第十六回 3
その日は寧栄両府の者たちが一堂に会していた。あちらでは酌を重ね、向こうでは笑いあい、賑やかなことこのうえなかった。
「二の老爺さま、生辰のお祝いを申し上げます」
誰かがうやうやしく頭を下げた。賈政は哄笑して言う。
「私もずいぶんと年かさになってしまいました。生まれてきた祝いを、こう盛大にしていただくとは幸せものだと思わなければなりませぬ」
「ささ、一献」
男は酒瓶を傾ける。
「やあ、これは」
賈政は盃を掲げようとした。そのときだった。
「六宮都太監の夏の老爺さまが勅旨を降されに参られました」
一挙に場がざわめく。賈政の盃から酒があふれた。
演台の芝居がぴたりと止まる。酒宴は水を打ったように静まった。
「香案を用意せよ! 二脚でも三脚でもいい。……むろん、香炉もだ!」
賈政は叫んだ。
「中門を開け! みな跪いてお迎えせよ!」
しばらくすると夏守忠が馬に乗って現れ、大勢の内監がつき従っている。
――詔を持たれていない?
賈政は少なからず狼狽したが、慌てて再び跪いた。
夏守忠は満面の笑みをたたえながら、軒先で馬から降り、賈政の寿辰の祝いの残滓が広がるなかを抜けていった。
守忠は広間の奥まで進むと、南面して立った。
「特旨である。ただちに賈政を参内させ、臨敬殿にて陛見せしめよ」
そう言い終えると、茶を飲む暇さえ惜しむように、すぐさま馬に乗って立ち去ってしまった。
門まで出て、見送った賈政は、
「更衣の支度をせよ」
と言い、足下の霜を踏みしめた。




