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day116(陛下の裁断)


 参謀総長が国王軍事顧問室を訪ねたのは、前線からトカニ村提案が届いてから三日後のことだった。

 その三日の間、参謀本部は浮足立っていた。


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北部王国軍参謀本部


 「このチャンスは絶対にものにしたい。あらゆる部隊を動員して連絡線を死守させよう」

 「東部方面軍で騎兵部隊の配置転換が進んでいます。しばらくはそれで持たせられると思います。長期的にどうするかですね」

 「第四軍団から部隊を抽出して、第五軍団を派遣しよう」

 「気が早すぎます。第四軍団は首都防衛と戦略予備ですよ」

 「今投入しなくていつ投入する」

 「浮足立っていますね。気持ちはわかります。ここは軍事顧問と陛下に裁可してもらいましょう」


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国王軍事顧問室


 参謀総長からの説明を聞いた国王軍事顧問は、しばらく考えてから口を開いた。


 「陛下は乗り気ではあった。ただ、戦線維持を優先するようにとのお考えだ」

 「予備部隊の投入についてはいかがですか」

 「現地で勝手に決めてくれと思っているが、戦線保持優先という命令なので、許可できないという感じになる」

 「戦線保持という命令はどこまで解釈すべきでしょうか。すでに拡張された戦線も戦線ではあります」

 「言うねえ。たぶんそれは違うな」

 「現地部隊にどこまで裁量を許可しますか」

 「騎兵部隊の投入は許容できると思う。戦略予備部隊の投入は許可できない」

 「わかりました。現状維持という認識でよろしいですか」

 「うーん。陛下にもう一回聞いてみようか。何となくだが、現状維持とは違う気がする」

 「お願いします。予備部隊はとりあえず動かしません。方面軍司令部にもその旨伝えておきます」


 翌日、国王軍事顧問は改めて陛下に進言した。

 今度は地図を持参し、前線の現況と、トカニ村という目標の意味を説明した。


 国王は地図を長い時間見ていた。

 やがて一言だけ言った。


 「やれ」


 国王軍事顧問は参謀本部に戻り、参謀総長を呼んだ。


 「陛下と話した。リスクは徹底的にとるべきで、予備部隊もすべて使うようにというお達しだ。国王予備部隊も投入許可が出た」

 「……そうですか」

 「順番的にはまず前線に進撃許可を出して、その後予備部隊の投入。そのあと東部戦線全体の押し上げをすることになるだろう」

 「陛下が作戦の推移を気にされていたので、報告は午前と午後の二回にしようと思う。私が参謀本部の会議に出ることになるかと思うので、その点だけ頭に入れておいてほしい」

 「承知しました。早急に方面軍司令部に伝えます」


 国王軍事顧問が帰ってから、参謀総長は少しの間、誰もいない部屋に座っていた。

 「やれ」の一言で、何かが動き始めた。

 それが何に向かって動いているのか、まだはっきりとは見えなかった。


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東部方面軍司令部


 「参謀本部から進撃許可が来ました。あわせて予備部隊投入の準備を開始するとのことです」

 「陛下の裁断が出たということか」

 「そのようです」

 「珍しいな。陛下が積極的に動かれるのは初めてだ」

 「戦況が戦況ですからね」

 「南部王国第1軍団に伝えてくれ。前進再開の準備をするように。部隊の再配置も含めて、軍団の判断に一任する」

 「攻勢終結点の設定についてはいかがですか」

 「軍団司令部に決めさせる。ただし事前に報告させること。あと、退く判断を誰がするかも明確にしておいてくれ」

 「わかりました」


 司令官はもう一度地図を広げた。

 トカニ村。名前だけは知っていた。そこがどんな場所かは知らなかった。これから知ることになるのかもしれなかった。

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