第十一回 16
女の子ははっとして、賈瑞の手をほどいた。指先のぬくもりが徐々に冷ややかさへと変わっていく。
「無闇に声をかけてはいけませんよ。特にこんな薄汚れた子どもなど……」
そう婆子が小言を言うのに、賈瑞はうつむきながら震えるしかなかった。
「ただの子どもじゃないわ」
幼い熙鳳が考えこむように言った。
「この子は義塾の老師のお孫さんよ」
「代儒さまの?」
一同は一気にざわめきだす。
「たしか代儒さまの家は、老爺さまも奶奶も亡くなられていたのでは?」
熙鳳の乳母が首をかしげる。
「それならお家に連れて行ってあげないと!」
熙鳳は再び賈瑞の手を取り、街路を進んでいく。
「姑娘、代儒さまのお家などご存じないでしょうに。やたらに進めばただ迷うだけですよ」
そう下人たちが口々に言うのに、熙鳳は立ち止まって微笑みながら、
「私に知らないことなんてあるわけないでしょう? 何より代儒さまのお邸には一度来たことがあるもの」
そうきっぱり言うと、賈瑞の手を引っ張りながら、
「さあ、行きましょう。きっと皆さまも探されているわ」
と微笑んだ。賈瑞はそっと女の子の柔らかな手を握る。
軒から垂れ下がる紅梅が淡く花弁を開き、幼い賈瑞の鼻腔をかすめていった。
それから十数年を経た寧府には秋風が吹いていた。朝から小春の日和だったのに、巳の刻を過ぎてからはだんだんと寒さが強まり、熙鳳の一行は薄絹を被きながら築山を越えようとするところだった。
二三間先から数人の婆子が叫んでいるのが聞こえる。
「どうされたのでしょう?」
小丫鬟が眉をひそめながらそう聞くのに、
「慌てないの。私たちはゆっくり行けばいいわ」
王熙鳳がこともなげにそう言うと、婆子たちが急いでこちらに駆け寄ってきた。
「うちの奶奶が、二の奶奶がお越しにならないのでたいそう気を揉んでおられます。早くおいでください」
熙鳳は笑って言った。
「まったく、あなたのところの奶奶ときたらせっかちなんだから」




