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紅楼夢  作者: 翡翠
第十四回 林如海 揚州城に捐館(えんかん)し、賈宝玉 路(みち)に北静王(ほくせいおう)へ謁(えっ)す
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第十四回 10

 熙鳳はその弁明(べんめい)には耳(みみ)を貸(か)さず、戸口(とぐち)で小さくなっていた女に呼びかけた。

「何(なん)の用(よう)?」

 王興の妻はこれ幸(さいわ)いと急(いそ)いで中に入って言った。

「対牌(たいはい)をいただきに参りました。網絡(もうらく)のための糸を受(う)けだしていただきたいのですが」

 王興の妻が差(さ)し出した書き付けを見ながら、熙鳳は眉(まゆ)をひそめた。

「彩明、読(よ)んでちょうだい」

 彩明は声をあげて読み上げた。

「大轎(おおかご)が二つ、小轎(しょうかご)が四つ。車が四両(よんりょう)。それを飾(かざ)るための絡子(らくし)、珠飾(たまかざ)りの糸(いと)は……」

 王熙鳳はそれを聞き取り、帳簿(ちょうぼ)と合っているのを確(たし)かめると、彩明に記帳(きちょう)させた。

 それが終わると、栄府の対牌(たいはい)を取り上げて、放(ほう)り投(な)げるように渡(わた)した。

 王興の妻はそれをうやうやしく受(う)け取(と)ると、そのままさがった。

 寧府の丫鬟(じじょ)たちは熙鳳に聞こえぬようにささやきあった。

「私たちはまだ丁重(ていちょう)に扱(あつか)われているほうなのだわ」

「あんな仕打(しう)ち、日々堪(た)えないといけないなんて……」

 王興の妻は抱廈(ほうか)から離(はな)れてしまうとつぶやいた。

「よかったわ。騒(さわ)ぎになるまえにお伝(つた)えできて。寧府の連中(れんちゅう)もじきに思い知(し)るでしょう」


 

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