↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅楼夢  作者: 翡翠
第十六回 賈元春 才(さい)もて鳳藻宮(ほうそうきゅう)に選(せん)じ 秦鯨卿 夭(わか)くして黄泉路(よみじ)に逝(ゆ)く
325/333

第十六回 11

 平児や他(ほか)の丫鬟(じじょ)たちも賈璉の長旅(ながたび)の労(ろう)をねぎらい、拝礼(はいれい)し終(お)えると、茶(ちゃ)を差(さ)し出(だ)した。

「私が離(はな)れているあいだ家のことで何かなかったかな」

 そう賈璉は問(と)い、下人(めしつかい)の報(しら)せをとくと聞いていたが、

豊児がおずおずと進(すす)み出(で)、

「奶奶(わかおくさま)は璉の二爺(だんな)さまの留守中(るすちゅう)、栄府の家事(かじ)を捌(さば)かれたばかりか、寧府のことでも東奔西走(とうほんせいそう)のご尽力(じんりょく)……。……大変(たいへん)……お疲(つか)れの……ご様子(ようす)で……」

 と喘(あえ)ぐように、つぶやくように伝(つた)えると、賈璉はたった一言(ひとこと)、

「多謝(ありがとう)」

 と言った。

 熙鳳はそれを聞くと、さっと顔(かお)をあげ、まくしたてるように言った。

「私は大したことをしていませんよ。私ったら、世間知(せけんし)らずで、口下手(くちべた)で気性(きしょう)もまっすぐにできているでしょう? 棒(ぼう)っきれを渡(わた)されても針(はり)と言われれば信(しん)じてしまうくらいなんだもの。

 私が底(そこ)なしのお人好(ひとよ)しなのは知っているでしょう? ちょっと世辞(せじ)を言(い)われただけで、すぐに情(なさ)けをかけてしまうから。そのくせ大きなことを成(な)し遂(と)げたことはなし。胆力(たんりょく)だって小さいわ。

 ……少しでも太太(おくさま)のお具合(ぐあい)が悪(わる)くなると、すぐに眠(ねむ)れなくなるわ。私に家宰(かさい)なんて務(つと)まらないもの。何度もお断(おことわ)りしたわ。他の方をあててくださいって。でも、太太(おくさま)は許してくださらないの。それどころか、それを申(もう)し上げるたびに、

『あなたが楽(らく)をしたいだけでしょう? そう言うのなら、もっと家のことを習(なら)いなさい。もっと覚(おぼ)えなさい。』

そうおっしゃるのよ。私はいつだって冷(ひ)や汗(あせ)まじりにやっているっていうのに。一言(ひとこと)だって余計(よけい)なことは言えない。何一つ勝手(かって)はできないんだから」

熙鳳は賈璉を見やり、続(つづ)けた。

「あなたもよくご存(ぞん)じでしょう? この家をしきっている奶奶(わかおくさま)連中(れんちゅう)ときたら一筋縄(ひとすじなわ)ではいかないんだから。ほんの少しでも誤(あやま)りがあったら笑(わら)いものにされる。わずかでも偏(かたよ)りがあれば恨(うら)み言(ごと)を述(の)べる。俚言(りげん)にも言うでしょう?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。