表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅楼夢  作者: 翡翠
翻案意図(第一回~第十三回)
254/260

第五回

 第五回は栄府、寧府の紅塵うきよの場面と、太虚幻境たいきょげんきょうの場面に分けられる。


1.栄府

 まず着目ちゃくもくしてほしいのは、黛玉が賈母おばあさまのお気に入りになったことだ。だが、本当に気にしないといけないのは、そのことそのものではなく、迎春、探春、惜春の三人がなか排斥はいせきされたことである。

 賈母おばあさまには悪気わるぎがない。黛玉が身寄みよりのないことをあわれんで、びいきをしたのだと思われる。

 ただし、彼女たち三春さんしゅん心情しんじょうはいかばかりかはか必要ひつようはある。ことに、めかけの子である探春はどう思ったことだろう。

賈母おばあさまに気に入られるかどうかの非常ひじょうに大きい。かえすが賈母おばあさま三春さんしゅん排斥はいせきする意志いしはなかったはずだ。それでも“じょう”のもたらす部分ぶぶんはここで鮮明せんめいえがかれている。

 ここにおいて薛宝釵が登場とうじょうし、家中かちゅう人望じんぼうをさらってゆく。黛玉においてはそれにたいして多少たしょうねたみはあったはずだが、それ以上いじょうに「家中かちゅうの人々がこれほどまでに宝釵をしたっているのなら、宝玉はどう思っているだろう?」と思ったにちがいない。

 この宝玉と黛玉の間隙かんげきが宝玉をまどわせ、寧府でのできごと、そして太虚幻境たいきょげんきょうへとつながっていく。


2.寧府

 寧府の秦氏の居室きょしつかうさい、宝玉はばあやにたしなめられる。つまり、わずか十ばかりの身空みそらでありながら、あん不貞ふていと見られる行為こういをしないようにとくぎをさされたわけである。

さらに注視ちゅうしすべきは秦氏がそれを容易よういけ入れてしまうことだ。これは貞操観念ていそうかんねんがないという単純たんじゅん指摘してきではなくて、あくまで秦氏は“じょうの人”だということだ。

 また、秦氏の部屋へやにある調度ちょうどはほぼ帝王ていおう象徴しょうちょうしている。これらがただの一豪族いちごうぞくぎない賈家にあることで彼女の高貴こうき出自しゅつじ暗示あんじされている。


3.太虚幻境たいきょげんきょう

 ここからゆめへ、太虚幻境たいきょげんきょうへと入っていくわけだが、ここで宝玉は「古今ここんじょう」、「風月ふうげつさい」への興味きょうみを持ってしまう。

 そのうえで宝玉は警幻仙姑けいげんせんしに「意淫いいんの人」という烙印らくいんを押されてしまうわけだが、ここでの意淫いいんはそれほどわる意味いみではないと思われる。私のかんじたかぎりでは、「男女に対するせいにもにもれるプラトニックなじょう」と大づかみにとらえておけばいいだろう。

さて、ここに出てくる秦可卿のあつかいだが、作者のおさないころにあこがれた女性じょせい反映はんえいされていると予測よそくしている。脂評しひょうによって秦氏にモデルがいたことはほぼ確実かくじつであり、おさなきときの作者にとって、秦可卿のモデルとなった人物は理想りそう女性じょせいだったのだろう。だが、年月をるにつれて秦可卿は変質へんしつし、史実しじつをもとにしたであろう第十三回の悲劇ひげきへとつながってくる。秦可卿が秦氏の幼名ようみょうであることがその証左しょうさであり、本文中にも“秦可卿”とはここと数か所にしか書かれていない。あとの表記は統一して“秦氏”である。


 第五回で重要なものは判詞はんしだろうが、物語ものがたり趨勢すうせいにかかわってくるため、ここでは詳述しょうじゅつしない。ただ、この第五回の物語全体ものがたりぜんたいを通じても白眉はくびである。うらかえせば、その他のはいくつかをのぞいてそれほどいいとは思えない。ただし、これは文章ぶんしょうてるためのエッセンスとして意図的いとてきに行っていると思われ、くだしのみ行い、意味いみが必要となる詩以外しいがい現代語訳げんだいごやくしていない。また、判詞はんし各人物かくじんぶつ結末けつまつが決まり次第しだい再掲さいけいやくすることとした。


 さて、第五回では紅楼夢の要素ようそが出そろい、これからの結末けつまつ予言よげんされた。このまとまった状態じょうたいをくつがえしていくのが第六回となる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