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紅楼夢  作者: 翡翠
第十四回 林如海 揚州城に捐館(えんかん)し、賈宝玉 路(みち)に北静王(ほくせいおう)へ謁(えっ)す
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第十四回 4

 ようやく家人(かじん)は半数(はんすう)ほどになった。

「さあ、そこの四人。あなたたちは内(おく)の茶房(さぼう)を受(う)け持(も)って。茶碗(ちゃわん)や皿(さら)、茶器(ちゃき)を預(あず)かるのよ」

 かの四人は「はい」と応(いら)えをする。

「どうやら寧府(ここ)では物(もの)が無(な)くなることが多(おお)いらしいけれど、まさかあなたたちはそんなことをしないわよね」

 そう言いながら熙鳳が四人を舐(な)めるように見ると、

「……はい」

 とくぐもるように言った。

「そちらの四人は宴(うたげ)の器(うつわ)を預(あず)かりなさい。一つでも失くしたら自身(じしん)で贖(あがな)うのよ」

 熙鳳はくるりと後ろを向く。

「そちらの八人。祭礼(さいれい)の品々を受け取って、きちんと報(しら)せること」

 熙鳳は彼らがうなずいたのを見ると、別(べつ)の八人に、

「あなたたち八人は各所(かくしょ)の灯(ひ)の油(あぶら)、蝋燭(ろうそく)、紙箚(しさつ)の数(かず)を守(も)りなさい」

「あの……」

 八人のうちの一人がおずおずと手をあげる。

「紙箚(しさつ)は車(くるま)や馬(うま)や楼船(ろうせん)などいろいろな形(かたち)があるでございましょう? それをどのようにお預(あず)かりすればいいか……」

 熙鳳はきっぱりと言う。

「心配(しんぱい)しなくていいわ。私からあなたたちに一まとめで渡(わた)すから。あなたたちはそれをただ配(くば)ればいいの。数(かず)もいちいち教(おし)えてあげる」

 問(と)うた者(もの)は、

「はあ……」

 と一言つぶやいてさがっていった。

「そこの三十人」

 王熙鳳が呼(よ)んだ。

「あなたたちは交代で夜番(やばん)をし、門戸(もんこ)の見張(みは)り、火(ひ)の番(ばん)、掃除(そうじ)をしなさい」

 言(い)い終(お)えると、抱廈(ほうか)にはまばらに家人(かじん)が残(のこ)った。

「あの……、私たちは」

 そう言いかけるのをさえぎって、

「慌(あわ)てないの。あなたたちは楼(ろう)ごとに割(わ)り振(ふ)るから。卓子(つくえ)や椅子(いす)、骨董(こっとう)はもちろん、痰壺(たんつぼ)や箒(ほうき)一本(いっぽん)まで見逃(みのが)さないことね」

 一同は唾(つば)を呑(の)みこむ。

「いいこと? 草一本(くさいっぽん)、苗一(なえひと)つ、それだけでも無(な)くなったり、壊(こわ)れたりしたら承知(しょうち)しないわ。そこを守(も)っていた者(もの)に贖(あがな)わせるから」

 残(のこ)りの者(もの)たちも去(さ)ってしまうと、ぼんやりとした日溜(ひだ)りと熙鳳、彩明、そして来昇の妻(つま)だけが残(のこ)った。

「最後(さいご)はあなたね」

 熙鳳は静(しず)かに言った。


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