第十一回 21
「今日もまた寧府へ向かわれるのですか?」
熙鳳の襟を直しながら平児が言った。
「ええ」
「寧府の奶奶のご様子はいかがですか?」
熙鳳は眉をひそめた。
「良くなったり悪くなったりね」
平児の顔が翳る。
「それでは寧府のお三方もさぞご心配でしょう」
「……そうね」
熙鳳はやおら立ち上がると、
「行ってくるわ」
そう言って熙鳳は寧府へ向かった。
遊廊から角門へ向かっていると、執事頭の頼大とすれ違った。
「奶奶、お出かけですか?」
「ええ、寧府まで」
「お気をつけて」
頼大は熙鳳の車が角門を出るのを見送った。
車輪の軋む音がだんだんと遠ざかっていく。
見送りを終えた執事頭は懐から書き付けを取り出し、帳簿を照らし合わせていた。
すると角門の近くで忙しげにきょろきょろしている男がいる。
「瑞の老爺さま」
頼大は呼びかけた。
「どうしました。何かお困りですか?」
「二の嬸子さまは?」
男は聞いた。
「ああ、璉の奶奶ですか。先ほど寧府に行かれるとおっしゃっていました」
「……そうか」
頼大は愛想笑いを浮かべながら、
「奶奶にお伝えしておきましょうか?」
と聞いた。男は首を横に振りながら、
「いやいい」
と短く言った。そしてふらりと角門を出てしまうと、
「どうしてこうも会えないのだろう」
と小さく嘆き、地へ残った蹄の跡を追うようにして帰路についた。
「今年の冬至はいつだったかね」
賈母は何気なく熙鳳に聞いた。
「十一月の末でございます」
「おや、もうすぐじゃないか」
熙鳳はやや目を伏せた。
「冬至に何かご用がおありですか?」
「いや、何も。寧府のあの子はどうしているかと思ってね」
「……寧府の奶奶ですか? 私もつい先ごろまではお見舞いにうかがっていたのですが、近ごろは折悪しくうかがえておりません」
賈母は微笑んだ。
「なにも直に行かなくてもいいだろう。私たちが交互に人を遣わせることにしようよ」




