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紅楼夢  作者: 翡翠
第十四回 林如海 揚州城に捐館(えんかん)し、賈宝玉 路(みち)に北静王(ほくせいおう)へ謁(えっ)す
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第十四回 3

「私は任(まか)されたのよ。恨(うら)みを買(か)うことなんて気にしちゃいられないわ。私は寧府(そちら)の奶奶(わかおくさま)みたいに、なされるがままにされるほどお人好(ひとよし)しじゃないわよ。

 これからは『寧府(ここ)ではもともとこうだったのに』なんて言(い)い訳(わけ)は通(つう)じないわ。今後(こんご)はすべて私(わたし)のやり方にしたがってもらうわよ。私に逆(さか)らったらただでは済(す)まないことよ。少しでも私に違(たが)えたら、内(うち)々で顔が利(き)くかどうかなんて関係(かんけい)ない。きっちり白黒(しろくろ)つけてあげるから」

 そう言い終えると、きっ、と窓(まど)の外(そと)を睨(にら)んだ。

「班玉(はんぎょく)! そこにいるわね」

「は、はい!」

 群衆(ぐんしゅう)の陰(かげ)に身を小さくしていたまだ衣冠(いかん)も済ませていない童児(どうじ)が慌(あわ)てて返事(へんじ)をする。

「こちらへ来なさい。ゆっくり話を聞いてあげるわ」

 彩明は花名冊(かめいさつ)を片手(かたて)に班玉を暗(くら)がりへ導(みちび)いていった。


 すべての面会(めんかい)がおわると、山の端(は)にはつらつらと日(ひ)が昇(のぼ)っていた。

 ようやく終(お)わったと、家人(かじん)たちが安心(あんしん)したのもつかの間(ま)、彩明が再(ふたた)び一人、また一人と名を呼(よ)び始めた。

 群衆(ぐんしゅう)はまた口々にざわめく。

「二十人(にじゅうにん)だ」

 ある者(もの)が指(ゆび)を折(お)りながら言った。

「この二十人はいったい……」

 熙鳳が咳払(せきばら)いをする。

「静(しず)かに!」

 皆(みな)は直立(ちょくりつ)する。

「この二十人は二組に分かれなさい。一組(ひとくみ)は十人ずつよ。日々、客人(きゃくじん)に茶(ちゃ)を出すだけでいいわ。他のことには手出(てだ)し無用(むよう)」

 呼(よ)ばれた二十名はぼうっとしたままつっ立っている。

「どうしたの? 早く行きなさい」

 そう言われて、かの二十人は方々に散(ち)り散(ぢ)りになっていく。

「次の二十人、前へ!」

 熙鳳はそう命(めい)ずると、

「この二十人も二組(ふたくみ)に分かれなさい。あなたたちは親戚(しんせき)方に茶飯(さはん)をお出しするの。他のことには手を出さなくていいわ」

 二十人は拝手(はいしゅ)すると下がっていった。

「次の四十人! あなたたちも二つに分かれ、霊前(れいぜん)で香(こう)を焚(た)き、油(あぶら)の継(つ)ぎ足(た)しをし、幕(まく)を掛(か)け。通夜(つや)の番(ばん)をし、供飯(くはん)や茶を供(そな)えなさい。泣(な)く声(こえ)がしたら、あなたたちも泣くのよ。それだけ。他のことには手を出さない。いいわね」


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