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紅楼夢  作者: 翡翠
第十四回 林如海 揚州城に捐館(えんかん)し、賈宝玉 路(みち)に北静王(ほくせいおう)へ謁(えっ)す
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第十四回 17

 賈珍は翌朝(よくあさ)、ようやく城(しろ)の門(もん)をくぐり、すぐに出棺(しゅっかん)の支度(したく)へ取(と)りかかった。先に人を鉄檻寺(てっかんじ)へ遣(や)り、箒(ほうき)で床(ゆか)を掃(は)き、柱(はしら)を磨(みが)かせるなど、夜(よ)を徹(てっ)して霊(れい)を安置(あんち)する場(ば)を整(ととの)えるとともに、厨(くりや)や茶(ちゃ)の支度(したく)など、霊(れい)を迎(むか)える人々の設(しつら)えも整(ととの)えさせた。


「寧府は今蜂(いまはち)の巣(す)をつついたような騒(さわ)ぎだとか。寧府の家人(けらい)たちも大変(たいへん)のようですわね」

 豊児がぽつりとつぶやくのに、平児は横(よこ)から豊児の頬(ほほ)をつねった。豊児はつねづねかの通房丫頭(つうぼうあとう)を敬(けい)していたが、このときばかりは平児を睨(ね)めつけずにはいられなかった。

 平児は何も言わずに、そっと卓子(つくえ)の方に目をやる。そこにはいつものごとく彩明が侍(はべ)り、熙鳳と話しこんでいた。

「私も今、文(ふみ)を書(か)いているところなの。あなたみたいな子どもの噂話(うわさばなし)を聞いている暇(ひま)はこの房(へや)にはないのよ」

 平児が手を動(うご)かしながら言うと、豊児は身(み)を縮(ちぢ)こめた。

「申(もう)し訳(わけ)ございません。……姐姐(おねえさま)は今どこに文(ふみ)を書かれているのですか?」

 平児は手を止めてため息(いき)をつく。

「奶奶(わかおくさま)の哥哥(おにいさま)が南方(なんぽう)へ戻(もど)られるので、奶奶(わかおくさま)のご家族(かぞく)へ文を書(か)いているのよ」

 平児はさらに指(ゆび)を折(お)る。

「繕国公(ぜんこくこう)のご夫人(ふじん)が亡(な)くなられたので、二の太太(おくさま)と一の太太(おくさま)が葬礼(そうれい)に赴(おもむ)かれるの」

豊児はとっさに王夫人と邢夫人の顔を思い浮(う)かべる。

「奶奶(わかおくさま)はそれを話しておられる最中(さなか)、それでいて二の奶奶(わかおくさま)ご自身(じしん)は寧府の奶奶(わかおくさま)の葬儀(そうぎ)にご出席(しゅっせき)されないといけないでしょう? 車や轎(かご)の手配(てはい)、宿所(しゅくしょ)も決めないといけない。それだけじゃないわ。まだまだあるのよ」

 平児は三本、四本と指を折(お)ってみせる。豊児は口をつぐんだ。


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