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紅楼夢  作者: 翡翠
第十五回 王鳳姐(おうほうしゃ) 権(けん)を鉄檻寺(てっかんじ)に弄(ろう)し、秦鯨卿(しんげいけい)、趣(おもむき)を饅頭庵(まんとうあん)に得(う)。
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第十五回 2

 水溶は宝玉の手を取りながら、

「おいくつですか。何を学ばれていますか?」

 と尋(たず)ねた。宝玉は水溶が語りかけるように問(と)うのに、一つ一つ丁寧(ていねい)に疎漏(そろう)なく答えた。

 水溶もそれに相槌(あいづち)をうつように首を振(ふ)りながら微笑(ほほえ)んだ。

「ご令息(れいそく)はまさに龍駒(りゅうく)鳳雛(ほうすう)。小王(わたくし)なぞが世翁(せおう)の御前(ごぜん)で軽(かる)々しく申し上げることではないかもしれませんが、ご令息(ごれいそく)は将来(しょうらい)、『凰(おおとり)の雛(ひな)の声(こえ)は老鳳(ろうほう)より清し』ということになるかもしれませんね」

 賈政は笑みをたたえながら答えた。

「犬子(せがれ)にはそのようなお褒(ほ)めの言葉(ことば)は過分(かぶん)にございます。しかしながら、もし藩王家(はんおうけ)の余徳(よとく)にあずかり、仰せのようになれましたら幸甚(こうじん)にございます」

 水溶は姿勢(しせい)をあらためて言った。

「ただ一つお伝えしておきたいことがあります。ご令息(れいそく)ほどのご器量(きりょう)であれば、老太夫人(おおおくさま)や太夫人(おくさま)はこの上ないほど可愛(かわい)がっておられることでしょう。ですが、吾輩(わたくし)ども後生(わかもの)は何ごとにおいても、深(ふか)く溺(おぼ)れると学業(がくぎょう)をおろそかにしてしまうものです」

 宝玉はふっと目をそらす。

「かつて小王(わたくし)も同じ轍(てつ)を踏(ふ)みました。ご令息(れいそく)もまたそうならないとは言えないでしょう。もし、より学問(がくもん)を深(ふか)めようと思われるなら、どうぞ遠慮(えんりょ)なく拙宅(せったく)へお越(こ)しください。小王(わたくし)は不才(ふさい)でありますが、ありがたいことに四海(しかい)の名士(めいし)が足を運んでくださいます。そのため、私のもとには高名(こうめい)な方々が多く集(つど)っております。ご令息(れいそく)もぜひ談論(だんろん)に加(くわ)わってください。きっと学問(がくもん)も日(ひ)々進歩(しんぽ)することでしょう」

 賈政は身を深(ふか)くかがめ、ありがたく承(うけたまわ)った。

 水溶はおもむろに腕(うで)につけていた念珠(ねんじゅ)を外(はず)すと、宝玉に差し出して言った。

「せっかく初(はじ)めてお会(あ)いしたのですが、急(きゅう)なことゆえご令息(れいそく)への敬賀(けいが)の品(しな)の持ち合わせがありません。ぜひ先日、聖上(おかみ)よりじきじきに賜(たまわ)った鶺鴒香(せきれいこう)の念珠(ねんじゅ)をよき日のお祝いのしるしとしてお納(おさ)めください」


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