第十一回 22
賈母は腕を組みながらうなった。
「私たち三人、わざわざ人を遣って見舞いに行かせたんだがねえ……」
熙鳳がため息をつく。
「良くもならず、悪くもならず」
王夫人は賈母をなだめるように言った。
「こういう病は大きな季の節までに悪くならなければ、望みは大きいものですわ。すでに冬至は越えましたもの」
「おまえたち二人もこれまで仲良く過ごしてきたろう? 折りしも明日は元日、明日を越えたら様子を見て来ておくれ。ほんの少しでも良くなっていたら私に知らせるように。私もほっとできるから」
熙鳳は深くうなずいた。
「そうそう。あの子が好きな物を作らせて持って行っておやりね」
二日の朝、朝食を終えると、熙鳳は寧府へと向かった。
「思ったより悪くはなさそうじゃないの」
熙鳳はそう言って笑った。秦氏も微笑みを返す。
ことさら病が重くなった風ではない。だが、顔も腕もすっかり肉が落ち、見るからにやつれていた。
一人の小丫鬟が心配そうにこちらをうかがっていた。
熙鳳は笑顔を作って小丫鬟に言った。
「宝珠と言ったかしら。お茶を持ってきてちょうだい」
小丫鬟は身を震わせながら、「はい」と小さく返事をして出て行った。
そこでようやく熙鳳は腰を下ろし、
「今年のお正月は暖かいわね」
とつぶやくように言った。秦氏は「ええ」と言い微笑む。
「栄府は相変わらず賑やかだったわよ。そうそう。あの宝くんがまたやらかして、二の老爺さまに叱られていたわ」
「まあ、二の叔父さまが?」
柔らかな陽光が狭い窓から差し込んでいる。
「本当に暖かいわ」
そう漏らすように言って、熙鳳は秦氏の方を振り返った。
「あなたもあまり気にしないことね。あなたの病なんて大したことないんだから」
すると秦氏は言った。
「良くなるかどうかは春になれば分かることですわ。冬至も過ぎて、これといって変わったこともないのですもの。ひょっとすると、このまま良くなるのかもしれませんわ、私」
そう言って秦氏は笑う。熙鳳は微笑みながら目をそらした。
「嬸子さま、老太太や太太にもどうか安心くださいとお伝えください。それから……」
秦氏は唇を開きながら笑った。
「老太太がくださった棗泥餡の山薬糕、私は二つほどいただいたのですが、どうやら体に合って、久しぶりにちゃんと消化できたようですわ」
熙鳳は言った。
「そう。それじゃあ、また明日届けさせるわ。私はあなたの婆婆にお会いしたあと、戻ってから老太太にもあなたのことをお話ししておくから」
秦氏は言った。
「嬸子さま、お手数ですが老太太と太太によろしくお伝えください」
熙鳳はうなずき、そのまま出て行った。




