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紅楼夢  作者: 翡翠
第十四回 林如海 揚州城に捐館(えんかん)し、賈宝玉 路(みち)に北静王(ほくせいおう)へ謁(えっ)す
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第十四回 11

 熙鳳が再(ふたた)び口を開(ひら)こうとしたとたん、栄国府の執事(しつじ)四人が入ってきた。

「奶奶(わかおくさま)、こちらの受(う)け出(だ)しをお願いします」

 と言って執事(しつじ)たちは書き付けを渡(わた)す。熙鳳は書き付けを出させ、読み上げさせた。

「全部(ぜんぶ)で四件(よんけん)ね……」

 熙鳳は眉(まゆ)を顰(ひそ)める。

「これとこれは額(がく)に誤(あやま)りがあるわ。もう一度(いちど)きちんと算(かぞ)えておいで」

 そう言うなり、二枚(にまい)の書(か)きつけを投(な)げ出した。二人の執事(しつじ)はしょぼくれながら帰(かえ)っていった。

「で、あなたは何?」

 張材(ちょうざい)のおかみは書き付けを渡(わた)しながら答(こた)えた。

「先(さき)ほどお伝(つた)えした車や轎(かご)の覆(おお)いができましたので、裁縫職人(さいほうしょくにん)への工賃(こうちん)を受け取りにあがりました」

 熙鳳は書き付けを受け取り、彩明にそれを記(しる)させてから言った。

「この件(けん)の買辦(ばいべん)はいる?」

 群衆(ぐんしゅう)のなかで一人がおずおずと手を挙(あ)げる。

「私が買(か)い付けに参(まい)りました」

「回押(かいおう)は?」

「ここに」

 買辦(ばいべん)の役(やく)の者(もの)は紙片(しへん)を彩明に渡(わた)した。

 熙鳳は彩明が読み上げるのを聞きながら、

「なるほど、合っているわね」

 とつぶやいた。張材の妻にも受け取りに行くよう命(めい)じ、彩明の方を向く。

「もう一件(いっけん)あったわよね」

 彩明はうなずく。

「宝玉さまの外書房(がいしょぼう)が出来上(できあ)がったため、表装(ひょうそう)の紙(かみ)や糊(のり)の費(つい)えを……」

「分かったわ。それも書いておきなさい」

 彩明はうなずく。

 そして張材の妻の件がきちんと清算(せいさん)されるのを待(ま)って、あらためて対牌(たいはい)を渡(わた)し、その件(けん)を願(ねが)い出(で)た者に受(う)け取(と)りにいかせた。


 熙鳳は一通(ひととお)り終(お)えてしまうとつぶやくように言った。

「……さあ、あなたね」

 班玉はたちまち青(あお)くなる。

「あなたを許(ゆる)すつもりではいたのよ」

 班玉はおそるおそる顔をあげた。

「でも、それをすると、明日(あす)になればあちらも眠(ねむ)りこけていた。明後日(あさって)になればこちらも眠(ねむ)りこけていたということになるでしょう。初(はじ)めに甘(あま)くしてしまったら、私もまとめるのは難(むずか)しくなるわ」

 そう言(い)い終(お)えると、屈強な男たちが二人あらわれ、両側(りょうがわ)から班玉を抱(かか)えた。

「打(う)ち据(す)え二十回! 連(つ)れて行(い)きなさい!」

 そう命(めい)じると、抱廈(ほうか)の外から鈍(にぶ)い音(おと)が響(ひび)き、班玉のうめき声(ごえ)がそれに続(つづ)いた。


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