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紅楼夢  作者: 翡翠
第十四回 林如海 揚州城に捐館(えんかん)し、賈宝玉 路(みち)に北静王(ほくせいおう)へ謁(えっ)す
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第十四回 9

 庭(にわ)には多(おお)くの小者(こもの)たちが手(て)を垂(た)れて控(ひか)え、紙銭(しせん)を焼(や)くために伺候(しこう)していた。

「茶(ちゃ)を供(そな)え、紙(かみ)を焼(や)きなさい」

 と熙鳳が一声(ひとこえ)命(めい)じるや、銅鑼(どら)が打(う)ち鳴(な)らされ、諸楽(しょがく)が奏(かな)でられた。

 やがて大きな丸椅子(まるいす)が霊前(れいぜん)に運(はこ)ばれてきた。熙鳳はそこに腰(こし)を下(お)ろし、声を上げて哭(な)き始めた。熙鳳が哭(な)くと、内外(ないがい)の男女もあわてて泣(な)き声(ごえ)をあげた。豊児は熙鳳のそばに控(ひか)えていたが、うまく泣(な)くことができず、熙鳳から睨(ね)めつけられるはめになった。熙鳳と豊児のあわいに涼風(りょうふう)が通(とお)り抜(ぬ)けていった。


 しばらくすると、賈珍と尤氏が人を遣(や)って熙鳳を慰(なぐさ)めさせた。ようよう熙鳳は泣(な)き止(や)み、参列者(さんれつしゃ)に一礼(いちれい)した。

「皆(みな)さま、今日はいたらぬ取(と)り仕切(しき)り失礼(しつれい)いたしました。故人(こじん)もきっと……」

 そんなふうにひとしきり口上(こうじょう)を述(の)べると、抱廈(ほうか)へ入っていった。

 書きつけておいた名簿(めいぼ)を見やりながら、点呼(てんこ)をしてゆく。

「あら」

 熙鳳は眉(まゆ)をあげた。

「班玉の姿(すがた)が見えないわね」

 一同(いちどう)はにわかにざわめいた。

「早(はや)く呼(よ)んできなさい」

 そう叱責(しっせき)したが、みな慌(あわ)てふためくばかりでその場(ば)を動(うご)こうとしない。

「早(はや)く呼(よ)んできなさい!」

 もう一度叫(いちどさけ)ぶと、ようやく一人が抱廈(ほうか)から走(はし)り去(さ)っていった。

 班玉は顔を青(あお)くさせ、熙鳳の前に震(ふる)えていた。

「人数(にんずう)が足りないと思ったらあなただったのね。あなたは寧府(ここ)では偉(えら)いお方(かた)だから、私(わたし)なんかに従(したが)うはずがないわよね」

 班玉は慌(あわ)てて答(こた)えた。

「滅相(めっそう)もございません。小人(わたくし)はいつも早(はや)く参(まい)っているのですが、今日に限(かぎ)って早くに目が覚(さ)めてしまい、また眠(ねむ)り込(こ)んでしまいました。奶奶(わかおくさま)、なにとぞどうかお許(ゆる)しください」


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