第十一回 12
二人の丫鬟が立ち去ってから、熙鳳は秦氏をひとしきり慰めると、唇を秦氏の耳へ近づけ、そっと胸の内を語った。
「二の奶奶、皆さまが首を長くしてお待ちです」
そう尤氏の使いが二度、三度と呼びにきたところで、ようやく熙鳳は秦氏の肩をさすりながら言った。
「しっかり養生なさってね。私はまた様子を見に来るから」
そう言って、秦氏のもとを離れようとしたが、秦氏の瞳がうるんでいるのを見て、こう続けた。
「きっとよくなるわよ。そうでないとあの良いお大夫をすすめる人なんて現われっこないわ。もう心配いらないわよ」
秦氏は弱々しく笑いながら言った。
「……たとえ神仙であったとしても、病は治せても決められた命まではお救いになれませんわ。嬸子さま……」
「何?」
「この病のことはよく分かっております。他でもない私の体のことですもの。今はただ日をやりすごしているだけです」
熙鳳は秦氏の両の肩を抱きながら言った。
「そんなことばかり考えていては病が良くなるわけがないでしょう? とにかくあまり考えすぎないことよ。それにね、お大夫さまもおっしゃっていたそうじゃない」
熙鳳は少し間をおいてから言った。
「もし治らなければ春を越せないかもしれないって」
秦氏の顔が翳った。
「でも、それは人参を買えないような家の話よ。寧府なら。あなたの舅姑が一日二銭と言わず、二斤だってお与えになるはずだわ。あなたにできるのはただ養生すること。いい?」
そう言いながら確かめるように秦氏の手を握る。
「私は園に行かなければならないから」
秦氏は申し訳なさそうに言う。
「嬸子さま、お許しください。私はご一緒することができません。お暇のあるときには、どうぞまたお顔を見せてください。たくさんお話しとうございますわ」
そして熙鳳の耳もとでささやく。
「女どうしで」
熙鳳は、思わず目の縁を赤くし、こう答えた。
「当り前じゃない。暇さえあればきっと来るわ。何度でも」




