアイリスが倒れている。

 「フィオナと王への愛憎に満ちていたあの女を操るのはたやすいことだったわ。でも、ふと思ったの。もし王を殺し、魔王様が復活なされた暁にはきっと魔王様はフィオナを再び奪いに来られる。そんなこと、私には耐えられなかったわ!だから、王を殺すと見せかけて、魔法で少しだけフィオナを動かし、フィオナを王の前に出して、その旨を刃で貫かせたのよ。魔王様の封印は、王もその男も不死身じゃないからいずれ死ぬでしょ?そうなったらすぐにじゃなくても封印は徐々に解けるはずと思ったのよ。まさか2000年もかかるとは思わなかったけれど。そして魔王様の封印が解けたときに、あの時の王と、フィオナが生まれ変わっているなんて!」

 心底悔しそうにギリッと奥歯を噛みしめるリリス。

 「まぁ、魔王様もフィオナを殺め、更にお前を殺めようとした私をとがめなかったのだから、案外魔王様もそこまでフィオナに執着していなかったのかもしれないわね」

 「…貴女、何もわかっていらっしゃらないのですわね」

 ため息をつき、憐みの視線をリリスに送るジュリア。

 「な、なんのこと?!」

 「…憐れですわね。何故、貴女が今まで、この妖精に守られた後宮で好き勝手出来たとお思いですの?確かに媒体さえあればある程度の力は使えるでしょうが、陛下を渡り合えるだけの力は使えるはずがありませんのよ?」

 「そ、それがなによ!」

 「まだお分かりにならないとは…ですから、貴女が好き勝手出来たのは全て、魔王の力添えがあったからですわ!きっと貴女に分からない様に力を送り込んでいたのでしょうね。そして、この後宮を守る妖精たちを封じ込めた。それは何故だと思いますか?」

 「何故って…」

 「全てはわたくしと接触するため。貴女が騒ぎを起こすことで陛下や大賢者様の気をそちらに向け、わたくしを攫おうとしたのですわ!貴女は魔王の手のひらの上で踊らされていたの過ぎませんのよ!」

 「そうだぞ!」

 ジュリアに同調し、ずいっと話に割り込んできたジュダルにジュリアは嫌悪感を顔面一杯に出した。

 「な、なんだよ、その顔は!俺はな、こいつの影が見え隠れしてきたくらいから、魔王がしようとしていることに気づいたんだよ。だからお前をこの騒動に関わらせないためにお前を後宮から追いだしたのに。あの法廷も俺の結界に守らせているし。媒体がなければ魔王だって入り込むのは困難なはずだ。それなのにお前はのこのことこんなところにまで乗り込んできやがった上に、俺の苦労も知らずに俺に感謝するどころか、なんだ、その顔は!」

 「なんだと言われましても、元からこの顔ですわ。大体、やることが回りくどすぎるのですよ。無駄にわたくしに隠そうとするからこのようなことになるのですわ。それに、わたくしは貴方に守られずとも、魔王の分身くらい追っ払えるだけの力をもっていますのよ」

 「お前、気づいていたのかっ!」

 驚きのあまり、目を丸くするジュダル。

 「えぇ。実物にお会いしたことはございませんが、ジュダル様とエドモンド王が2人がかりでも封印することしか出来なかった程の実力を持つ方が、あの程度の力しか出せないわけがございませんもの。」

 「確かに、分身じゃなく、本物の魔王が来ていたら、後宮どころか王宮まで破壊されていただろうな。でもな、俺はたとえ分身でもアイツがお前に近づくのは我慢ならん!」

 「その意見には私も同意だ。薔薇妃、悪いことは言わないから魔王には近づかない方がいい」

 ジュリアの背後からエドワードが声を掛けた。

 「勿論、言われずともそのつもりですわ。確かに魔王という存在は興味がそそられますが、わたくしに害を及ぼすのであれば話は別です。後宮を出た暁には、魔王とかかわらぬよう、慎ましく冒険者業に勤しみますわ…と、話を戻しますが、リリス。貴女はもう1つのある事実について、お気づきでしょうか」

 まだ自分の行動が魔王に意図せず操られていたことにショックを受けているのか、リリスの顔色は悪い。

 「な、んのこと?」

 「貴女、今自分の中に魔力が感じられるかしら?」

 「何を言って…え?そんな、まさか…何故!?」

 ようやく自分の状況に気づいたのか、ジュリアに答えを求めるような視線を向ける。そしその背後に浮かんでいる4人の妖精に気づいた。

 「どうやら貴女に見切りをつけた魔王が、封じていたこの後宮を守る妖精達を解放し、そして貴女に送り込んでいた魔力を自分に戻したようですわね。本来この妖精たちに守られている後宮は外部から側室対に害を成そうとしている者たちの力を封じるようになっていますもの。魔王の力が無くなった貴女の魔力は妖精たちによって完全に封じられたのですわ。そうですわよね、ウインド」

