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紅楼夢  作者: 翡翠
第十一回 寿辰(じゅしん)を慶(けい)し、寧府に家宴を排(しつ)らへ 熙鳳に見(まみ)え、賈瑞淫心(いんしん)を起こす
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第十一回 14

「あなたは瑞さまかしら」

 熙鳳はたじろぎながら、思わず身を後ろに引いた。

ねえさま、もちろん私ですよ。まさかおわすれではないでしょうね」

 熙鳳はためらいながら言った。

「もちろん忘れてなどいませんわ。ただ急にお目にかかったので、すこしばかりびっくりしてしまったのです」

「これも私とねえさまにごえんがあるということでしょう」

「え?」

「私は先ほど宴席えんせきをそっとし、気晴きばらしをしていたのですが、まさかねえさまがおいでとは! これを縁と申さず何と言いましょう!」

 そう言いながら賈瑞はえず横目よこめで熙鳳をじろじろと見つめている。

 熙鳳はいて笑顔えがおをつくりながら言った。

哥哥おにいさまめられるはずですわ」

「璉の哥哥おにいさまが? 私を?」

「ええ」

 言ってしまって、熙鳳は賈瑞をながし見る。賈瑞の下卑げびみはいっこうにひっこまない。そこで熙鳳は続けた。

「今日こうしてお会いし、一語、二語お聞きしただけで分かりましたわ。あなたがどんなに“聡明そうめい”で“おだやか”なのか」

 だが、賈瑞のつら一毫いちごうも変わらない。仕方なく熙鳳は続けた。

「今日は太太おくさまたちのところに戻らねばなりませんので、ゆっくりお話はできません。またひまおりにでもお話ししましょう」

 そう言って賈瑞に背中せなかをむけた。だが、賈瑞ははずむような声で言う。

「いずれ、ねえさまのおうちにうかがえればと思っておりましたが、ねえさまはお若いのでお目にかかれないのではと心配しんぱいしておりました」

 熙鳳はかず、声だけはやさしく言った。

血肉ちにくを分けた一族いちぞくではありませんか。いもわかいもありませんわ」

 そう言ってようやくくと、賈瑞の顔はとろけるようにくずれてしまっていた。そこで熙鳳もれず、

「早くうたげにおもどりなさい。皆さまから罰杯ばっぱいをいただくはめになりますよ」

 と叱責しっせきした。それでようやく賈瑞は遠ざかっていったが、何度も振り返っては熙鳳を見つめるのだった。

 賈瑞が見えなくなってしまうと熙鳳はふつふつといかりがわいてき、

「これこそ『人のおもてを知りて、心を知らず』というやつだわ。あんな禽獣きんじゅうのような男がいるとはね。もし本当にあんな真似まねをしてごらんなさい。私の手でいざなってやるわ。私のやり方を思い知ることね!」

 とつぶやくのだった。


 そのころ賈瑞はただ恍惚こうこつとし、うたげにももどらず、内院なかにわ銀杏いちょうみきにもたれかかっていた。はらはらと黄葉こうよううなか、陽光ようこうがそこにさしこみ、賈瑞のにぎってはひらく、その手のひらをほのかにらしている。黄葉こうようが、こぶしにぎりこむそのあわいへひらひらとすりけ、地へとこぼれていった。


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