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紅楼夢  作者: 翡翠
第十四回 林如海 揚州城に捐館(えんかん)し、賈宝玉 路(みち)に北静王(ほくせいおう)へ謁(えっ)す
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第十四回 21

「申(もう)し上げます」

 葬列(そうれつ)が去(さ)ったあと、背中(せなか)から野太(のぶと)い声が響(ひび)いた。

 賈蓉が振(ふ)り返(かえ)るとなじみの家人(けらい)が片膝(かたひざ)をついていた。

「そんなにかしこまらなくていいよ」

 賈蓉は苦笑(くしょう)する。

「賓客(ひんきゃく)の御名(おんな)を述(の)べねばなりませぬゆえ」

「そうか」

 賈蓉は肩(かた)をすくめる。

「教(おし)えてくれるかな?」

 家人(けらい)は、はっ、と短(みじか)く言い、

「鎮国公(ちんこくこう)・牛清様(ぎゅうせいさま)が御孫(おんまご)、現一等伯(げんいっとうはく)、牛継宗様(ぎゅうけいそうさま)。 理国公(りこくこう)・柳彪(りゅうひょう)様(さま)が御孫(おんまご)、現一等子(げんいっとうし)の柳芳様(りゅうほうさま)。斉国公陳翼様(せいこくこうちんよくさま)が御孫(おんまご)で、世襲三品威鎮将軍(せしゅうさんひんいちんしょうぐん)の陳瑞文(ちんずいぶん)様。治国公(ちこくこう)・馬魁(ばかい)様が御孫(おんまご)、世襲三品威遠将軍(せしゅうさんひんいおんしょうぐん)の馬尚(ばしょう)様。修国公(しゅうこくこう)侯明(こうめい)様が御孫(おんまご)、世襲一等子(せしゅういっとうし)の侯孝康(こうこうこう)様」

 家人(けらい)がそう高(たか)々とのたまうのに賈蓉はほくそ笑(え)んでいた。

「何か粗相(そそう)がありましたでしょうか?」

 家人(けらい)が怪訝(けげん)そうに聞いたが、賈蓉はそれに答(こた)えず。

「奇瑞(きずい)だ」

 とのみ言った。

「は?」

「だが、惜(お)しいな。戌(いぬ)と亥(い)だけが足(た)りない」

 家人(けらい)が主(あるじ)の心中(しんちゅう)をはかりかねて頭(あたま)を抱(かか)えていると、

「気にしなくていいよ。蓉さんの悪(わる)い癖(くせ)だ」

 賈蘭が眉(まゆ)を顰(ひそ)めた。家人(けらい)はぽかんと口を開けている。

「こんなときにくだらないことを……。そもそも繕国公家(ぜんこくこうけ)の石光珠(せきこうしゅ)様は喪中(もちゅう)ではありませんか!」

「何を言っているの?」

 李紈(りがん)は賈蘭の耳もとでささやく。

「十二支(じゅうにし)ですよ。詮無(せんな)いことです」

 李紈(りがん)はなおも尋(たず)ねようとしたが、賈蘭は話そうとしなかった。

「……続(つづ)けて」

 賈蓉は静(しず)かに言った。家人(けらい)は滔(とうとう)々と名を伝える。

「平原侯(へいげんこう)の御孫(おんまご)、世襲二等男(せしゅうにとうだん)の蔣子寧(しょうしねい)様。定城侯(ていじょうこう)が御孫(おんまご)、世襲二等男兼京営遊撃(せしゅうにとうだんけんきょうえいゆうげき)の謝鯨(しゃげい)様。襄陽侯(じょうようこう)が御孫(おんまご)、世襲二等男(せしゅうにとうだん)の戚建輝(いけんき)様。景田侯家(けいでんこうけ)の五城兵馬司(ごじょうへいばし)の裘良(きゅうりょう)様。錦郷侯家(きんきょうこうけ)の公子韓奇(こうしかんき)様」

「あとはどなたかいるかい?」

 家人(けらい)はうなずく。

「神威将軍家(しんいしょうぐんけ)の公子(こうし)馮紫英(ふうしえい)様、そして衛若蘭(えいじゃくらん)様」

「ああ、大侠(たいきょう)の若君(わかぎみ)と海内(かいだい)でも指折(ゆびおり)りの弓(ゆみ)の名手(めいしゅ)じゃないか」

「あとは……」

 賈蓉は家人(けらい)を制(せい)した。

「その先(さき)はいいよ。郡王(ぐんおう)の御名(おんな)くらい僕(ぼく)だって知っている」


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