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紅楼夢  作者: 翡翠
翻案意図(第一回~第十三回)
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第十回

 まず第十回の考察こうさつに入る前に第九回の状況じょうきょう整理せいりしたい。宝玉たちが来るまえ、すでに義塾ぎじゅく混乱こんらんをきわめていた。代儒は自分のまごであるということで、能力のうりょくの足りない賈瑞を代理だいりに立て、秦鐘と金栄のいざこざが起き、賈薔かしょうが一計を講じるが、宝玉が儒学じゅがくれい論理ろんりにしたがって金栄を屈服くっぷくさせる。しかし、これは一方的な支配しはいであって、金栄側きんえいがわ考慮こうりょしていない。当人とうにん自覚じかくはないのだろうが、そのじゅ手法しゅほうもちいるのがそれにもっとも反発はんぱつする宝玉であるのが面白おもしろい。

 すなわち権勢けんせい権力けんりょく依存いぞんするじゅ十分じゅうぶん理解りかいもないままそれをまわせば、それはぼうちかづく、ということわりがおぼろげに見えてくる。

 それを前提ぜんていとして第十回では張友士ちょうゆうしという権力けんりょく構造こうぞうからはなれたじゅ姿すがたえがかれる。


 では、冒頭ぼうとうからみていこう。

 まず、金栄の家庭状況かていじょうきょうがつぶさにえがかれる。彼の家はまずしく、金栄は義塾ぎじゅく不満ふまんべるけれども、母親ははおや飯代めしだいのために義塾ぎじゅくに行くように懇願こんがんする。前回ぜんかい義塾ぎじゅくというせまじゅ社会しゃかい隷属者れいぞくしゃであった彼がその構造こうぞうたすけられていることがあきらかにされる。

だが、その埒外らちがいにある賈璜かこうつまおいの扱いにいきどおおぼえる。


 彼女の登場とうじょうの前に、私は秦氏と秦鐘、宝珠のエピソードをいた。尤氏からこのあたりのことは語られるが、せりふの中ではどうしても説明的せつめいてきになってしまう。

 宝珠を先に出しておきたい都合つごうもあり、秦氏と秦鐘の場面をえがいた。秦氏の秦鐘に対する態度たいどは、姉と弟というには強すぎる。“じょう”の権化ごんげのような彼女からすれば弟の秦鐘に”“をくのは不自然ふしぜんだ。だが、もし親子おやこなら……というのが私の秦氏・秦鐘親子説しんしょうおやこせつ根拠こんきょの一つになっている。ここに賈蓉も陪席ばいせきさせ、後の軋轢あつれき伏線ふくせんとした。


 賈璜かこうつまは秦鐘や秦氏にいきどおりながら寧府におもむく。彼女は夫が嫡派ちゃくはだ、ということにほこりをもっており、根底こんていに秦氏たちに対するさげすみがあったのだろう。原文ではそこからどうやって秦氏への思いが変質へんしつしたのか明らかにされていない。翻案ほんあんでは「おめでた、あるいはやまい」と聞かされた賈璜かこうつまが秦氏と自分を重ねたことにした。

 ここから名医のごえたか張友士ちょうゆうしを呼ぶ運びとなるのだが、友士も紹介者しょうかいしゃであり、侠客きょうかくふうがある馮紫英ふうしえい権力けんりょく権勢けんせいの外にいる。だからこそ張友士は寧府の名帖めいじょう拒否きょひし、馮紫英の方も賈珍の個人的こじんてきなおねがいとしてとどめるのだ。

 また、ここでは賈珍と賈敬の父子ふし確執かくしつえがかれる。あくまで俗世ぞくせまろうとしない賈敬と、どうしても彼の誕生日たんじょうびいわいたい賈珍とでせめぎあいが行われる。ただ、ここで賈珍は虚栄きょえいのためだけに賈敬をいわおうとしているとは思えない。じょう非情ひじょう対立たいりつが寧府の禍根かこん根源こんげんにあるとここでまずしめされる。

 張友士はみなもときゅうすという表題ひょうだいの通り、張友士は秦氏の診察しんさつにかこつけて、寧府の病巣びょうそうをあきらかにしていく。その彼の問いにこたえることができるのは賈蓉であり、一人のお付きの者だけだった。

 第十回では前回のながれをいで、権力けんりょく埒外らちがいにいる儒者じゅしゃであれば、権力けんりょく腐敗ふはい解消かいしょうできるのかといういがしめされ、権力側けんりょくがわにも、市井しせいがわにも理解りかいしてもらえる人々がいたとしても、権力構造けんりょくこうぞうを変えるのは困難こんなんであるという現実げんじつ提示ていじされた。それならばじょうであればどうか? それこそが次回のテーマとなってくる。


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