 「えぇ。その通りです。我々が不甲斐無いばかりにこの者たちの侵入を許してしまい、申し訳ございませんでした。我らは至急後宮を元に戻すように努めてまいります」

 ウインドはジュリアの目の前に浮かびながら深々と頭を垂れた。

 「えぇ。頼みますわ」

 その返事を合図に、妖精達は姿を消した。

 「さて、もう貴女に聞きたいことはありませんし。このまま野放しにしておいて再び命を狙われても困りますしね。そろそろ片を付けましょうか」

 「ま、待って!私を殺したらその男の心は永遠に壊れたままよ!この男に施した魔法は特別なのよ?!解いた本人にしか解けないようになっているわ!『闇の魔力』と『光の魔力』を同時に兼ね備えている者でもいない限り、私にしか解けない!」

 必死に訴えるリリスだが、ジュリアの表情は全く変わらない。

 「あら。そうでしたの。ですが、それはいらぬ心配ですわ。貴女以外にその魔法を解ける者はいますもの。仰りたいことはそれだけですか?」

 「え…だって、そんなはずは…。そ、そうだわ!勇者がどうなったのか、貴女知りたくはないの?!」

 最初の手がジュリアにとって何の意味を為さない事を知ったリリスはぐるぐると考えるそぶりを見せ、そして焦った表情でジュリアにそう言った。

 「勇者様、ですか。確かにわたくしの元婚約者ではありますが、さほど興味はございませんわね」 

 これは紛れもないジュリアの本心である。ライルに関してはその辺でのたれ死んでいようが、魔物に食い殺されようが、運よく生き延びて魔王城にたどり着いていようが、全く持って興味がない。

 「婚約者?何を言っているの?私が言っているのは、2000年前の勇者、イグニスのことよ!」

 「「!!?」」

 リリスのその言葉に驚きのリアクションを見せたのはジュリアではなく、エドワードとジュダルだ。

 「おい、お前、アイツの話をコイツにするな!」

 「その通りだ。その話は我らだけにしてもらおう」

 そう言ってジュリアの前に立つ2人。

 「ちょ、ちょっと待ってくださいまし。今リリスとの交渉権があるのはわたくしですわ。リリスを捕えているのはわたくしですもの。そのわたくしに断りもなく勝手に決めるのはやめて下さいまし!」

 そう2人に申し立てるが、2人は頑として動かない。

 「フフ。どうやらこの情報には興味があるようね。私はどちらと取引をしても構わないのよ。ただどちらにせよいくつかの条件を出させてもらうわ。それを叶える方と、私は取引をするわ…ぎゃああああ!!」

 打って変わって態度を変えたリリスにイラッとしたジュリアが指を鳴らし、リリスの全身にまた電流が走った。

 「何か勘違いをされていませんか?別にわたくしはどうしてもその話を聞きたいわけではありませんのよ?このまま貴女を殺してしまっても構わないと思っていますわ。言葉と態度にはお気を付け下さいまし」

 容赦ないジュリアに、リリスはコクコクと頷いた。

 「では、エドワード様、ジュダル様。貴方様方が一体何に脅えてわたくしにその話を聞かせたくないかは存じませんが、イグニス、と呼ばれる2000年前の勇者様のことはわたくしも多少なりとも存じていますわ。当時の薔薇妃様とイグニス様の仲も。」

 「なんだと?!それは本当か?」

 「何故、それを知っているんだ、薔薇妃!」

 「何故と言われましても…そのようなことはどうでもいいではありませんか。それより、お分かりいただけましたように、わたくしがその話を聞いても、何の問題もないと思いますわ。ですので、ここは引いていただけますでしょうか」

 こちらも引く気はないと、笑顔を見せるジュリアに、エドワードとジュダルは顔を見合わせ、観念したかのようにため息をつくと、両脇に避けてジュリアとリリスを向い合せた。

 「それでは、話して頂けますか?イグニス様がどうなったのかということを――」




 

 

 

 

 

更新が遅くなり申し訳ございませんでした。


正直に申しますと、久々に連載を再開した某漫画の復習をしていたがために、中々PCを開けずにいました(・・;)

本当に申し訳ないです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。